百三十五章 梨々香は夢の中で思い出す
同年、六月十三日。
カスミは梨々香に呼ばれてイクイノックスに来ていた。
「カスミ・カーリン、君に知らせなければいけないことがあります」
梨々香はカスミを見る。
「は、はい・・・」
カスミは嫌な予感に苛まれながらも答える。
「リヴァが集中治療室で亡くなったそうです」
梨々香がそう言うとカスミから力が抜けた。
「し・・・し、師匠・・・ッ!!」
カスミは大粒の涙を零す。
「できる限りのことはすべてやりましたが、神気濃度が下がることはなく、そのまま・・・」
「死星ラーフィア・・・」
カスミは拳を握り込んだ。
「あいつは・・・あいつは今どこにいるんですか!?」
カスミは怒りながら梨々香に問う。
「わかりません。もう、この俗世に居ない可能性もあります」
「・・・」
カスミはうつむいて静かに怒りをぶつける。
午前三時十五分。
ローラ管轄レムフィト拠点から戻った梨々香は就寝準備を済ませて就寝した。
夢・・・私は久々に夢を見た。
崩壊前のアーヴァン王国・・・昔ほど嫌な気分にはならない。
二百四十九回目の回帰から一千万年が経過し、白梅は力の消耗によって回帰を余儀なくされた。
ある年、アーヴァン王国が白梅が入った白の棺を略奪した。
しかし、白の棺を守る燦水天狐族と激突したアーヴァン王国が無事であるはずもなく、南極燦水大島に上陸した部隊は一方的な死滅を経験することになった。
二十四万人の中で生きて島を出たのは百七名だった。
辛うじて帰還した兵士たちも白の棺を輸送している途中に通りかかった街で反政府組織と交戦して命を落とした。
生者が居なくなった場所に現れた一人の人間が回帰を待つ白梅を棺から出した。
これが悲劇の始まりだ。
「綺麗な子・・・誰なんでしょう・・・」
白髪の赤子を大切そうに抱きかかえた女性は白髪の赤子を見て笑みながら言った。
「・・・」
抜け殻のようになった青眼、白い狐耳に白髪ロングヘア、白い着物を着た女性から出てきた闇のスライムは白髪の赤子を大切そうに抱きかかえた女性に近づいていく。
第六魔塊、宿幼。
奴は白梅の力を奪うために何年もアーヴァン王国内に潜んでいた。
宿幼が白髪の赤子に飛び込んだその瞬間、悲鳴のように聞こえる轟音と共に地面が真っ白に染まってアーヴァン王国の都市が消滅して混沌の渦が空まで昇った。
「キュキャィィィィン」
混沌の渦は甲高い音と共に神気風と闇色の神気弾を噴石のように放ち、噴石のように放たれた闇色の神気弾がアーヴァン王国に落ちた。
混沌の渦が生み出す暴風と闇色の神気弾によってアーヴァン王国が一瞬にして壊滅。
生物が瞬く間に淡い紫色の水晶と化し、アーヴァン王国がその禍々しい水晶に包まれた。
私は間に合わなかった。だが、これで良かった。
これがなければ、私たちは再会できなかった。
混沌の渦の最深部が黒色に染まり、混沌の渦が夜空色に変化していく。
夜空色の渦は一点に集まり白髪の赤子が姿を見せた。
「・・・朝か・・・」
梨々香は窓から差す陽光を見つめる。
次の章から第五部 揃いし二柱の宿幼に突入します。
南方での激闘が始まります。




