曇り
昔は曇り空が嫌いだった。薄暗くてなんだか重苦しいし、晴れでも雨でも雪でもない。なんだか中途半端な天気。そんな認識だったんだ。
実際、曇りなんて晴れた時のような憂鬱も何もかも全部を吹き飛ばすような爽やかさも、雨の時のような静かな慰めもないし、たまに降る雪の特別感と非日常感なんてものもない。ただ薄暗いだけで、ずーんって沈んだ時に曇ってたらさらにずーんって沈んじゃうような、そんな天気。一度、そのことをクラスの人に話してみたの。だけど、クラスの人はそもそもどんな天気も嫌だー、なんて笑ってたっけ。あなたはどう思う?
雪がよく降るところだったから雪にあんまり特別感を感じれない? それなら、こっちに来て初めての冬はびっくりしたでしょうね。だって年に一回か二回降るかどうかで、積雪なんて滅多にないもん。
まぁ、それはどこだってそうでしょう。あ、そうか。続きね続き。そんな私だけど、今じゃ曇り空も結構好きなんだよね。大学に入ってから、なーんかなにも上手くいかなくて、ちょっとづつ精神が蝕まれていってるような感じがしてた。で、いよいよ限界を迎えそうだなぁって日に、玄関から出たらもう空一面曇天で、思わず涙が出ちゃってた。でも、僅かに雲間から晴れ間が見えてきて、曇天の中に一条の光が見えたんだ。それを見たら、いても立ってもいられなくなって、どうしてもその晴れ間の中に行きたくって全力ダッシュしたんだよね。まぁ、結局晴れ間なんて消えちゃって、どこにあるのかも分かんなくて、わんわん泣いてた時に声をかけてくれたのが君。そこからは君も知っての通りの顛末だよ。初対面なのに泣きついて、そのまま一緒にカラオケ行ってなんとか持ち直して。
いやー、本当に感謝。本当に限界だったもん。そこから同じ大学ってことも分かって今じゃ一番の友達じゃん。なにが起こるか分からないもんだよねぇ。
だから私は今じゃ曇り空も好きだよ。特に雲間から見える一条の光がね。ん? それは曇り空じゃないって? や、まぁ曇りだよ曇り。三割雲があったら曇りでしょ? なら曇りじゃん。
ね、なら次はあの時の君のことを聞かせてよ。泣きわめく人に話しかけるなんてあんまりないでしょ? なんであの時声掛けたのかなーって。




