四十四章 千蘭宮皇国
ここは千蘭宮皇国。
世界最古にして最大の宗教"万象教"の聖地であり、古来より邪神と戦い抜いて来た長命種"燦水天狐族"が集う幻想郷である。
同年、九月二十六日。この千蘭宮皇国に梨々香が足を踏み入れていた。
「万象様、よくぞお越しで」
歴史ある大旅館の女将は梨々香に深々とお辞儀をする。
「お世話になります」
梨々香は女将を見て笑みながらそう言った。
「ささ、どうぞ。山下様が奥で待っておられますので」
女将は梨々香を部屋に案内する。
部屋に到着するとそこには純米酒とフグ料理を嗜むゆかりが居た。
「では、ごゆるりと」
女将は早々に部屋から出た。
「あ、陛下。どうもどうも」
ゆかりは梨々香を見て笑みながらそう言った。
「私の奢りとなると本当に遠慮なく食べますね」
梨々香はそう言いながら座布団の上に座った。
「陛下の分もありますから」
ゆかりは梨々香にお猪口を差し出した。
「第二の神具は見つかりましたか?」
お猪口を受け取った梨々香は注がれる酒を見てそう言った。
「はい、見つかりましたよ」
酒を注いだゆかりは徳利を机の上に置いた。
「そこにあります」
ゆかりは壁に立てかけられている布に包まれた長尺のものを見る。
「あれですか」
梨々香は布に包まれた長尺のものを見てそう言った。
「ご苦労様です」
梨々香はゆかりを見て笑みながらそう言った。
「ご苦労様って言うことで、もう一本!」
ゆかりは仲居を見て笑みながら空の徳利を振った。
「これから第一の神具を六合様に取り込ませるんですよね?」
ゆかりは梨々香を見てそう言った。
「はい。ついでに第二の神具も取り込ませます」
箸を握った梨々香はフグの刺身を食べる。
「陛下、紅雷・グイードリヒから抜き取った権能ってどうするんですか?」
ゆかりは白子の天ぷらを食べた。
「さぁ、どうしましょう」
「ちゃんと考えておいてくださいね。やれることは色々とあるんですから」
ゆかりはフグの塩焼きにかぶりついた。
「食事を終えたら行きますよ」
梨々香はフグ鍋をよそって食べた。
「え?泊まらないんですか?」
ゆかりは驚きながらそう言った。
「残念ですがね」
「えぇ~・・・」
ゆかりはしょんぼりしながらそう言った。
「とても不味い状況かもしれないんです・・・」
梨々香は崖の上から青い瞳でリリーを見降ろし、ブロンドヘアを靡かせる存在を思い出しながらそう言った。




