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八十三章 恩神

午後七時。

リリーたちは配給を食べながら話をしていた。

「神軍の飯マジで美味いな!」

アージヴァイズは料理を食べていく。

「このトマトスープうまぁ~・・・」

オレンジはトマトスープを飲んでうっとりする。

「ウマッ!なんじゃこりゃ!」

グリードリヒはトマトスープに驚く。

「このスープ・・・」

レイチェルは大きなシジミの身がゴロゴロ入ったトマトスープを見つめる。

「これ、アディさんが作ってくれたスープに似てる・・・」

キャロルはトマトスープを見て懐かしそうに笑む。

「アディさんってやつ、神軍幹部第四位だよな」

アージヴァイズはパンにかぶりついた。

「うん。アディさんは元々月浜の開発局に居た人だったんだけど、その時すごく良くしてもらってさ」

レイチェルはアージヴァイズを見て笑む。

「こうして今生きているのは、アディさんのおかげなんだ」

レイチェルはトマトスープを飲んだ。


-回想-

南龍王朝歴千六百六十二年、四月二日。

疑似神姫の操縦士になったカレンたちは基地内で退屈な日々を過ごしていた。

「・・・つまんないなぁ~・・・」

カレンはベランダに来た小鳥を見る。

「・・・」

震える手で缶の酒を持ったレイチェルは黙ったまま酒を飲んだ。

「酒クセェな・・・」

オルガはレイチェルを見て嫌そうに呟いた。

「・・・」

レイチェルは空の缶を振ると、缶を握り潰した。

その時、ドアが開いてローラが入って来た。

「随分と荒れてるな。新人」

酒瓶を持ったローラはカレンたちを見て笑む。

「アディ博士!」

カレンはローラを見て嬉しそうに立ち上がる。

「新人」

ローラはレイチェルの隣に座る。

「・・・」

レイチェルはローラを見た。

「辛い時は美味いやつで一杯やる。これに限る」

ローラは酒瓶を机の上に置いた。

「・・・」

レイチェルはレムフィト式ワインを見た。

彼女が机に置いたのは、レムフィトで醸造されたワイン、フィトナーゼ・レッドだった。

「グラスはあるかい?」

ローラはカレンたちに訊ねる。

「おしゃれなグラスはちょっと・・・」

オルガはそう答えた。

「洒落っ気なんていらないよ。気取ると疲れてしまうからね」

ローラはオルガを見て笑む。

カレンたちはワインを飲んだ。

「わからない・・・」

レイチェルはワインを見る。

「わからないのなら私が言葉にしてやろう」

ローラはグラスを持って笑みを浮かべる。

ローラは甘み、渋味、樽の香り、胡椒の香りとハーブのような爽快感を楽しそうに伝えた。

興味がなさそうに聞いていたカレンたちも奇跡のような輝かしい物語に徐々に惹かれ、いつの間にか聞き入っていた。

「私たちは日々、奇跡と触れ合っている。明日触れる奇跡は、味覚や嗅覚を取り戻すきっかけになるかもしれない。生を渇望し続ける限り、本物の死は訪れないのだ」

ローラはグラスの中で揺れる真っ赤なワインを見つめ続けた。


同年、四月三日。

カレンたちはローラに連れられて初めて基地の外に出た。

ローラが来ると八百屋も魚屋も肉屋も酒屋も隠していた高級品を出す。

カレンたちは野菜と海鮮と肉を網で焼き、網焼き料理と共に天星麦酒を味わった。

酒を飲み終えるとローラは決まって特製トマトスープを作った。

そして、そのトマトスープをみんなで食べた。

「やっぱりわからないや」

レイチェルはトマトスープを見つめる。

「橘花国の句道湖で獲れたシジミをたっぷり入れたトマトスープ。これは私たちを繋ぐ味だ。次にこの鍋を囲む時、笑い合えると良いな」

ローラはシジミ貝を見る。

-回想終了-

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