二十二章 唐突な宴
木材を運び終えたリリーが広場に戻ると、そこには異様な熱気に包まれたアウス民の輪ができていた。
「みんな集まってどうしたんだ?」
リリーはアウス民たちを見る。
「あぁ、んめぇんだよこりゃ」
アウスの長老はリリーを見てそう言うと、カニの身を食べて酒を飲んだ。
「何かわからないけどすっごい美味しい」
アウス民1はリリーを見て笑みながら言った。
「あぁ・・・」
リリーはアウス民たちを見て笑んだ。
「よく食べられるね。それ、海蜘蛛だよ?」
椅子に深く腰掛けたカルジェンが呆れたように言い放った。
その言葉に、アウス民たちの手がぴたりと止まる。
「・・・」
カルジェンはリリーを見て少し意地の悪い不敵な笑みを浮かべた。
「これが海蜘蛛!?」
「海蜘蛛って、こんなに美味かったのかよ!」
「君、すごいな! 宝の山を見つけるなんて!」
だが、予想に反して広場はさらなる歓喜に包まれた。
「確か、カニって言ってたな。こりゃ高く売れるぞぉ・・・」
漁師が獲物を狙うような目で残りのカニを見つめる。
「もうみんな集まってるの?」
ユニはヘロヘロと疲れた様子でやって来た。
「海蜘蛛、言われた通り捨てる箱に入れておいたからね」
「馬鹿野郎、捨てるな! あれはカニって言って飛ぶほど旨いんだぞ!?」
漁師の豹変した怒鳴り声にユニは目を白黒させる。
「ええ~っ!?お前が捨ててこいって言ったんじゃ~ん・・・」
二人のやり取りに広場には温かな笑い声が響き渡った。
宴の喧騒が落ち着いた頃、リリーは慣れた手つきで乗馬を始めた。
「・・・馬に乗ったことあるの?」
フェンス越しに椅子に座るカルジェンが意外そうに声をかけた。
「あるよ。乗馬は得意さ」
リリーは前方を見据えたまま手綱を軽やかに操る。
「裕福だね・・・羨ましいよ・・・」
椅子に座るカルジェンは馬に乗るリリーを見て言葉を零した。
「カルジェン」
馬を止めさせたリリーはカルジェンを見てそう言った。
「なに?」
カルジェンは手綱を握ったリリーを見た。
「君の担当は東和海だったよな?どうして内地にいるんだ?」
リリーはカルジェンを見てそう言った。
「ど、どうしてって?」
カルジェンは手綱を握ったリリーを見て動揺しながら言った。
「君もグラディスたちを倒すと意気込んでいたじゃないか。あんな奴らに負けないって」
リリーは馬から降り、馬の鼻先を撫でながら言った。
「・・・」
カルジェンはうつむいて黙った。
「あれだけ大口叩いて月浜民を期待させたエッグィーたちも内地戦に逃げて来た。もしかして、君も逃げて来たのか?」
リリーは馬を馬房へと戻しながら背中で語りかけた。
「に、逃げてない!!休暇中に作戦を考えてるだけだ!!」
背後からカルジェンの叫びにも似た怒号が響く。
しかし、馬にブラシをかけるリリーの手は止まらない。
「じゃあ、内地戦で君を見ることはなさそうだね。友達と戦うのは嫌だから良かったよ」
リリーは馬を見て笑みながら言った。
「・・・」
カルジェンは逃げるように静かにリリーから離れた。




