百十一章 若者の聖地へ
一方、梨々香はグラディスから報告を受けていた。
「天道の勇者がテルメスを見つけたと・・・」
グラディスの報告に梨々香の動きが止まる。
「その・・・身長は百五十五センチほどで、硬く冷たい小鳥のような声で、長いブロンドの髪だったと・・・」
グラディスは少し緊張しながら報告を続ける。
「話したのか?」
梨々香はグラディスに問う。
「そのようです・・・」
グラディスは短くそう答えた。
「・・・」
「ですが・・・あの人物画と一致しない点もありまして・・・」
「瞳ですか?」
「は・・・あぁ、はい。青い瞳に花と照準器が合わさったような模様が浮かんでいたと・・・」
グラディスは驚きながらも返事をする。
「どこで遭遇したと?」
梨々香はグラディスを見つめる。
「橘花国の紛争地帯らしいです」
「わかりました。橘花特区へ行くついでに確認してきます」
梨々香はそう言いながら立ち上がった。
同年、四月二十一日。
梨々香は橘花国に訪れ、紛争地を確認していた。
「留まっているわけがないか・・・」
梨々香は荒れ果てた橘花国の町を見つめる。
レムフィトが東和連合を抜けたことで東和連合は資金不足に陥り急速に崩壊。
東和連合という大きな力を失って衰弱した橘花国を何とか建て直そうと皇堂議員たちが大きく方針転換を行おうとするも橘 ひより女皇が東和連合に固執して計画は硬直状態に陥った。
国内の状態が悪化するにつれて両者の関係も悪化。
ひよりが東和連合の再建を否定する皇堂議員を強制解任したことを引き金に皇堂勢力と女皇勢力が衝突し、内戦へと発展していった。
町を軽く調査した梨々香は少し歩いたところにある橘花特区に行った。
無法地帯と呼ばれて橘花国政府に嫌われる場所は、荒れ果てた橘花国とは違ってとても綺麗で賑わっていた。
「山下、準備は終わりましたか?」
梨々香はドアを開けて店を覗き込む。
「はい、終わりました」
ゆかりは梨々香を見て笑む。
「ここにいるのはもう主神だけです。なにか、陛下と話したいらしいですよ」
ゆかりは荷物を背負った。
「そうですか」
「では」
ゆかりは店の裏口から出ていった。
店を出た梨々香は橘花特区を歩き始めた。
人はもう居らず、荷物がほぼ全て持ち出されたことでかつての輝きもない。
残されているのは綺麗に清掃された建物だけだ。




