十章 新たな同居人
夕方になるとリリーは軍の会議室へ戻った。
「どこへ行ってやがった!」
そんな自由奔放なリリーを軍人の怒号が迎えた。
「・・・何か、良い匂いがするにゃ」
椅子に座りながら食事をしていたことを伝えるリリーから漂う、甘い花のような香りにミッケが気づく。
「貴様ッ、月浜人の分際で香水などという贅沢品を!」
軍人の罵声を無視し、もう一人の軍人が話を続ける。
「神具の保護とアウス仮設支部の防衛を最優先。レムフィト支部は事実上の放棄となります」
戦姫隊の軍人1はリリーたちを見てそう言った。
「必死だな」
頬杖をつくリリーは戦姫隊の軍人1を見てそう言った。
「神具の確保は最重要です。必死にもなりますよ」
戦姫隊の軍人1は頬杖をついたリリーを見てそう言った。
会議後、リリーはさやかの元へ向かう。そこには、二人の幼い少女が立っていた。
「さやか。次回の作戦書だ」
リリーはさやかを見てさやかに書類を渡しながら言った。
「今日からこの子たち、戦姫隊に入ることになったから」
さやかは二人の子供の肩に片方ずつ手を置き、リリーたちを見てそう言った。
「・・・」
リリーたちは戦姫乗りとして抜擢された二人の子供を見つめる。
「・・・そうかい」
橙の瞳を持つオレンジと高貴な服を纏ったエコーを見たリリーは短くそう応えた。
狭い1Kの宿舎に、四人の少女が詰め込まれた。
「手狭になりやがんな」
アージヴァイズがめんどくさそうに荷物を置く。
「どこの子?」
顔にガーゼを貼ったミッケはオレンジとエコーを見てそう言った。
「アウス」
オレンジは顔にガーゼを貼ったミッケを見てそう言った。
「・・・」
エコーはそっぽ向いて黙っていた。
「どこから来たんだよ」
リリーはエコーを見てそう言った。
「アウス」
二人は怯えたように答えた。
「・・・お前、いくつだ?」
リリーはエコーの前に座り、エコーを見てそう言った。
「・・・五歳」
「歳上に聞かれたことはさっさと答えろ」
冷たい突き放し。だが、それは軍人として生き残るための洗礼でもあった。
「まぁ、そう言うなよ。泣いちまったら面倒だろ?」
腕に包帯を巻いたアージヴァイズは荷物を入れて無理やり引き出しを閉じた。
「どうせ親から無理に引き離されて駄々こねてんだろ?」
腕に包帯を巻いたアージヴァイズはエコーを見てそう言った。
「・・・」
エコーはうつむいた。
「そんなに大切なら自分でしまえ。粗末にしたら親が泣くぞ」
リリーはベッドに寝転がりながらそう言うと携帯端末で時間を確認した。
「・・・うん!」
エコーは自分から荷物を片付け始めた。
荷物の中から藍色のティーカップを大切そうに取り出したエコーは危なっかしく食器棚にそのティーカップを収めようとする。
「な~んじゃこの宝石みたいなカップ・・・・・・」
エコーが持つティーカップを支えるアージヴァイズは不思議そうに藍色のティーカップを見る。
このティーカップは希少な宝石から削り出された、橘花国政府高官の生涯年収に匹敵する二十万リズの逸品である。
「は?金持ちかよ」
説明を受けたアージヴァイズは目を点にしてそう言った。
晩御飯の時間になると、アージヴァイズたちは食堂へ行った。
晩餐の時間。食堂に並んだのは、謎のレーションとキャベツの欠片が浮く塩スープ。
「これがご飯・・・?」
オレンジがレーションを食べる中、エコーはレーションに冷たい目を向ける。
「不味そうだろ?」
アージヴァイズはレーションを食べながらそう言った。
「うん」
エコーはアージヴァイズを見てそう言った。
「これが不味いんだよ」
アージヴァイズの言葉にエコーは増々冷たい目を向ける。
「だが、怒っても泣いても飯はこれしかねぇ。流し込んででも食わねぇと夜中泣くことになるぞ」
アージヴァイズの言葉にエコーは顔をしかめながらも生きるためにスプーンを動かし始めた。




