百章 ハウレティア調査
午後二時三分。
ローラはアージヴァイズと陽の処分を見送った。
しかし、陽は自責の念から神軍を去ってしまう。
「やはり、陛下のようにはできないな・・・」
ローラは頭を抱えてため息をついた。
「正義の結末と言うのは大抵こんなものさ。守りたくないものばかり守れて、守りたかったものは守れない」
リヴァはローラを見る。
「陛下は結構上手くやってる印象があるんだがね」
ローラはリヴァを見る。
「陛下は臨機応変に動くからね。それに加えてあの冷静さだ。想定外という言葉が嘘みたいに聞こえる」
「ハウレティアに行く勇者はもう決まったのか?」
ローラはリヴァを見てそう言った。
「あぁ、決まったよ。今回は天道の勇者が行く」
「あの小娘が?」
「あぁ」
「陛下は何を考えているんだ・・・」
「彼女は梨音を師に鍛錬を積み、梨音から任を受け継いだ。優秀じゃない方がおかしい」
「幼い頃に嫌いだった口うるさい老人はこのような気持ちだったのだな・・・」
ローラは頬杖をついた。
同年、四月二十日。
剣術の基礎を覚えたアージヴァイズと月浜打撃軍の一部メンバーが下位組織員として調査に参加した。
出撃地はハウレティア国。
下位組織員の中には剣技を覚えただけで自由には使えないという者がほとんど。
圧倒的火力を誇る太陰剣技を使うアージヴァイズは下位組織員たちに頼りにされ、ちやほやされていた。
そこに上位組織員の西川 ののが来た。
「やぁ、君たちが今回派遣された下位組織員かい?」
ののは不敵な笑みを浮かべながらアージヴァイズたちに話しかける。
「そうだぜ」
アージヴァイズはののを見て笑みながら答えた。
「お前!下位組織員の癖に随分エラそうだな!!敬語を使え!敬語を!!」
ののはアージヴァイズを見て怒鳴った。
「下位組織員に対してエラそうにして良いなんて言うルールないんですが。西川上位組織員」
ゆかりはののを見つめる。
「ぶ、部隊長・・・」
ののはゆかりを見て小さくなる。
「山下じゃないか!知り合いが部隊長で良かった!」
アージヴァイズはゆかりに親しく話しかける。
「私語は慎んでください。任務中ですので」
ゆかりはアージヴァイズを厳しく突き放した。
「なんか冷たくね?」
アージヴァイズはゆかりを見て少し拗ねる。
「注目」
ゆかりが手を上げてると、神軍組織員たちが注目した。
「今回の目的は調査です。ハウレティア周辺でサトリが観測されていますが、戦闘許可は一切下りていません」
ゆかりの言葉に神軍組織員たちが一気に騒めき始めた。
「注目!」
ゆかりが大声を出すと、神軍組織員たちが再び注目した。
「あなたたちはこの痕跡を収集してください」
ゆかりがそう言うと、部隊全員の携帯端末にデータが送られてきた。
「なんだこれ?」
神軍組織員たちは画面に映し出された灼血の結晶を見つめる。
「なんで戦っちゃダメなんだ?私強いぜ?」
アージヴァイズはゆかりを見る。
その瞬間、鞘に納まった剣がアージヴァイズの頭を叩いた。
「イッテェー・・・」
アージヴァイズは頭を押さえながら痛そうに言葉を漏らす。
「随分と礼を欠いた小娘だ。指揮を乱す者は戦場に必要ない」
サクチャー部隊長級柄はアージヴァイズを見る。
「なんだと!!」
アージヴァイズはサクチャーを見て怒鳴った。
「今作戦の指揮官である私の言うことが聞けないなら帰ってください。邪魔でしかありません」
ゆかりはアージヴァイズを見る。
「に、ニコルが帰るなら私たちも帰る!」
「勝手にどうぞ」
下位組織員たちが声を上げるもゆかりは簡単に一蹴した。
「・・・」
下位組織員は全く動じないゆかりに黙るしかなかった。
「調査開始」
ゆかりは生み出した風に乗って飛び上がった。




