百三章 邪悪なる妖幻の中、風鳴は轟く
「ねぇ、君も堕ちようよ。命が尽きれば罪はなくなる」
異質な巫女はサクチャーの方を向きながらキラキラと輝く風、"幻想乱気"を飛ばした。
「剣技、火戯灼散!」
サクチャーが振るった剣は火を放ち、幻想乱気を燃やして消した。
「君のような罪を背負う悪者が陽の力を使うなんて・・・」
異質な巫女は不快そうに話す。
「薄っぺらな思想で生きとし生けるものを傷つけるお前の方がよっぽど罪を背負う悪者だ」
サクチャーは剣を振り、異質な巫女はそれを避ける。
「薄っぺら・・・??」
異質な巫女はサクチャーの方を向く。
「薄っぺらだ。人を問答無用で悪いと決めつけ、最低限の対話すら行わない」
サクチャーは剣を振って幻想乱気を切り裂くと火の粉を飛ばす。
異質な巫女は火の粉を腕で受け止めた。
「神と人は遥か昔から共に向き合い、共に支えながら苦難を乗り越えてきた」
「この俗世には五十億年近い歴史がある。その中で神と人が争った時間は十万年もない」
「神と人が争った時間だけを見るな!歴史はお前が思っている以上に広く深い!」
サクチャーは剣を振って幻想乱気を斬り続ける。
サクチャーが大粒の幻想乱気を斬った瞬間、サクチャーに急接近した異質な巫女の蹴りがサクチャーの頭に直撃した。
サクチャーは横へ吹き飛び、転がる。
異質な巫女は動かなくなったサクチャーを見るとゆかりに手を伸ばした。
異質な巫女の手がゆかりに触れようとしたその時、ゆかりの手がその腕を掴んだ。
「・・・どうして・・・幻想の中にいるのに・・・」
異質な巫女が驚きながらそう言った瞬間、ゆかりの手が腕を握り折った。
「うおぉぉりゃぁぁ!!!!」
液状神気塗れのサクチャーは剣を振って異質な巫女の腕を斬った。
液状神気塗れのサクチャーは異質な巫女を蹴り飛ばして地面に片膝をつく。
「・・・死んだと思ったのに・・・」
異質な巫女は起き上がる。
「お前の蹴りでくたばるほど軟じゃないぜ・・・」
サクチャーは異質な巫女を見て笑う。
「山下さん!」
サクチャーは向かってくる異質な巫女を真っすぐ見つめながら大声を出す。
「ナリヒメェェェェ!!」
サクチャーの叫びは一種の賭けだった。
そして、サクチャーはその賭けに勝った。
「・・・なんだ?この風・・・」
異質な巫女は幻想乱気を押し返す風を不快そうに見つめる。
「吾の名を気安く呼ぶのは誰だ・・・」
風を纏ったゆかりはゆっくりと浮かび上がった。
「・・・ヤベェ・・・流石は風神の眷属・・・」
サクチャーは変容するゆかりを見て笑みながらそう言った。
ゆかりの額から赤い角が二本生え、体が揺れるような重たく冷たい風音と共に瞳の色が黄金色に変わった。
妖幻を討つ風鳴の姫、鳴姫
断罪の大権を持つ神から力を与えられた風を司る上位神。
轟く風は妖幻を打ち砕く。
「どうして・・・??人が嫌いなのに!!私は君の味方だ!!」
異質な巫女は鳴姫を見て叫んだ。
「人は嫌いだ。いとも簡単に死んでしまうというのに逃げもせず、誰かのために立ち向かっていく」
鳴姫は風音を響かせながら歩みを進める。
「全く・・・残された者の気持ちを考えて欲しいものだ・・・」
鳴姫は緑色の風の斬撃波を放った。
緑色の風の斬撃波は幻想乱気を切り裂き、異質な巫女に直撃した。
「・・・」
異質な巫女は体から噴き出す妖血を見る。
異質な巫女は鳴姫を見ながら三歩下がった。
「これ以上は危険だ。撤退用意」
鳴姫は異質な巫女が振るった拳を蹴りで弾いた。
「だが・・・!」
サクチャーは鳴姫に惜しそうな視線を向ける。
「吾らの役目は今!!人を救うことに変わる」
鳴姫がそう言った瞬間、地面が脈動するように揺れた。
「・・・これは・・・」
サクチャーは地面を見て冷や汗をかいた。
「あのチビめ」
鳴姫は巨大な神気を感じ取って大笑いする。
「ここまではっきりと俗世に力が伝わるとは流石に驚いた」
鳴姫は地面を見て笑んだ。




