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九十二章 アディ屋敷へ

一方、エコーとレイチェルは中立国マキハトのハトシティにあるアディ屋敷に来ていた。

「主様、御用があるとのお方たちが・・・」

従者は囲炉裏の前に座って鍋の中身を混ぜるローラに声をかける。

「通せ。私の友人だ」

ローラは盃を持って酒を飲む。

従者が部屋を出てしばらくすると、縁側に通じる障子に人影が現れた。

障子戸が開くと、レイチェルとエコーが部屋に入った。

「・・・」

エコーはレイチェルを見て笑んだ。

「歓迎する。レイチェル、エコー」

ローラはエコーとレイチェルを見て笑む。

「・・・」

レイチェルは座布団の上に座ると、鍋の中で煮込まれるトマトスープを見て笑んだ。

「二人って親しい仲なんだよね?」

エコーは挨拶すら交わさないローラとレイチェルを見て困惑する。

「否定はしない」

ローラは酒を注ぐ。

「何そのあいまいな答え・・・」

エコーはローラを見て苦笑いする。

「アディさんの肯定方法って特殊なんだよ・・・」

レイチェルはエコーを見て笑む。

「飲み屋街にある天星麦酒とか、アディさんが用意させたの?」

レイチェルはローラを見て笑む。

「あの酒は陛下が好きなんだよ。友に教えてもらった銘酒だと語っていた」

ローラはレイチェルを見る。

「あの神様もお酒好きなんだ。ちょっと意外かも」

「というか、あの神様って人と関わってるの?今まで目撃報告もなかったみたいだし」

エコーはローラに質問する。

「陛下はどうも他者との関わりが苦手なようでな・・・」

ローラは酒を飲む。

「コミュ障なんだ」

「ノーコメントで。君たちも変なことは言わない方が良い。変なことを言うとハチの巣にされるぞ」

ローラは従者たちをチラ見しながら冗談を言う。

エコーとレイチェルは腰のホルスターに差された大口径の拳銃を見て絞り出したように笑う。

「あのお方は俗世に属していない特殊な一柱だ。俗世の制限を受けない代わりに、俗世の常を自分で学ばなければならない」

ローラは盃片手に真面目に話し始めた。

「俗世の制限?」

エコーはお茶を飲んだ。

「俗世の制限とは、俗世に住まう者たちにかけられたいわば制御装置だ。この制御を受けなければ文明は生まれなかっただろう」

ローラは干し貝柱を口に放り込んだ。

「どういうカラクリで文明が生まれないって言えるんですか?」

レイチェルはローラに問う。

「これを説明しようとなると器と魂の解説が必要でな・・・学習会になってしまう」

ローラは少し困ったように話すと酒を飲んだ。

「勉強は嫌だな~・・・」

エコーは嫌そうに言葉を漏らす。

「あと、少し聞きたいことがあって・・・」

レイチェルはローラを見て少し緊張しながら切り出す。

「それが本題なのだろう?」

ローラは酒を注ぐ。

(ば、バレてた・・・)

エコーはローラを見て冷や汗をかいた。

「はい・・・」

「話せる範囲であれば話そう」

ローラはトマトスープを味見する。

「アーヴァン王国消滅事件・・・あれはどうして起きたんですか?それと、夜に消えた・・・とは本当に作られた奇談だったんですか?」

「これはあくまでも私の経験談だ。感情の錯綜、それによって足らない部分もある。承知して聞くように」

ローラは忠告すると話し始めた。

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