三十四章 明君、動く
モントベルワーズビーチ基地に戻ったリリーが部屋のドアを開けると、エビピラフを食べて少し上機嫌なアージヴァイズたちがリリーを見た。
「ただいま」
リリーはコートをかけて椅子に座った。
「どこ行ってたんだよ」
アージヴァイズは平然と帰って来たリリーを見て呆れる。
「ちょっと町に」
リリーはアージヴァイズを見て笑む。
一方、クリスティーナは今年の春に九十五歳になった橘花国の君主、橘 みより女皇と会談兼食事会を行っていた。
「お元気そうでよかったです、女皇陛下」
「えぇ、今は歩くことも精一杯だけれど・・・」
クリスティーナとみよりは画面越しに挨拶をする。
自己紹介を終えたクリスティーナとみよりはお互いに近況報告を行う。
「そっちの様子はどう?資源も資金も手に入っているのでしょう?」
みよりの言葉にクリスティーナは少し複雑な表情を浮かべる。
「確かに、資源も資金も手に入って国民の貧困も解消されつつあります」
「ですが、自由契約の理念を上手く利用されてしまい、土地や組織の買収が急激に進んでいます」
クリスティーナはため息交じりに唸る。
「政府中枢に入り込まれる前に法整備を進めた方が良いわよ」
みよりの助言にクリスティーナが短く礼を言うとみよりが話を切り出した。
「そうだ。近々直接会いたいの。月浜打撃軍のメンバーに会いたくてね」
「そうですね・・・では、今月の二十三日なんてどうでしょうか。グローニア総長も一日基地に居ますので」
「わかった。じゃあ、二十三日に行くわ」
クリスティーナとみよりの会談は食事と共に終わった。
会談を終えたクリスティーナは深いため息をつきながら天井を見つめる。
「結局、全部資金不足や人材不足を理由に動かなかった私たちの責任なんだよな・・・それに、中立国を追い出しても劣悪な環境に戻るだけだ・・・政府っていうのは何なんだろうな」
クリスティーナは独りで自嘲気味にそう呟いた。




