百六章 夜の杭
「やっと見つけたぞ。幻想大妖サトリ」
黒銀の龍翼をゆっくりと広げるグラディスは異質な巫女、サトリを見てそう言った。
「人間に力を貸す者は何であろうと敵だ。その身の消滅を以て罪を償え」
サトリを蝕む炎が消え、淡い光が大量に舞い飛び、地面が瞬時に冷え固まって凍結した。
「こいつは歯ごたえありそうだ!」
アージヴァイズ・レプシデシアはサトリを見て双剣を握った。
アージヴァイズ・レプシデシアが動こうとしたその時、鳴姫がゆかりに戻りながらアージヴァイズの首根っこを掴んだ。
「なにすんだ!」
アージヴァイズ・レプシデシアはゆかりを見る。
「総員退避!あの光から逃げろ!」
ゆかりは淡い光から逃げ始めた。
「おい!私はあいつと!」
アージヴァイズ・レプシデシアがゆかりを見てそう言った瞬間、体を押し潰すような神気風が吹き荒れた。
アージヴァイズ・レプシデシアはゆかりが放った風に護られるも衝撃を受けて血を吐いて気を失った。
「うぅッ・・・」
神気風を受けたゆかりは大きくふらつきながらもアージヴァイズ・レプシデシアを離さず飛び続けた。
死滅した部隊員や疑似神姫が大量に降る中、グラディスとサトリが激突する。
グラディスはサトリに炎を噴く。
サトリは炎を腕で防ぎながらグラディスを掴んだ。
「こいつヤベェッ!!」
グラディスは暴れるが振り解けず上に投げ飛ばされた。
投げ飛ばされたグラディスは体勢を立て直すも先に上昇していたサトリに蹴り落とされた。
グラディスは地面に叩きつけられて大きな土煙が上がる。
「・・・中々やるじゃねぇか」
グラディスは笑みながら飛び起きて上昇した。
その瞬間、グラディスを狙ったサトリの蹴りが地面を砕いて地面から氷柱が生えた。
「・・・」
グラディスは幻想乱気に乗り、途轍もない速度で向かってくるサトリの拳を防いだ。
グラディスが腕を振ると、甲高い音を立てて龍爪がサトリに襲い掛かった。
「・・・」
龍爪はデコから鼻にかけて斬り、妖血と髪の毛が飛び散った。
サトリは瞬時に傷を治すと、再び振られた龍爪を避ける。
サトリはグラディスの左腕を掴んで振り回す。
グラディスは手刀で自分の腕を切り落としてサトリから離れた。
破断された腕は大爆発を起こして爆炎を放った。
「・・・」
グラディスは地上に落ちたサトリを見ながら腕を生やした。
「・・・」
サトリはゆっくりと起き上がり、グラディスを見た。
「そろそろ終わりだ」
グラディスの口から炎が溢れ出した。
黒銀の龍翼を広げて空中で静止したグラディスは途轍もない勢いで炎を吐き出した。
炎は扇状に広がり、地上を燃やしていく。
「・・・これを人間相手にやってたのか・・・案外容赦ないね」
サトリは炎を受けながら笑う。
グラディスが放つ炎は勢いを増して白色に変化した。
白色の炎が地上を覆う中、鼓膜を劈くような強烈な異音と共に辺りの雰囲気が変わった。
どこからともなく発生した衝撃波が炎を吐くグラディスを襲い、グラディスは何もわからないまま地面に落ちた。
「なんだ・・・今の・・・」
ボロボロになったグラディスは液状神気塗れで傷だらけの顔を上げる。
「どうだ!!これが裁きだ!万象の力だ!!」
サトリはボロボロのグラディスを見て笑みながら歩みを進める。
グラディスに向かって歩みを進めていたサトリは何か気付くようにハッとして足を止めた。
途轍もない静寂が辺りを包み込んでいる。
そして、その直後、途轍もない悪寒が全身を駆け巡る。
「・・・」
冷や汗を垂らすグラディスは周りを漂う紫色の光の粒を見た。
「や、夜光・・・」
冷や汗を垂らすグラディスはハウレティアを包む薄紫色の光を見て絶望する。
「・・・な・・・な・・・ナハトォォォォォォォォ!!!!」
サトリは昼空を染め上げるかの如く夜色の靄を放つ夜色の杭を見て激しく怒鳴った。
夜色の杭が地面に突き刺さったその瞬間、星の爆発を思わせるような光とこの世の雷を集約させたような轟音が静寂を打ち砕き、強烈な衝撃波がハウレティア全土に広がっていった。




