百五十七章 黒点
同年、八月二十四日。
単身、黒点へ向かっているミッケがレグダダに到着した。
「一人だと楽でいいにゃ」
大きな荷物を背負ったミッケは屋根を飛び移りながら移動する。
「わお」
屋根の上に着地したミッケはアイリアの隼炎獄道によって創られた焼け焦げた道を見て驚いた。
ミッケは地面に着地して少し周りを歩き、生活の痕跡を見つけた。
(少し時間が経ってる。でも、追いつけそうだ)
ミッケは焚火の跡を見ると、太陽すら隠しそうなハーゼンド山を見た。
午後一時九分。
アイリアは道中、数々の闇化生物と戦って力を消費して疲弊していた。
レグダダで手に入った食料はもう底をつき、自分で持ってきた食料も少ししかない。
「・・・はぁ・・・」
アイリアは小石のような乾燥パン二つを見てため息をついた。
アイリアは立ち上がると、再び歩き始めた。
「・・・」
アイリアは草木を分けながら前に進む。
ハーゼンド山では一部の神気異常・常夜化が九年ほど前から起きていたようだ。
「・・・」
アイリアは進むにつれて赤紫色の水晶と化す木々や生物の残骸を見た。
六合の予期せぬ回帰がもたらした影響は語られているより多く大きい。
軽率な行動が多くの生命を奪い、多くの種を絶滅に追いやった。
「・・・」
アイリアは方向感覚すら失うような超高濃度神気地帯を進み始めた。
全身が浮かぶような感覚。だが、足は進むことが困難だと感じるほど重たい。
超高濃度神気に覆われ、変色した空も相まって方向感覚が激しく狂う。
意識が朦朧とする中、アイリアが超高濃度神気地帯を抜けた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
冷や汗を垂らし、息を上げるアイリアはゆっくりと起き上がった。
アイリアは黙って周りを見る。
ハーゼンド山岳国はもう滅んでいた。
きっと、アーヴァン王国が崩壊した日に。
「はぁ・・・はぁ・・・」
アイリアは上にある何かを見つめる。
「・・・見えた・・・奴が潜む場所」
黒点。
異なる神気が衝突・融合したことで発生した巨大な空間の乱れ。
この黒点の真下の大穴、結晶淵地に第三の神具があると考えた神軍幹部が集結している。
「・・・」
アイリアは崩れるように座った。
アイリアに残された力はもう僅かだ。
今は立つことすら難しい。
闇化生物がいないというのが幸いだ。
一方、ミッケは立ち止まり、超高濃度神気地帯を見ていた。
「これはヤバそうだにゃ・・・」
ミッケは陽光を纏って超高濃度神気地帯を走り始めた。
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃぁぁぁぁ!!」
ミッケは叫びながら超高濃度神気地帯を走り抜けた。
「・・・は?」
アイリアは頭上を大きく跳躍していくミッケを見て驚く。
「よっと!」
ミッケは少し滑りながら着地した。
「ど、どうやってここに・・・」
アイリアはミッケを見て驚く。
「白隼の力を使って強行突破したにゃ」
ミッケはアイリアを見て笑むと、大きな荷物を下ろして食材を取り出した。
(バカだ・・・いや、狂ってるんだ。このグローニアキャットはマジで狂ってる)
アイリアはミッケを見てドン引きする。
「・・・はぁ・・・」
アイリアは荷物を置くミッケを見てため息をつくと、ゆっくりと起き上がった。




