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百九章 白き月の物語

「・・・今・・・なんて?」

水面に映る夜空に立つ無垢の魔女は天星の後姿を見て目を見開く。

「華千﨑 梨々香。彼は生きている」

天星はゆっくりと振り向いて無垢の魔女を見た。

「り・・・梨々香・・・・・・が」

目を見開いた無垢の魔女は天星を見て歩き出そうとした。

しかし、上手く歩けずに倒れた。

「この世は梨々香の力を吸って大きくなる。この世がある限り、梨々香は永遠に目覚めない」

「どうして梨々香の名前を知ってるの!?あなたは誰なの!?」

起き上がろうとする無垢の魔女は天星を見て必死に叫ぶ。

「名などとうの昔に捨てた」

「・・・」

無垢の魔女は天星を見て黙る。

「梨々香が眠る世界の中心で待っている。神滅と希望を司る者」

少し低くも綺麗な少女の声が響く中、星空がぐるりと回るように動いた。


「!!」

目を覚ました無垢の魔女は天井を見つめた。


私は全て失ったと思っていた。

だから、全て捨てた。

でも、捨ててなかった。何もかも残っていた。

私は梨々香と再会するため、世界の中心を目指した。

世界の中心へ行くためには、この金華大神世界(きんかだいしんせかい)の主に近づかなければいけない。

でも、世界の中心に到達するだけじゃダメだ。

天星神に会うため、彼女を顕現させなければならない。

私は月の神シルファと名乗り、千年近い時間をかけて金華(きんか)と名乗る金華大神世界の主と親しい関係を築き、天星と繋がる石神 ヨルを梨々香が眠る世界の中心へ追い込んだ。


「結界張ったよ~」

ヴェルベサは金華に手を振る。

「よし」

金華は結界を見る。


真の世界の中心が何の変哲もない平地で助かった。

ここは合戦に適した土地だ・・・金華たちは何も怪しんでいない。

だが、こんな時に嫌な考えが過った。

あれが梨々香が生きていると願った私が創り出したただの夢だったら・・・

だが、終わらない夜という存在は確かに存在する。

石神 ヨルが命の恩人だと語っていたから。

しかし、こんな時に限って私は全てを疑ってしまう。

だが、疑いはただ一つの考えで消え去った。

また、梨々香に会える。

この考えが出てから、もう何もかもどうでも良くなった。

私は私と終わらない夜を信じればいい。


二日ほど過ぎ、合戦が始まった。

石神 ヨルは追い込まれた時、終わらない夜を呼ぶだろう。

私は石神 ヨルを殺さないし、殺させない。


「・・・」

銀狼の剣を握った無垢の魔女シルファは下級神を斬り、投げ飛ばした。

そして、ついに私が待ち望んだ瞬間が来た。

しかも、私が計画していた通りの完璧な状況。

「・・・」

シルファは倒れた石神 ヨルに乗って首元に銀狼の剣の刃を押し当てた。

石神 ヨルは誰よりも痛みを理解し、死を恐れている。

死が迫るこの状況が焦燥を生み、彼を包んでいくことだろう。

「・・・お前はやはり甘いな」

石神 ヨルはシルファを見て笑むと、星形のペンダントトップを握った。

その瞬間、世界が美しい星空に包まれ、地面が激しく隆起し、崩れた地面が浮かび上がった。

この世の終わりという言葉がふさわしい光景だ。

「これが・・・終わらない夜ッ!!」

金華は界から降臨する天を星で染める者を見て冷や汗を垂らす。


地面から舞い上がる黄金。私を導くように煌き、舞い踊っている。

響く太鼓の音、聴きなれた心地よい鈴の音が私の耳を支配する。

私の脳と瞼を支配する美しい思い出。

やっぱり、ただの夢じゃなかった。

梨々香は、梨々香はどこに!?


「・・・」

シルファは周りを見ながら走り回る。

「シルファ!」

金華は天を星で染める者に神剣金華大神世界を振った。

しかし、神剣金華大神世界は天を星で染める者の神気に阻まれて止まった。

「神滅の力・・・を・・・」

金華はシルファを見て何か理解したように言葉を詰まらせる。


見つけた・・・


「見つけた!見つけた見つけた見つけた見つけた!!」

シルファはとても嬉しそうに地面に両膝を突いた。

「梨々香・・・」

涙を流すシルファは黒の棺の中で眠る梨々香を見て笑む。

「これから暗黒の時代が終わりを告げる」

天を星で染める者は両手を広げて笑む。

「さぁ!新たなる世の誕生を祝おうじゃないか!」

両手を広げた天を星で染める者は神気風を放って金華を吹き飛ばした。


また会えた。

優しい脈動と静かな寝息が染み渡る。

様々な思い出が全身を巡る・・・


「・・・」

セレーはシルファに神剣正天世界を突き立てた。

神剣正天世界の切先がシルファの背に触れようとしたその瞬間、ピタリと止まった。

「意思ある生き物と言うのは、果てしなく望んでしまうのですね・・・」

シルファは梨々香を見て笑む。

その瞬間、神剣正天世界が分解されて細かな金属に変化した。

そして、セレーが凄まじい勢いで吹き飛んだ。

「再会するだけで良いと思っていたのに・・・再びあなたと会話して、笑い合いたくなってしまいました」

シルファはゆっくりと梨々香の胸に触れた。

その瞬間、赫色の光がシルファの手に集まり始めた。

「金華様!」

地面に倒れたセレーは金華を見る。

「ダメだ・・・力が・・・」

神力が梨々香に吸い込まれる金華は必死に起き上がろうとする。

「私たちの愛は世界の法則すら壊せる。そう思わない?梨々香」

シルファはそう言うと、勢いよく浮かび上がった。

シルファの手を包む照赫の光が紫色の光に変わり、太刀になる。

「邪悪成敗!!」

いくつもの声が重なり合った声が響くと共に紫色の光は紫色の炎となり、神刀華炎になった。

「この世が梨々香の目覚めを阻むというのなら、私が世を壊し、再び創ろうではないか」

浮遊するシルファは神刀華炎を一振りした。

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