三十八章 悲しき禁忌
午前十一時二十三分。
疑似神姫の調査が始まった。
世界二大工業のエルピー重工と五彩重工の技術者が集まって調査を行った。
エルピー重工の技術者は疑似神姫を蘇生装置、AZ-000と繋げる神の文字、AZcodeを真っ先に回収して残りは武装やコアを軽く調べて調査は僅か十数分で終わった。
流れるように終わった調査にローランたちは唖然とする。
鹵獲した疑似神姫の所有権などの行方をしばらく思考を巡らせながらも中立国相手にはどうすることもできないという結論に至ったローランはせめてもの足掻きだと考えて技術者に質問をぶつけた。
「疑似神姫はどこで生み出されたのでしょうか。月浜だけで生み出せるものとは到底思えません」
ローランは疑似神姫の武装やコアを特殊廃棄物用の袋に入れるエルピー重工の技術者に問う。
「どこで作られたんだろうな」
エルピー重工の技術者は台の清掃を始める。
「中立国が関与した可能性があるのでは?」
「・・・」
エルピー重工の技術者はローランを見る。
「・・・申し訳ありません」
ローランは少し焦りながら頭を下げる。
「直接的でなくとも・・・関与してしまっただろうな」
エルピー重工の技術者は清掃を続ける。
「え?」
ローランはエルピー重工の技術者を見る。
「ALコアの原型を生み出したのはエルピー重工の総合技術部の前任副管理長、凛 萌衣だ」
「エルピー重工が・・・」
ローランは拳を握り込んだ。
「怒りを抱いてももう無駄だぞ」
エルピー重工の技術者の言葉にローランはハッとして驚く。
「萌衣氏は処刑された。斬首刑だった」
エルピー重工の技術者の言葉にローランの拳から力が抜ける。
「萌衣氏の発明は生物から死を奪ってしまったのだ」
「どうして・・・メイ氏はALコアを?」
「幼き命を生かすためだよ」
「幼き命・・・」
「千六百三十年代後半から四十年代にかけて広まった炭化症という伝染病を知っているか?」
「えぇ、一応・・・」
「その伝染病から子供を救うために作り出されたのがALコアの原型だ」
「・・・」
ローランは複雑な表情を浮かべる。
「萌衣氏の発明は生物から死を奪った。生物から死を奪うなど、許されることではない」
エルピー重工の技術者は清掃を終えた。
「・・・処刑するほどのことだったのでしょうか」
「死を奪うとは、それほどの重罪なのだよ」
エルピー重工の技術者は廃棄物を持って部屋から出た。




