百三十三章 焼かれ、変わる
泣き止んだキャロッティは訓練所から飛び出すと、流れるようにアージヴァイズを部屋から引きずり出して再び訓練場に戻った。
「・・・なんだよ!!何なんだよお前は!!」
アージヴァイズはキャロッティを見て怒鳴った。
「姉さん!私のことが嫌いなら、今ここで斬って見せてください」
キャロッティは包みの中から木刀を出して握った。
「・・・」
アージヴァイズはキャロッティを見つめる。
「私は木刀。姉さんは真剣です。姉さんは打たれたところでケガをするだけ!上官たちも承知済みです!私が死ぬだけですから、どうぞ遠慮なく!」
キャロッティはアージヴァイズを見て笑みながら木刀を構えた。
(そうだ・・・ここでこいつを殺せば・・・)
アージヴァイズはゆっくり立ち上がると、双剣を生成して握った。
「おい・・・本当にやる気か?」
周りの組織員たちがざわめき始めた。
(私は悩まなくて済む!!)
昼色に輝く双剣を握ったアージヴァイズは途轍もない速度でキャロッティに向かった。
アージヴァイズが冷気を纏ったその瞬間、熱で冷気が消えた。
「ッ!?」
アージヴァイズは赤く輝く木刀を握り込み、担ぐように構えたキャロッティを見て言葉を失う。
赤く輝く木刀を握ったキャロッティがアージヴァイズに向かって走り始めると、暁色の霧が生まれ、煌きながらキャロッティの後ろに広がっていった。
(こいつは天才じゃない・・・狂人だ・・・)
アージヴァイズは広がる霧の輪をいくつも生みながら進むキャロッティを見つめた。
「・・・」
全身包帯ぐるぐる巻きになったアージヴァイズは蔑んだ目で空を見ていた。
「姉さん。死ななくて良かったですね」
病室に入ったキャロッティはアージヴァイズを見て笑む。
「お前、斬られる気なんてなかっただろ」
アージヴァイズは蔑んだ目で空を見続ける。
「はい!姉さんを殺して自分も死のうと思ってました!」
キャロッティはアージヴァイズを見て笑む。
「・・・お前はいつもそうだよな。私がどんなこと言っても、私から離れようとしなかった」
「私はドロシー母さんに似てるのに嫌いもせず軽蔑もせずいつも尊敬しやがって・・・私は何もしてないぜ・・・」
アージヴァイズは悲しそうに言葉を紡ぐ。
「姉さんは私を外に連れて行ってくれました。丘から見る町の美しさも、浜から見る水平線のワクワクも、山で取れる木の実の美味しさも、山水の美味しさも、全部姉さんが教えてくれたんです」
「・・・」
アージヴァイズはうつむいて涙を零した。
同年、五月二十五日。
アージヴァイズがキャロッティと共に自主訓練を始めた。
走り込みと素振りを行い、力をつけようと頑張り始めた。




