六十五章 タムセイ川事件 其二
一方、調査に駆り出されたアージヴァイズたちはレムフィト北西部のルーズレッド州にある廃キャンプ場に到着して調査を行い始めた。
「どうしてボスはこういう時いなくなるんだろう」
紺色の作業服で身を包んだエコーは不貞腐れながら川に入る。
「・・・」
梨々香は黒鞘からゆっくりと刀を抜く。
銀色の鎺が姿を見せ、鈍い朱色の刀身が姿を見せる。
「二位、状況は?」
カフェにいるフェイ・アリア・ヴィクターマクスウェル神軍部隊長級組織員柄は飛んできたエリーに問う。
「総員退避」
エリーは神軍部隊長級組織員たちに命令を下す。
「退避・・・?」
茜眼、金髪サイドテール、青緑色が基調の戦闘服で身を包んだ稍褐色肌の女性、アン・マクスウェル・アーニム神軍部隊長級甲は困惑と疑問が混じった声を漏らす。
「・・・」
マクスウェル部隊の隊員たちは怪訝な顔をしながら顔を見合わせた。
アンがフェイの方に体を傾けるとフェイはアンの方に体を傾けた。
「山下部隊に声をかけてくれ」
アンがフェイにそう囁いた。
フェイは黙ったまま立ち上がるとどこかへ行った。
「どうせ幼馴染に会いに行ってるんだろ?」
紺色の作業服を着たアージヴァイズは掘り返した土を川の水で洗う。
「・・・」
神刀華炎を握った梨々香は靄のように広がる闇に神刀華炎を向ける。
霧のように広がる闇は神刀華炎に吸い寄せられるように触れ、淡い橙色の水晶に変わっていく。
「それに、休憩時間に配布されるお菓子に釣られたのはお前じゃねぇか」
アージヴァイズはエコーを見る。
「うん・・・」
エコーは返事をするとうつむいた。
「おぉ!すごい量だ!」
レムフィト軍兵たちはざるの中で煌く砂粒ほどの結晶を見て笑みを零す。
「宝石と聞いて喜んだけど・・・こんな小さいのか」
アージヴァイズは砂粒ほどの結晶を見て落胆する。
「でも、どうしてこんな宝石が今になって見つかるんだろう」
エコーは宇宙を閉じ込めたような結晶を見つめる
「山にある川のくせして満ち引きがあるからな。それに、変化も速い。この川のせいでキャンプ場が潰れたなんて言われてるくらいだ」
レムフィト軍兵1はエコーを見て笑む。
「不思議な川なんだね」
エコーは川を見て不思議そうに話す。
「天陽、日の目八柱」
神刀華炎を掲げた梨々香は素早い振りで頭上に円を描いた。
満ちて来た川から出たアージヴァイズたちは結晶を確認していた。
「これが一粒一千リズだ。すごいだろ?」
レムフィト軍人1はアージヴァイズたちを見て笑む。
「こんな砂粒みたいなのが一千リズ!?」
アージヴァイズはその言葉に驚愕しながら再び結晶に視線を移す。
その瞬間、急降下して着地したエリーが瞬時に氷の防護壁を作り出してアージヴァイズたちを囲んだ。
「な、なんだこいつ!」
アージヴァイズたちが驚いたその直後、凄まじい熱気が氷の防護壁を一瞬で溶かした。
水分を含んだ木々が水蒸気爆発を起こして激しく燃え上がる中、気を失ったアージヴァイズたちは緑色の突風によって遥か上空まで運ばれた。




