三十三章 呼び声
廃坑から出たリリーは多くの軍艦が打ち上げられた状態で放置されている軍艦の墓場と呼ばれる海岸に来た。
「ふぅ・・・」
リリーは一息つくと髪留めを外した。
すると、リリーの髪が朱色に、瞳が夜色に、体が男性に戻った。
華千﨑 梨々香はボロボロの駆逐艦の中に入り外壁を背もたれにして瞼を閉じた。
「はい、できたよ」
「梨々香は机の上に料理を並べながらそう言った」
「わぁ!今日も美味しそう!」
「華千﨑 梨子は料理を見て目を輝かせながらそう言った」
「美味そうだね」
「華原 青は料理を見て笑みながらそう言った」
夢を見た。とても懐かしい夢・・・
何十億年前だろうか。二十歳の秋、夜葉州から帰還した私は色々な経験から壊れてしまっていた。
「たくさんお食べ。兄さんはご近所さんに魚を配ってくるね」
「梨々香は梨子を見て笑みながらそう言った」
「はーい」
「梨子は梨々香を見て笑みながらそう言った」
「お願いしますね」
「梨々香は青を見て笑みながらそう言った」
「うん」
「箸を握った青はご飯を食べながらそう言った」
「私はテルメス。テルメス・クレイス・シフィドニツカ。あなたの名前を知りたいな」
最悪の経験だった・・・
初恋は敵に奪われ、師匠たちはそいつに殺された。
「・・・」
「梨々香は地面に寝転がって星空を見つめる」
今はもう思い出すことなんてない最悪な初恋を思い出す。
全身に甘さが回って浮いてしまいそうな感覚は久しぶりだ。
「ヒャァァァァ!!!!」
「梨々香はかなり近距離から聴こえてきた悲鳴に驚いて飛び起きた」
「ど、どうしてこんな所で寝転がっているの!?びっくりした・・・」
「黒玉のような瞳のありきたりながら可愛い乙女は梨々香を見て驚きながらそう言った」
「君こそ、どうしてここに?」
「梨々香は提灯を持った黒玉のような瞳の乙女を見てそう言った」
「私は町からの帰りですよ。ペンのインクがなくなったので神律商会まで買いに行っていたの」
「黒玉のような瞳の乙女は梨々香を見てそう言った」
「そうか」
「梨々香はそう言うと再び寝転がった」
「梨々香様、お師匠様を失ったり色々ショックな事があったのは分かりますけど、落ち込んでばかりいると梨子様が悲しみますよ?」
「・・・そうだね」
「梨々香は揺らめく星空を見てそう言った」
「梨々香・・・梨々香・・・僕を許してくれる?」
梨々香は誰かの呼び声で目を覚ました。
「陛下、探しました」
赤眼、薄朱色髪ツインテール、薄朱色と赤色が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだジェシカ・デュ・リーが覗き込むように内部を見る。
「ジェシカですか・・・」
梨々香はゆっくりと体を起こす。
「異常な神気を探知したのですが・・・何かあったのですか?」
ジェシカは梨々香に問う。
「"暗黒神"と遭遇しました」
梨々香は服についた砂を払う。
「暗黒神?近年騒がれている"死星"という存在のことですか?」
梨々香の答えにジェシカはさらに聞き返す。
「違います。正体は全く不明・・・」
梨々香の答えにジェシカは考え込む。
「この話を神軍の幹部たちに伝えてください。私はレムフィトに戻ります」
梨々香がそう言うとジェシカは外に出て途轍もない速度で直上していった。
「梨子ちゃん・・・お兄ちゃんに力を貸してくれ」
梨々香は髪留めを懐かしむように見つめると髪留めでツインテールを作ってリリーになった。




