三十五章 戦況が変わる時
同年、九月二十三日。
みよりを乗せた飛行機がレムフィトのモントベルワーズビーチ空港へ到着した。
みよりを待っていたのは、東和連合の上層部二人とレムフィト支部の軍人四名だった。
「・・・」
東和連合の上層部とレムフィト支部の軍人は杖を突いて歩くみよりが現れると敬礼を始めた。
「あれが橘花国の主か・・・」
「アーヴァン王族の血を引いている偉大なお方らしいぞ」
頭巾をかぶったレムフィト国民たちがみよりを見ていると一人の国民が一面の窓ガラスを見つめて声を上げた。
「なんだあれ・・・」
一面の窓ガラスに集まる頭巾をかぶった人たちが見つめる遥か高空。
そこには翼に莫大なエネルギーを蓄積し、不吉な黄金の光を放つ影があった。
「消え去れ、元凶……!」
六十一番目の疑似神姫、TT-42B-61 ベネローブ・ゲッティが二基のエネルギー砲を空港へ向けてエネルギー弾を放とうとしたその時、空港にいる人々たちが次々と意識を失い崩れ落ちていった。
それと同時にベネローブが放とうとした黄金の光が突風に吹き飛ばされるように霧散した。
「・・・あれがゼノクイーン・・・」
みよりは昼空に輝く赤い星を見て驚きながら言った。
(聴覚が・・・めまいも・・・)
怪しげな突風の後に響く唸り声のような轟音を聞いたベネローブ・ゲッティは、激しい耳鳴りとめまいに襲われ液状疑似神気を吐いた。
「ゼノクイーンめ・・・!!」
毛先を黄色く染めた白髪を揺らすライ・アールジョディーは飛んでくるリリーを忌々しげに見つめた。
「撤退だ!」
冷や汗をかくライ・アールジョディーの一声で疑似神姫たちが撤退していった。
「うぅ・・・見捨てられた・・・死にたくない・・・」
ふらつくベネローブ・ゲッティは自爆用の爆弾を震える手で外して投げ捨て、ゆっくりと降下して滑走路を滑って倒れ込んだ。
「・・・呆れた・・・」
インカムをつけたニーナ・イェーツ・マックイーンはゆっくり背もたれにもたれかかり天井を見つめる。
「まぁ、良い。リリーとみよりが近づいてきたところを遠隔操作の爆弾で吹き飛ばす」
インカムを着けたニーナは情報が映るモニターを見つめる。
(来ちゃダメだ・・・来ちゃ・・・ダメなんだ!)
ベネローブ・ゲッティは近づいてくるリリーとみよりを見ると、口を動かしてこっちへ来るなと必死に伝えようとする。
しかし、リリーとみよりは気にせず近づいてくる。
(ダメか・・・)
ベネローブ・ゲッティは近づいてくるリリーとみよりを見つめた。
(クソ・・・死に戻りの前に仲間を裏切った奴らを喜ばせるのか・・・)
ベネローブ・ゲッティは地面に突っ伏した。
「よし、鹵獲」
リリーはベネローブ・ゲッティを見て笑む。
「疑似神姫をここまで綺麗な状態で確認できるなんて・・・」
興奮気味のみよりは杖を突く手も忘れ、ベネローブ・ゲッティに向かって前のめりに歩み寄る。
「今!」
ニーナは遠隔爆弾を起動させるボタンを押した。
「・・・・・・?」
ベネローブ・ゲッティは不思議そうに顔を上げた。
「こいつは大物だな」
「ゲッティ級って精鋭だったかしら・・・」
「イェーツに属してるんだ。大物も大物だろ」
リリーとみよりはベネローブ・ゲッティを見ながら平然と会話を続ける。
「どう・・・して・・・」
ベネローブ・ゲッティは苦しそうに呻く。
「まぁ、独自規格の電波なんてこんなもんさ。ちょっと空中の神気濃度が濃くなるだけで通らなくなる」
リリーはしゃがんでコアの背面を触ってさらりと蓋を外して構造色の液体に浸った小型の爆弾を回収した。
「装備は回収させてもらうよ」
リリーの言葉を合図に頭巾をかぶっていたレムフィト国民が頭巾を取る。
すると、狐の耳がぴょこりと現れた。
レムフィト国民に扮していた五彩重工の技術者たちが慣れた手つきで装備を外し始めた。
「・・・」
みよりは五彩重工の技術者たちを好奇心と警戒心が籠った目で探るように見つめる。
「・・・」
ベネローブ・ゲッティは装備を外す五彩重工の技術者たちを見た。
「・・・」
装備を回収する五彩重工の技術者たちを見ていたリリーは何かに反応するように空港を囲む崖の上を鋭く見据えた。
「・・・」
崖の上から青い瞳でリリーを見降ろしていたブロンドヘアを靡かせるその存在は白いワンピースを揺らしながらどこかへ歩いていく。




