七十五章 理想と現実
食事が終わると、アージヴァイズはグラディスに呼ばれて一室に行った。
そこは病室で、小さな机の上にはノートパソコンと診察記録用の用紙などがある。
「お名前はー?」
年老いた医者は用紙を取り出してボールペンを握る。
「アージヴァイズ・ベルコント・ニコル」
アージヴァイズはそう答えた。
「珍しい名前だねー」
医者は用紙に記録していく。
「年はいくつかな?」
「八」
「八歳ねー」
「特に痛むところとかない?」
「んー・・・ないと思う」
「はい。じゃあ、検査を始めますねー」
医者はボールペンを置いて立ち上がるとアージヴァイズを検査装置まで案内した。
アージヴァイズはここから三時間にわたる検査を受けた。
検査が終わる頃にはもうへとへとだ。
アージヴァイズが椅子に座って休んでいると、検査結果を持ってグラディスが来た。
「検査の結果、異状はなかった」
グラディスはアージヴァイズにそう伝える。
「またお前かよ・・・そういうのは医者が伝えるんじゃないのか?」
アージヴァイズはグラディスを見て少し呆れたように言い放つ。
「少し質問がある。私的な質問であるため拒否しても構わない」
グラディスはそう前置きすると質問に入った。
「闇化生物を倒したようだが、どうやって倒した」
「口についた血が凍って、氷柱が全身から生えて死んだよ」
「その血はお前のものか?」
「元はついてなかったから、そうだ」
「そうか。情報提供感謝する」
グラディスは携帯端末に記録すると立ち上がった。
「おい!私からも聞きたいことがある」
「答えられる質問なら答えよう」
グラディスはアージヴァイズを見る。
「神軍って何してる組織なんだ?これだけ一杯物があって、技術があって、どうしてみんなに分けないんだ?」
「それで争いがなくなるなら喜んで分け与えている」
「しかし、現実はそうじゃない」
「どれだけ生活が充実しようと神は、人は、満足しない」
グラディスは淡々と語る。
「確かに、そうかもな」
アージヴァイズは少しうつむいてそう呟いた。
「でも、分かり合えると思うんだ。いつか、いつの日か・・・」
アージヴァイズはグラディスを真っすぐ見つめる。
「・・・・・・そうだな」
その言葉を返したグラディスの横顔には、一瞬だけ遠い過去を悼むような切なさが過った。
大部屋に移されたアージヴァイズたちは部屋で過ごし始めた。
オレンジたちがのんびりしている中、アージヴァイズは疲れてベッドで寝ている。
「すげぇ・・・中立国って言われてる国は全部神軍の拠点なんだ」
「なんか、私たちの知らないところでヤバいことが起きてるらしいよ」
「チダリアで起きたあの現象も世界中で起きてて、神軍の組織員も数十万人と死んでるんだって」
「本当の敵は誰なんだろうね・・・」
「どうしよう・・・レムフィト基地、その闇化生物とかに襲われてないかにゃ・・・」
「アージヴァイズの双剣で歯が立たないって・・・普通に殺されるよね」
「ボスが戻ってるかもしれないし、きっと大丈夫だよ」
オレンジたちはお茶を片手にクッキーを食べながら電子地図を見て話す。




