九十五章 師匠探し
同年、二月二十七日。
テルメス捜索任務が始まった。
だが、地上に展開された部隊はない。
テルメスを捜索するのはイクイノックス級の三隻。イクイノックス、ギャップ、フカマだ。
複数機の大型神気観測装置と超高性能カメラによって捜索が繰り広げられるが、テルメスらしき存在は観測されない。
「本当にこのような見た目なのでしょうか」
グラディスは小さな人物画を見て疑問を浮かべる。
「変装とかしてるんじゃ?」
ミューテはグラディスに抱きつきいた。
「服装や髪形は変えられても、この傷までは変えられないだろう」
リヴァはミューテにそう指摘する。
「その痕跡は本当に砲神テルメスのものなんですか?思い違いという可能性も考えるべきです」
リヴァは梨々香に問う。
「・・・そうですね。少し焦りすぎました」
梨々香は平静を装いながら小瓶に入った金属を見つめる。
「検査にかけます」
梨々香は小瓶を持って立ち上がった。
「フィトミア博士に頼みましょうか?」
グラディスは梨々香に訊ねる。
「いいえ、自分で調べさせてください」
梨々香はそう言って立ち去った。
同年、三月六日。
梨々香が検査を終えて結果を出した。
しかし、神軍に提出されたのは、ほとんどの項目が暗号化された検査記録だった。
「・・・」
リベードリヒは画面に映る黒塗りの検査記録を見つめる。
「六合様」
グラディスはリベードリヒに近づく。
「六合様?」
グラディスはリベードリヒの名前を呼び続ける。
「六合さ・・・ま」
グラディスは画面に映る黒塗りの検査記録を見て言葉を失う。
「私は梨々香と共に旅をしたことがない。奴についても、暗黒神についても、何も知らないのだ」
「・・・」
グラディスはリベードリヒの言葉を聞いて少し気まずそうにする。
「早くナハトを起こさないとね。このままじゃ情報が何も得られない」
リベードリヒは立ち上がって去った。
「六合様まで弾くとは・・・この記録に何が隠されているんだ?」
グラディスは画面に映る黒塗りの検査記録を見て怪訝な表情を浮かべる。
「それに、痕跡を陛下直々に処分するなんて・・・」
グラディスは画面をスクロールして痕跡 処分済みという言葉を見た。
一方、訓練を続けたアージヴァイズたちは剣技を覚えるために師匠となる者を探し始めた。
通常剣技の一つである属性剣技・風を使う上位組織員がエコーの師匠になったが、アージヴァイズとオレンジは師匠が見つからずにいる。
そんな中でミッケは神軍幹部第六位のローラを師匠に持って鍛錬していた。
「前は神軍幹部第四位でしたよね?なんで第六位に下がっちゃったんですか?」
ミッケは木刀を振る。
「神軍幹部を総括するヴェルベサより強い存在は注目されるべきじゃない。だから、下になった」
ローラはミッケを見る。
「・・・強くなったの?」
「うん。昔から憧れてた陛下の眷属になれたんだ」
ローラはミッケを見て笑む。
神軍幹部第六位ローラ・エリザベス・アディ。
天陽神に忠誠を誓いし曙陽の勇者。
強固な意思は夜光すら打ち破る。
「うちの師匠も七陽の勇者なんですよ」
ミッケはローラを見て笑む。
「ミューテ先生だろう?」
「先生って呼ばれてるんだ」
「ミューテ先生の見る目と判断力は凄まじいぞ。神軍に居る優秀な組織員は陛下と先生が揃えたようなものだ」
「師匠ってすごい人だったんだね」
「あんな緩くてだらけてる感じなのに」
「お前は弟子でもあるが、愛娘でもあるのだろうな」
「・・・愛娘・・・」
ミッケは木刀を振りながら呟いた。
「少し休憩しよう」
「はい!」
ミッケは素振りをやめた。
ローラはタオルと水筒をミッケに差し出した。
「ありがとうございます」
ミッケはタオルと水筒を受け取った。




