影の遺言
リナとユウは封印することができたのか…!?
ソトルを封じたあとも、村は以前と何も変わっていなかった。
リナがそれを肌で感じたのは、翌朝、老夫婦の家の玄関を出た瞬間だった。
村人たちは、誰も祠の崩落について話さなかった。
まるで、何も起きなかったかのように、日常を繰り返している。
「……ユウ、本当に、封印は成功したの?」
「封印はされた。でも……」
ユウは言葉を濁す。
「人の心に棲む“信仰”まで、すぐには消せない。
むしろ――」
彼は村の広場を指さした。そこには、昨夜の祠の破片の一部が運び込まれ、
その前で老人たちが、静かに手を合わせていた。
「……むしろ、“新たな奇跡”として崇められ始めている」
リナは言葉を失った。
彼らは、ソトルという存在が危険であることすら、忘れようとしていた。
いや、忘れたふりをしていた。
「ユウ……あなたは、この村でずっと、こんな現実を見てきたの?」
ユウは小さく頷いた。
「先祖が作った“神”を、皆が信じ、それにすがって生きてきた。
その“信仰”が、家の権威となり、誰も逆らえなかった。
僕も、役目を果たすように育てられた。
君を“器”として受け入れさせ、ソトルの意志を繋ぐはずだったんだ……」
「……でも、ユウはやめた」
「君に出会って、変わった。
……でも、今でも怖いよ。
自分の中に、ソトルがいる気がする。
――声が、聞こえるんだ」
そう言ったユウの目の奥に、ふと、黒い影が揺れた気がした。
リナはそっと彼の手を取る。
「私も、怖いよ。
この村に来て、ずっと不安で……自分の存在が何なのか、わからなくて。
でも、二人なら、変えられるよね。少しずつでも……」
ユウは何も言わず、リナの手をぎゅっと握り返した。
その夜、リナは再び夢を見る。
場所は見知らぬ部屋。
祭壇の前に、一冊の本が置かれている。
開いたページに、こう書かれていた。
『器は、再び育つ。
封じし者が眠る限り、声は消えぬ。
忘れよ、全ては祝福――』
そしてその下には、見覚えのある筆跡が。
――ユウの字だった。
夢から覚めたリナは、深く息をつく。
朝焼けの空。
村の広場には、ソトルの“記念碑”が完成していた。
その碑文には、こう刻まれていた。
『ソトル様――我らを導きたまえ。
新たなる器に、永遠の祝福を。』
リナは笑う。
皮肉にも、静かに、笑う。
「ねえユウ……
私たち、本当に、終わらせたのかな?」
ユウはその問いに答えなかった。
いや、答えられなかった。
風が吹いた。
どこからか、あの囁きが再び聞こえてくる。
「――信じるものを、裏切るのは、いつも人だよ」
人怖が作りたかったので宗教系にしましたが結局神が怖くなってしまいましたー、




