六章 第一の神具レディフ・フィアンゼ
同年、八月十日。
月浜軍を欺く東和連合軍の大規模上陸作戦によりアウス戦線は急転した。
第三連合艦隊の艦砲射撃と雪風一型戦姫による猛攻に月浜軍は早々に撤退。
アウス軍の無条件降伏をもってこの地の砲声は一時的に止んだ。
だが、勝利の熱も冷めやらぬ北西部の山岳地帯"オールドワールドオブジェクト"には、場違いな少女たちの姿があった。
「これが神具か・・・」
藍色の作業服に身を包んだアージヴァイズがシャベルを地面に突き刺して呟いた。
「ただの錆びた剣にしか見えないにゃ・・・」
褐色肌の少女ミッケはスコップに寄りかかりながら顔をしかめる。
隊長のリリー・グローニア・ハッゼウは、その剣よりも巨大な金属柱の根元に寄生する"白い結晶"を複雑な表情で見つめていた。
「ハッゼウ隊長、橘指揮官がお呼びです」
伝令の声にリリーは短く応じて旧アウス基地へと足を向けた。
基地には不自然なほど多くの子供たちが集められていた。
リリーがその中を歩くと、二人の子供と目が合う。だが、彼女たちは怯えたように即座に視線を逸らした。
「神具は見つかったの?」
橘 さやかの問いにリリーは鼻で笑った。
「発見はしたが、アンタの母親が求めてる代物とは程遠いな。ただの鉄屑だ」
リリーの答えにさやかは苦い表情を浮かべる。
リリーの視線は、周囲の子供たちへと注がれた。
「・・・・・・ところで、このガキどもは何だ?」
冷たい声でリリーが問う。
「私のお母さんがすることなんて・・・想像つくでしょ?」
さやかの自嘲気味な答えにリリーの瞳に鋭い光が宿った。
「無駄な犠牲がお好みとは言い趣味をしている。しっかり教育を施して学者の一人でも生み出した方が世のためになるだろうに」
「簡単に言わないで・・・・・・」
「そうだな」
リリーはそう一言呟いて歩き出す。
後を追うさやか、そして錆びた剣を抱えたミッケとアージヴァイズが合流した。
「あの子供たちは?」
アージヴァイズはリリーを見てそう言った。
「奴隷だろ。汚い大人に誘拐された可哀想な犠牲者さ」
「あのババァ、昔から変わらねぇな。どっちが正義か分からなくなってくるぜ・・・」
アージヴァイズは頭を掻き、沈痛な面持ちでうつむく。




