七十三章 悲痛な願い
「お前、人を何百万人何千万人と殺して何とも思わないのか?」
アージヴァイズはグラディスを追いかける。
「お前はそんな考えでよく軍人を続けられるな」
グラディスは少し笑う。
「可笑しな奴だ」
グラディスは面白そうに口元を緩めた。
「いちいちムカつくな・・・」
アージヴァイズは蔑んだ目でグラディスを見つめる。
「お前、罪なき人を殺すのは戦争でも犯罪なんだぞ?」
アージヴァイズは説くように話す。
「犯罪・・・それは半紙よりも薄い法律によって決められた罪のことだな?」
グラディスは前を向いたままそう言い放つ。
「は、半紙・・・だとッ!?」
「法律が半紙よりも薄いだと!?法律は最強なんだぞ!法律に違反したら、どんな偉い軍人だろうが手錠をかけて牢屋に入れられるんだぞ!罰を与えられるんだ!!」
アージヴァイズはグラディスに怒鳴った。
「では、君が最強だと信じて止まないその法律で私たちを縛れるか?何か罰を与えられるか?」
グラディスは歩みを止めてアージヴァイズを見つめる。
「・・・」
アージヴァイズは眉を顰めて少しうつむいた。
「そんな法律があるなら、是非とも奴らを縛ってほしいもんだ」
グラディスが吐き捨てた言葉には、先ほどまでの嘲笑とは違う冷え切った殺意が混じっていた。
「え?」
アージヴァイズはグラディスを見た。
「食堂までもうすぐだ」
グラディスは前を向いて再び歩き始めた。




