百七章 勇者と龍の出会い
消えていく黒い霧の中に赤い炎と人の姿が見える。
「・・・」
赤い刃に黒い刀身の刀、最上大業物日炎を握った華片眼の乙女、アイリア・カルティナーレ・シュペーは消えていく光を見ながら最上大業物日炎を黒鞘に納めた。
「・・・大丈夫?」
アイリアは片手でグラディスを持ち上げた。
「優しくして・・・」
持ち上げられたグラディスは苦しそうに願う。
「みんなは?」
アイリアはグラディスに問う。
「知らねぇよ・・・というか、お前誰だよ・・・」
グラディスは問い返す。
「アイリア・カルティナーレ・シュペー。"天道の勇者"だよ」
アイリアは少しバタついたグラディスをゆっくりと下ろす。
「天道の勇者?そう言えば、陛下が言ってたな・・・」
グラディスは座ってアイリアを見る。
「おせぇよ。何してたんだよ」
グラディスはアイリアを見つめる。
「ビゼルと戦ってた。どうも高咲 重海が近くに来てたっぽくてさ」
アイリアはグラディスを見る。
「高咲 重海はまぁ無理だとして・・・ビゼルくらいは倒せたか?」
「倒せなかった」
「なんだよ・・・ビゼルも倒せないのか?」
「ねぇ、六合って本当に世の大権を操作できないんだよね?」
アイリアはグラディスに訊ねる。
「あぁ、今は操作できないはずだ」
グラディスは土埃を叩き落として立ち上がった。
「って、なんでそんなこと聞くんだ?」
グラディスは訝しむ。
「ビゼルの雰囲気、魔神みたいだったんだよ。人や疑似神姫にはない圧力があった」
「私は梨々香と共に旅をしたことがない。奴についても、暗黒神についても、何も知らないのだ」
グラディスは画面を見つめるリベードリヒを思い出して目を泳がせる。
「まぁ・・・いいや。私はビゼルたちを追う。だから、梨々香に伝えておいて」
アイリアはグラディスの様子を見て何か察したように言葉を紡ぐ。
「テルメスを見つけた」
アイリアの言葉にグラディスは言葉に表せない悪寒に襲われた。
一方、山林に墜ちていたアージヴァイズたちは他の部隊に救助され、神軍拠点艦三番艦フカマの艦内に居た。
「内臓損傷、出血多量、心拍数に異常あり、脳波に異常はありません」
「心肺を大きく損傷。後回しで」
医者たちは神軍組織員たちの検査を行っていた。
「・・・生きてるのか・・・私」
アージヴァイズは天井を見つめる。
「生きてますよ。重傷ですけどね」
看護師は脈を図る。
「山下たちは・・・?」
「山下部隊長級甲は神様なのですぐに復帰しました。上位組織員、下位組織員共に九割三分死亡・・・これからも増える可能性があるので、全滅と考えていいでしょう」
看護師はタブレット端末に記録を記入する。
「・・・誰のせいなんだ?誰のせいでこうなったんだ?」
「うーん・・・強いて言えば、山下部隊長級甲ですかね」
「・・・そうか・・・」
アージヴァイズは少し安堵する。
「では、点滴の時間にまた来ますね」
看護師は病室から出た。




