二十六章 襲来、黒の魔神グイードリヒ
リリーたちはカフェで軽く食事を始めた。
「はぁ~やっぱりレムフィトの食事が恋しい・・・」
フォークを持ったミッケは薄味のパスタを落胆と愛おしさが混ざった眼差しで見つめる。
「まぁ、二サラならこんなもんだろ」
リリーはフォークでパスタを突くミッケを見ながらカフェオレを飲んだ。
「伏せた方が良いよ」
マグカップを持ったリリーはカフェオレを飲んだ。
「え?」
アージヴァイズが聞き返そうとしたその刹那。一都市を黒色の衝撃波が蹂躙した。
凄まじい轟音と共に窓ガラスが一斉に砕け散り、老朽化した建物の外壁が紙細工のように剥がれ落ちる。舞い上がった木材や瓦が空を埋め尽くした。
「・・・」
うずくまっていたアージヴァイズは目を見開き、周りを見渡しながら立ち上がった。
オレンジとエコーとミッケはバルコニーに倒れていて、吹き飛ばされた瓦がカフェの屋根に突き刺さっていた。
「・・・マ、マジかよ・・・ヤバすぎ・・・何が起きたんだよ・・・」
冷や汗が止まらないアージヴァイズに対し、リリーだけは椅子から動くことすらなく平然とカフェオレの残りを口に運んでいた。
「神気風だよ」
リリーは北東の一方向を鋭く見つめる。
「こ、これがあの妙な風だって!?嘘だろ!?」
アージヴァイズはリリーの言葉を受けて激しく動揺する
「ここへ来る」
マグカップを持ったリリーは脚を組んで少し前傾姿勢になる。
アージヴァイズは空を見ながら身構える。
その瞬間、強烈な風が吹いて垂れた冷や汗が風に飛ばされた。
美しさの面影を残す幼い赤眼の魔神が黒い光と強烈な神気風をまき散らして静止してリリーたちを見た。
「・・・」
冷や汗を垂らすアージヴァイズは神気風を受けて頭を押さえなながらよろける。
「なんだ・・・こいつ・・・!!」
床に片膝を突いたアージヴァイズは恐ろしき神圧を放つ存在を驚愕の表情で見つめる。
「やっと見つけた・・・リリー・グローニア・ハッゼウ!」
グイードリヒ・グヴァンゼァムはカフェオレを飲むリリーを見つめて不敵に笑む。
「さぁ!痛い目を見たくなければゼノクイーンを渡して!」
グイードリヒは、目を見開き不気味な笑みを浮かべながら手を差し出す。
静寂の中、リリーとグイードリヒが見つめ合う。
「・・・・・・クシュッ」
不意にリリーが短くくしゃみをした。
「あ、ごめん。鼻がムズムズした」
リリーは少しだけ口角を上げてグイードリヒを嘲笑うかのように笑った。
(何平然としてんだ・・・!!神が・・・本物の神が目の前に居るんだぞ!!)
焦るアージヴァイズはリリーを見つめる。
「まぁ・・・今日の所はこれで勘弁してくれよ」
リリーはグイードリヒに一リズ紙幣を少し乱暴に差し出した。
「バカにしやがってぇぇぇぇ!!!!」
逆鱗に触れたグイードリヒの叫びと共に先ほどとは比較にならない密度の神気風が炸裂した。
その瞬間、アージヴァイズが気を失いついに倒れた。




