十三章 伝説の神
クォーツ島で大掛かりな捜索が行われる中、リリーとリベードリヒはアウス小国に属する離島で穏やかな時を過ごしていた。
「カニ、旨いな」
「うん、そうだね」
微笑ましい光景――だが、その安らぎは藍色の曳光弾によって無残に引き裂かれた。
狙撃がリリーの頭部を直撃し、彼女が崩れ落ちる。
「・・・ッ!?」
リベードリヒの瞳から色が消えて鬼の形相へと変わる。
「仕留めたか」
銃を握る疑似神姫エリナ・ラジェックがリリーの死を確認しようとする間もなく目を疑う光景が広がった。
空を凍結させる空色と黄金、あり得ざる複数の神気が稲妻を曳いて肉薄する。
「クソ、なんだこの神気は!」
エリナの回避は間に合わない。
リベードリヒの鋭い蹴りが顔を捉え、エリナは疑似神気を撒き散らしながら地上へと叩きつけられた。
「あ、あぁ・・・・・・」
悶絶するエリナに混沌の眼差しを向けるリベードリヒが歩み寄る。
不気味なほど輝く金色の剣がカリカリと地面を削る。
死に戻りが可能な疑似神姫であるはずのエリナが初めて死の恐怖に涙した。
その圧倒的な神圧を前に指一本動かすことすら叶わない。
「止しとけ」
その時、背後からリリーの声が響いた。
狙撃されたはずのリリーは、何事もなかったかのように朽ちた切り株に腰を下ろしていた。
「梨々香!」
神気を解いたリベードリヒがリリーに駆け寄り抱きしめる。
「あぁ・・・」
謎の安心感に包まれたエリナはリリーとリベードリヒを見ながら地面に広がる液状疑似神気に倒れ込んだ。
「銅色のドレスを着た青色の目の女を知らないか?答え次第ではその身に絡まった鎖を解いてやろう」
リリーはエリナの前でしゃがみ込む。
「・・・」
液状疑似神気塗れのエリナが何か言おうとしたその時、エリナの液状疑似神気が血液のように赤黒く染まってエリナが苦しみ始めた。
「何・・・これ・・・」
リベードリヒは血液を吐き始めたエリナを見て驚きながらそう言った。
「・・・」
リリーの表情が険しくなる。
「・・・」
血に塗れたエリナ・ラジェックは苦悶の表情を浮かべたまま動かなくなっていた。
「・・・梨々香・・・?」
リベードリヒはリリーの表情を見てそう言った。
「帰ろう」
リリーは地面に広がった血溜まりを見ながらペンダントトップを握った。




