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二十四章 恐ろしき車内

「責任負えるから持ってるんだよ」

リリーはカルジェンを見て自信満々にそう言った。

「・・・」

カルジェンはリリーを見て黙り込んだ。

「私はこいつから逃げるつもりはない。この異形が消えるまで決して手放さない」

リリーが操る箸と駅弁の箱が擦れる音だけが響く。

「私はお前と違ってそう簡単に逃げはしないぞ」

リリーはカルジェンを見ながら駅弁を食べる。

「私は逃げてない!何からも逃げてない!!」

カルジェンの怒号が車内に響く。

だが、リリーの瞳はどこまでも冷ややかだった。

「死から逃げた、責任から逃げた、変化から逃げた」

リリーは音もなく箸を置く。

「その結果が疑似神姫だ。命の連鎖がなければ文化も想いも広がらない。ただ消費して朽ちるだけの存在を人は生きているとは呼ばないんだよ。わからないか?」

リリーは動揺するカルジェンを見つめる。

「黙れ!!」

カルジェンはリリーを睨みながら怒鳴った。

「死は悲しいだけじゃない。幼いお前たちは理解できなかったかもしれないが、今なら理解できるんじゃないか?」

リリーはカルジェンを真っすぐ見つめてそう言った。

「・・・ゼノクイーンを渡せ。そうしたら、争いは終わる」

リリーを睨んだカルジェンはリリーに拳銃を向けた。

「争いは終わらない。また新たな争いが始まるだけだ」

リリーは怯むことなく前のめりになる。

「・・・」

リリーに拳銃を向けるカルジェンは撃鉄を起こそうとする。

しかし、カルジェンの手はなぜか思ったように動かない。

「・・・」

カルジェンは何とも言い表せない圧迫感を感じてゆっくりと周りを見る。

この車両に乗車している乗客は燦水天狐族のみ。

まるで貸し切り車両のような光景を見つめたカルジェンは冷や汗を垂らしながらリリーに視線を移す。

「大人しくしていろ」

リリーはカルジェンを見てそう言うと姿勢を元に戻した。

「・・・」

カルジェンは冷や汗を垂らしながら拳銃を下ろす。

「求めていたのはこれですか?」

歩いてきた桜はフィルムのようなものを差し出した。

「それだ。ご苦労様」

リリーはフィルムのようなものを受け取った。

「それは・・・」

カルジェンはフィルムのようなものを見て驚く。

「クイーンノアのコードだよ」

リリーの言葉にカルジェンが呼吸を詰まらせる。

「まぁ、しかし・・・月浜四剣士にもハズレを仕込むとはな」

リリーはフィルムのようなものを光にかざして見つめる。

「やはり、裏に居るのは・・・」

リリーの確信めいた一言と共にフィルムのようなものが発火して消えた。

「カルジェン・ヴォーン・ベイツ、人に戻る気はないか?」

リリーはカルジェンを真剣に見つめる。

「は・・・はぁ?」

カルジェンはリリーを見て強がるそぶりをしながらも動揺する。

「君の親も、集落の人間も、皆喜ぶぞ」

「ふ、ふざけるな!!」

立ち上がり、再びリリーに拳銃を向けたカルジェンはリリーを睨みながら怒鳴った。

「・・・」

カルジェンの行動に桜も周りの燦水天狐族たちも動かない。

「全部・・・全部・・・もうッ・・・」

カルジェンは言葉を詰まらせながら拳銃を握った手を震わせる。

「そうですね・・・言葉が悪かった」

リリーは銃口を見つめる。

「人に戻れば確かに死がやってくる。きっと、驚くような速度で・・・」

リリーはカルジェンを見る。

「だが、煌びやかで刺激的な日々も驚くような速度でやってくる」

リリーはカルジェンを見て笑む。

「・・・」

カルジェンは拳銃を下ろして力が抜けたように座り込んだ。

「人に戻れ、カルジェン」

リリーはカルジェンを真剣なまなざしで見つめる。

「・・・人に戻る気はない・・・疑似神姫であることは・・・私たちの誇りだ」

カルジェンはリリーを見てそう言った。

「そうか・・・」

リリーは哀れむようにそう言うと頬杖をついて窓から外を見た。


リリーは橘花国に戻る。

橘花国に戻ったリリーに待っているのは、途轍もない事件である。

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