六十七章 タムセイ川事件 其四
一方、山の中に戻ったエリーは梨々香を見ていた。
「・・・」
グラディスは鋭い目つきでエリーを見つめる。
「・・・」
ミューテは気まずそうに梨々香たちを見ている。
「エリー、君はどんな任務を受けた」
梨々香は振り向いてエリーを見た。
「・・・マクスウェル部隊と協力してレムフィト軍と周辺住民を遠ざける・・・これが私の任務です」
エリーはそう答える。
「任務の進捗は?」
梨々香は淡々と問い続ける。
「・・・全く進んでいないどころか・・・私の判断でマクスウェル部隊が退避してしまい・・・山下部隊たちが急遽来なければ死傷者が出ていた可能性がありました」
エリーは冷や汗を垂らしながら答える。
「可能性じゃない。近距離で私の剣技を受けて生きられるはずがない。ほとんどの者が確実に死んでいた」
梨々香は語気を強めて話す。
「・・・剣技発動がここまで短時間だとは思わず・・・それに、ここまでの威力だとは・・・」
「おい」
怒筋を浮かべたグラディスがエリーを見てそう言うと梨々香が咳払いした。
梨々香の意図を察したグラディスは黙って下を向いた。
「私の想定が甘かった。拠点艦に戻って休みなさい」
梨々香は前を見ながらそう言った。
「・・・申し訳ございません」
エリーは頭を下げると銀色の龍翼を広げた。
ミューテがエリーの靴にフックをかけるとエリーが飛び上がった。
エリーとミューテは上昇していき、ついに見えなくなった。
「・・・グラディス」
梨々香はグラディスを見る。
「はい」
グラディスは梨々香を見る。
「先に戻っていなさい」
「・・・わかりました」
グラディスは黒銀の龍翼を広げて飛び上がった。
(また分からないことが生まれた・・・なぜ、宿幼の気配がいくつも・・・)
梨々香は白梅を見つめる。
梨々香が白梅を見ていると、ヘリコプターのプロペラ音が近づいてきた。
ヘリコプターはアージヴァイズたちを回収してレムフィト基地へ飛び去った。
「黄金剣技」
黒髪にツインテール、紫色と白色が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだ色白な肌の少女のような女性、TT-42B-43 サスキア・センノラが音もなく梨々香に接近した。
「黄金乱れ刃」
サスキア・センノラが名剣アリアを振り下ろした瞬間、黄金の斬撃波が乱雑に放たれた。
黄金の斬撃波は梨々香に直撃して梨々香を吹き飛ばした。
「ここで奴を討つ!!絶対に!!」
キッド・クイーンノアは軽々と体勢を立て直す梨々香を見つめる。
「・・・この剣技・・・」
梨々香はコートに付着した金色の光を見つめると、体の軸をずらしてキッド・クイーンノアを避けて紙を斬るように装備を斬った。
「・・・」
梨々香は斬れたクイーンノアからAZ codeを取ってキッドに神刀華炎を向けた。
「1.2089・・・座標か」
梨々香はAZ codeを見つめる。
「やるならやれ・・・私たちが手にした最初で最後の希望は・・・もう放たれた!」
キッドの言葉と共に神刀華炎がキッドのコアを一振りで破壊し、迫ってきたサスキア・センノラの装備を流れるように斬ってAZ codeを取り出した。
「やはり、座標だ」
梨々香はAZ codeを見つめる。
「・・・」
冷や汗をかいたサスキアはふらついた足取りで逃げていった。




