百二十九章 太陰剣技
ミッケとエコーはキャロッティを連れて食堂へ行った。
ミッケとエコーはお茶を飲みながらキャロッティから話を聞く。
「どうしてアージヴァイズはあんな態度なの?」
スプーンを握ったミッケは紅茶に砂糖を入れる。
「そうだよ!おかしいよ!」
エコーは怒りながらミッケからスプーンを奪って紅茶に砂糖を大量に入れた。
「・・・」
ミッケは黙って紅茶を飲む。
「・・・孤児になったのは私のせいなんです・・・」
眉を顰めたキャロッティはうつむく。
「ど、どうして?何があったの?」
エコーは驚きながら問う。
「私、親を殺して・・・その時、家も燃えてしまって・・・」
キャロッティはそう答えた。
「どうしてそんなことを?」
ミッケはキャロッティを見る
「母親が酒を買って来いと姉さんに怒鳴り、暴力を振るっていたんです」
「アージヴァイズを助けるために・・・って感じか・・・」
エコーは紅茶を飲んだ。
「姉さんはきっと・・・私を恨んでいるんです」
キャロッティはエコーとミッケを見る。
「私は姉さんから家族も家も奪ったんですから・・・当然と言えばそうですけど・・・」
キャロッティは再びうつむいた。
「そんなことないよ!」
エコーはキャロッティを見て大声でそう言った。
「・・・」
眉を顰めたキャロッティはエコーを見た。
「だって!アージヴァイズの妹がアージヴァイズを助けなかったら、死んでたかもしれないんでしょ!?」
「確かに・・・戦姫隊に入る前だったら四歳後半から五歳前半・・・そんな小さな子が大人から暴力を受けたら死んでしまうにゃ」
眉を顰めたミッケはエコーを見る。
「アージヴァイズは勝手すぎるよ!」
エコーは怒る。
「こんにちはー。盛り上がってるね」
料理が乗ったお盆を持ったエリーはエコーたちに挨拶すると少し離れた席に座った。
「どうしたの?ご飯食べに来たの?」
エコーはキャロッティを連れてエリーの向かいの席に座る。
「うん、近くで任務があったからね」
フォークを握ったエリーはサーモンクリームパスタを食べる。
「ねぇ!聞いてよ!アージヴァイズったらせっかく妹と再会したのに」
エコーがエリーに話し始めたその時、キャロッティがエコーの口を塞いだ。
「・・・どうしたの?キャロッティ・ベルコント・ニコル」
エリーはキャロッティを見る。
「いいえ・・・こんな気軽に幹部の方と話して良いのかな・・・と・・・」
キャロッティはエリーを見て笑む。
「別にいいよ。同じ部隊のメンバーだった時期があったからね」
フォークを握ったエリーはキャロッティを見て笑む。
「それにしても・・・あんなのを庇うなんて健気だね」
エリーはフォークでパスタを巻く。
「・・・あなたには・・・どこまでの権限があるんですか?」
冷や汗をかいたキャロッティはパスタを食べるエリーを見つめる。
「私はグラディスに次ぐ神軍幹部の二番手だからね。組織員の一人くらい簡単に解雇できる」
エリーはパスタを食べ進める。
「・・・」
「まぁ、別に解雇しないけど」
フォークでパスタを巻くエリーはサーモンクリームパスタを見つめる。
「なに?どうしたの?」
エコーはキャロッティとエリーを交互に見る。
「アージヴァイズが使ってる剣技がどんな剣技か知ってるんだよね。だから、排除されるかもしれないってビビってるんだよね。シスコンヒーリアズラビットのキャロッティ・ベルコント・ニコル」
エリーはキャロッティを見つめる。
「・・・あの剣技・・・やっぱり何か特別なものなの?」
エコーはエリーに訊ねる。
「太陰剣技。通称、怠け者の剣技」
「怠け者の剣技・・・」
「特に鍛錬を積むことなく会得できる最強の剣技として人気だった」
エリーはエコーを見る。
「ただ、世の中そんな甘くない」
エリーはフォークを置く。
「その剣技を使う者は使ってから十年も経たずして死ぬことが判明した」
「じゅ、十年・・・」
エコーはエリーの言葉に驚く。
「太陰剣技は短命の剣技として忌み嫌われ、その剣技の継承が剣士たちの間で禁止されたんですけど、それでも使う者が後を絶たず・・・」
キャロッティはエコーを見る。
「強いから短命になってまで使おうとする人が居るんだね・・・」
エコーは少しうつむきながら言葉を紡ぐ。
「そういうこと。そして、その剣技を使う者は鍛錬を怠る怠け者だった。だから、真っ先に排除対象に選ばれてきた」
エリーはフォークを握って再びパスタを食べ始めた。
「・・・アージヴァイズ・・・性格もあれだし、ヤバくない?」
エコーは冷や汗をかく。
「ローラは陛下の眷属だし、ここまで解雇しないってことは何か考えがあって解雇してないんだと思う」
「ただ・・・太陰剣技が広まれば、責任を問われて管理者から外される可能性がある」
エリーはキャロッティを見つめる。
「次に管理人になる可能性があるのは私とメアリーとエミー。この三柱はすぐにでもアージヴァイズを解雇する。太陰剣技の使い手は必要ないからね」




