六十四章 タムセイ川事件 其一
同年、一月十四日。
梨々香たちは記録的な吹雪の中、レムフィト北西部のルーズレッド州にあるタムセイ川の上流で調査を行っていた。
「やはり、この神気は海から来ていますね」
梨々香は灰のような神気が沈殿した川の水が入った瓶を確認する。
「例の飛行体が原因で間違いないのでしょうか?北海に墜ちたグイードリヒが原因という可能性はないのでしょうか?」
グラディスは梨々香に問う。
「数日前に確認された飛行体が落としたもので間違いありませんよ」
「陛下は事件の犯人が誰か分かっているのですか?」
「えぇ」
梨々香は灰のような神気を見つめる。
「北海を暗黒神が通過したのでしょうね」
梨々香はグラディスを見て笑む。
「暗黒神!?」
グラディスは驚きと困惑が混じった表情で梨々香を見つめる。
暗黒神と呼ばれている神は、虚空の主である黒式の魔女メイジーによって創造された存在である。
森羅双神の剣神モニーク、砲神テルメス。創破双星の死星ラーフィア、血星アレス。
この四柱はいずれも大陸や惑星を破壊することができるほど巨大な力を持っている。
「十五歳から十七歳ほどの見た目をした赫色と灰色が混ざった髪の乙女を目撃したら必ず報告させるように」
梨々香はグラディスに川の水が入った瓶を渡した。
「わかりました」
「陛下・・・!」
リベードリヒに肩を貸すエリーは梨々香を見ながら歩みを進める。
「なぜここにッ!」
梨々香はリベードリヒを見て驚く。
「リベードリヒ様がどうしても伝えたいことがあると・・・」
エリーがそう言うとリベードリヒがエリーを押してエリーから離れた。
倒れたリベードリヒは息を荒げながら起き上がる。
「宿幼・・・あいつ・・・核を・・・」
冷や汗を垂らすリベードリヒは苦しそうに話す。
「核?」
梨々香は口から液状の闇を吐くリベードリヒを見る。
「離れろ」
梨々香はグラディスとエリーに命令する。
「陛下、レムフィト軍がここに来ます」
ローラが稲妻を纏う龍翼を羽ばたかせて着地した。
「グラディスはミューテを呼んできてください」
梨々香はグラディスを見る。
「わかりました」
グラディスは黒銀の龍翼を背から生やして飛び上がった。
「エリーはマクスウェル部隊と協力してレムフィト軍と周辺住民を遠ざけてください」
梨々香はエリーを見る。
「わかりました」
エリーは白銀の龍翼を背から生やして飛び上がった。
「ローラは周辺の警戒をお願いします」
梨々香はローラを見る。
「わかりました」
ローラは薄紫色の龍翼を背から生やして飛び上がった。
「・・・」
梨々香はリベードリヒからゆっくりと下がりながら黒鞘に納まった刀に手をかけた。




