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二十九章 レムフィト漁業会

一方、リリーは一人で北海岸の町に出ていた。

リリーが金陽北天像(こんようほくてんぞう)という万象教北蘭連(ほくらんれん)を象徴する金の像に近づいていると桜花が手を振りながら声を出した。

「万象様~!こちらです~!」

桜花は大声でリリーを呼ぶ。

「少し早すぎないか?」

リリーは驚いたようにそう呟きながら桜花に近づく。

「万象様を待たせるわけにはいきませんから」

桜花は胸を張って笑む。

「では、参りましょう!」

桜花はリリーを先導していく。

「レムフィトはどうにもこうにも金に困っているようだな」

リリーは桜花を見る。

「えぇ、それはもう。レムフィト人にはもう、愛国心も労働意欲もありませぬから」

桜花はリリーを見る。

「漁業会すら外資に身を売るとはな」

「政府が機雷の被害を恐れる漁師たちを放置した結果でございます」

会話をしながら歩き進めていたリリーと桜花はレムフィト漁業会に到着した。

「ようこそ、遠路遥々こんな所までありがとうございます」

レムフィト漁業会の会長、ミニ・シアン・ハンデルバーグはリリーと桜花に深々とお辞儀する。

「仕事できただけだ。気にせんでよい」

桜花はミニを見て笑む。

「今月の料金です。お納めください」

ミニは小切手を差し出した。

「うむ、確かに」

桜花は小切手を受け取った。

「被害はないか?」

桜花はそう言いながら椅子に座った。

「はい、皆様のおかげでありません」

ミニは桜花を見て笑みながら資料を机の上に置いた。

レムフィトの領海には極東連合の潜水艦が設置した機雷が数千発と浮かんでいる。

その機雷たちはどれも二万トン級の戦艦を航行不能にできる威力を持つ。

「不審なものを見つけたら遠慮せず、躊躇せず、即刻通報するように」

桜花は真剣な眼差しでミニを見つめる。

「わかっております。あの惨事はもう繰り返させません」

ミニはそう固く誓う。

半年ほど前、北海で漁をしていた八隻から成る漁業船団が機雷に接触する事件が発生した。

漁業船団は木端微塵。回収できるものなど何もなく、大きな水飛沫を目撃した者が居なければ事件が起きたことすらわからなかったであろう大惨事だった。

「しかし、レムフィト政府から苦情などはないのでしょうか?一応は民間船ですが、あれだけの装備を搭載した外国船が自国の海を航行して黙っている政府は中々いないと思うのですが」

ミニは桜花をに問う。

「苦情などあるわけないだろう?レムフィト政府からしたら、金を貰って抑止力を手に入れたようなものだ」

桜花はそう答えてコーヒーを飲む。

漁業会は政府に助けを求めるも政府は資金不足から動くことができなかった。

政府は助けてくれないと悟った漁業会は漁師たちを守るために北海岸の町を買い取った五彩重工に頼った。

五彩重工は最新鋭艦顔負けの掃海艇と無線誘導式の小型飛行機を基に作られた無人掃海機の大部隊を投入して掃海任務を実行。

バーンアウト処理を次々と完了して約二千発の機雷を処理した。

「この町が五彩様に買われた時ははらわたが煮えくり返る思いでした」

「ですが、今になって思い返してみると、なぜあそこまで必死になっていたのかわかりません」

ミニは桜花にそう語る。

「色々と背負っておったのだろう。頼りにされていたからな」

桜花はミニに優しく微笑んだ。

五彩重工に買収される前、北海岸の町は劣悪極まりない貧困街だった。

そんな場所を一千二百万リズという金額で買い、住民に対して自立支援を行った結果、大陸各地の中立国に飛び立ち活躍するようになった。

「万象様。近頃、北海でカニが獲れずに困っておるのです」

リリーにそう相談した桜花は資料を差し出した。

「現在、ベルカンゼウの港がカニで溢れかえっている。海に変化があったんだろう」

資料を受け取ったリリーは漁獲量のデータをじっくりと見つめる。

「タラは下魚中の下魚。売り物になりません」

桜花は困ったように唸る。

「タラの精巣、卵巣は美味い。中々酒に合う。中流層には案外刺さるかもしれない」

「身はフライにしてベラ・ジ・ルルの田舎町でよく食べられるバーガーに挟めばいい」

「タイやイサキといった高価な魚を使わずに売れればバーガー屋の店主たちも喜ぶだろう」

次々と出てくるリリーの助言に桜花は感嘆の声を漏らした。


一方、戦姫隊の軍人たちはローランが居る副総帥室に来ていた。

「リリー・グローニア・ハッゼウは月浜との繋がりがあります!」

「リリー・グローニア・ハッゼウは月浜に情報を渡している可能性が高いです!あまりに危険です!」

「即刻処罰するべきです!」

「ベネト副総帥!もっと危機感を持ってください!!」

戦姫隊の軍人たちはローランに迫る。

「危機感も何も・・・東和連合の情報が極東連合に筒抜けなのは何十年も前から有名な話ですよ?」

ローランは戦姫隊の軍人3を見て冷たく言い放った。

「・・・」

戦姫隊の軍人3は驚き動揺しながら黙った。

「もう私たちだけじゃどうにもできないんですよ。敗北への道を突き進むだけです」


東和連合に押し付けられる形でレムフィト国の管轄になった戦姫隊は、月浜打撃軍と言う名前に改名され、月浜戦での活躍が期待される部隊になった。

活動報告にちょっとした設定を投稿します。

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