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神聖騎セフィロマキナ  作者: ローリング蕎麦ット
アルベールvs極彩色のオルレアン猛襲軍
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アルベールvs極彩色のオルレアン猛襲軍 第二節


 オルレアンに集結した兵力は、この国の総力の1/4と言える大勢力となっておりました。


 オルレアンの兵、王都の兵、そして新たなるゴモラに敗けて撤退した兵。


 さらに教会からの兵。


 これらが混成した軍がオルレアン西南の原野に展開しておりました。


 その中にはデカログスを身に纏ったアルベールの姿もおりました。


 黒かったデカログスも白にリペイントされており、またがる白い愛馬トニトゥルスと共に実に立派な騎士姿です。


 そして空には聖剣式空中戦艦が二隻。


 鋭利な造形の蒼い艦体に、純白の十字架が染め抜かれた清廉なるアルマース。


 そしてそれよりも一回り大きく、武威ばった一隻こそフランク王国騎士団長が操るデュランダルでした。


 二隻は天より各隊へと指令を出す手筈となっていました。


 オルレアンの兵たちが主力として中央に。


 右翼には教会騎士たちが、左翼には敗走してきた兵たちがまとまっておりました。


 左手にはロワール川が流れており、新たなるゴモラの巨人たちもこの川に沿って北上してきていると伝わっています。


 おそらく天に据わる二隻の探知は、すでに七基の巨人たちを捉えているはずでした。


 アルベールは右翼の一角で待機しておりました。


「騎士アルベール」


 じっと西を見つめていたアルベールに近づく騎影がありました。


 剛弓の騎士ハヴェルです。


「騎士ハヴェルか」


「新しい騎士鎧を得たと聞いたぞ。ありあわせのものを着込んできたのならば追い返そうと思っていたのだがな、」


 ハヴェルがじっとデカログスを見据えます。


 たっぷりと時間をかけてから、ううむとうなり声が絞り出されます。


「並みではない代物を持ってきたものだ」


「分かるか」


「感じる。使いこなせねば、大いなる災いになりそうだとな」


「流石だな、見抜くか」


 アルベールが完全兜の内側でにやりと笑います。


「だが案ずるな。父と子と聖霊の御名において、必ずや乗りこなしてみせよう」


「……それであの赤い竜騎士に届くか?」


 ふとハヴェルから漏れた声には重い響きがこもっておりました。


 アルマースの艦上では、ふたりで戦ってゼヌに一蹴されたのです。


 ならばどうすべきか、何をすべきか。


 ハヴェルなりに答えを探しているようです。


「さてな。定かではないからこそ、今日の戦いで見極めてみたい」


「ふっ、ことを急いて自滅するなよ」


「そっちこそ、功を焦るなよ」


 ハヴェルとアルベールが右腕を撃ち合わせて頷きあいました。


「意気軒昂ですな」


 そんなふたりに、武装した修道士グレゴリウスが馬を寄せてきました。


 右目を眼帯した老修道士もまた、隻眼に万丈の気焔を宿しておりました。


「修道士グレゴリウス」


「このたびは陸であるか」


「天の修道女クレメンティナと連携し、私は地で教会騎士を指揮いたします」


 少し離れた場所に、フランク王国の軍とはまた装備が異なった一団が備えておりました。


 粛然と整列した白い騎士たちは、教会を守り邪教を打破する戦士たち!


 騎士とは本来は王様に忠誠を誓った者たちです。


 しかし教会騎士は教会の聖なる教えと、天におわす主に忠誠を誓って戦う者なのでした。


 新たなるゴモラはフランク王国に牙をむきましたが、その旗として反教会を掲げています。


 教会もこの事態を静観できるはずなく集結してくれたのです。


 かつてグレゴリウスも教会騎士で勇名を馳せた男でした。


 今日は修道衣ではなく白き騎士鎧を身に纏います。


「力強き信仰が形を成し、列を作っているよな頼もしさである」


「武運をお祈り申し上げる」


 互いに十字を切り、鼓舞し合うようにうなずき合ったその時です。


 遠くに見える西の森に異変が起こりました。


 人です。


 森の木々をはるかに超える大きさの人影が、見えたではありませんか!


「巨人!」


 そう、いまだ遥かな距離を隔てながら理解できる巨大さたるや!


 木々をなぎ倒し、踏み砕いてやってくるのは七基の巨人たち!


「来たか!」


 グレゴリウスが馬首を返し、教会騎士の列へ戻ります。


 アルベールも剣を抜き彼方を睨みつけました。


 鋼鉄でできた巨人は、七基。


 先頭には黒い騎士とケルトの緑の巨人──ネメトン。


 次に牛頭の魔王と単眼の巨人。


 続くのはザクセンの巨人が三基……赤銅色と、蒼白色と、黄土色の巨人です。


 随伴する兵たちもおりますが、その数はそれぞれの巨人がひと薙ぎすれば吹き飛んでしまうようなものでした。


 すっかり七基の姿があらわになった時です。


 頭上で燦然たる光がふたつ、収斂してゆきます。


 デュランダルが艦先端より莫大なマナを収斂しているのです!


 瞬間、太陽が爆発したかのような閃光が炸裂しました!


 山を砕いて余りある膨大なマナエネルギーが一条、七基の巨人たちへと殺到します。


 七基をまとめて薙ぎ払うには十分な主砲の威力は、アルマースの主砲よりも上でした!


 しかし巨人たちは既に準備を整えておりました。


 黒い騎士と、ネメトン。


 二基が並び、緑の巨人が手の斧を地に突き立てました。


 するとどうしたことでしょう!


 ネメトンの斧を中心に深緑のエネルギーが半球状に広がり七基を包み込みます。


 さらに盾を構えた黒い騎士から、暗黒の翼が展開されて七基を包み込みます。


 暗黒と深緑が重なった防壁と、デュランダルの主砲がぶつかり目もくらむような光と耳が痛む爆音をまき散らして炸裂します!


 やがて光と闇の衝突が止んだ時、


「!?」


 火山の噴火もかくやという炎の奔流がアルマースへと殺到してきたではありませんか!


 艦体すら飲み込む炎の勢いに、アルマースが緊急に主砲を発射!


 地獄のような炎と蒼い閃光が天空で衝突し、拮抗しました。


 明らかにとっさの対応だったので、どうやら出力は十分ではないようでした。


 しかし拮抗はひととき。


 アルマースの主砲が獄炎を押し返し始めました。


 地上の兵にすら熱が届くほど火勢を増しますが、アルマースの威力が勝っているようでした。


 全開の獄炎でも押し返し切れる……そう思った、瞬間!


 獄炎から違う角度で放たれた雷霆が天を駆け抜け、アルマースへと牙を突き立てたではありませんか!


 いくつもの稲妻を束にしたような、街ひとつすら貫きかねない極大の雷霆!


 左舷がぶち破られたアルマースが、煙を噴き上げてどんどん高度を下げ始めてようやく雷鳴が轟きました。


 蒼い空中戦艦が堕ちてゆく光景を、フランク王国の兵たちは唖然と見上げるしかできませんでした。


 まさか聖剣を擁する最強の兵器を、こうも簡単に撃ち落とされるなど誰が想像できたでしょうか!


 こと教会騎士の驚愕はひとしおです。


 グレゴリウスが一喝し、その動揺を抑えている様子が遠くに見えました。


 アルベールがまずいと思うのと、黒い影が天を舞ったのは同時でした。


 黒い騎士がその翼を広げてデュランダルへと接近してくるではありませんか!


 迎撃に連射される副砲をことごとくを盾で防ぎ、暗黒の翼で打ち払い、黒い騎士がデュランダルへと剣を振り下ろします。


 それはもはや城すらも斬り裂く巨大な斬閃!


 巨大な剣はデュランダルの防御障壁を容易に砕き、あわや艦体を一刀両断せん剣勢です!


 しかし間一髪!


 神業的な緊急回避がこの一閃をなんとかやり過ごしました。


 艦体をひねりながら黒い騎士とすれ違い……反転しながら副砲を連射!


 暗黒の翼と盾がこれを防ぎますが、何発かもらって黒い騎士が空中で鎧を傷めながら後退しました。


 こうしてフランク騎士団の団長が駆る空中戦艦デュランダルと、巨大な黒い騎士の一騎討が始まりました。


 そして他の巨人たちが進軍してきたのは同時でした。


 独眼の巨人と、ザクセンの赤銅色、蒼白色、黄土色の巨人。


 しかしどうしたことでしょう。


 ネメトンと牛頭の魔王はうなだれるように機能を停止しています。


 随伴している兵たちが、二基の周囲で奔走しています。


 おそらくデュランダルとアルマースの対応でオーバーロードした様子でした。


 懸命に再起動を図っているようです。


 ですから地のアルベールたちが見据えるべきは、ひとまず四基。


 騎士団長が搭乗するデュランダルが巨大な黒い騎士にかかりきりになり、各隊はそれぞれの判断で動かざるを得ません。


 まずはフランクの兵たちへ、ザクセンの三巨人たちが突っ込んできます。


 両翼もこのザクセンの三巨人を包むように動き出しますが、中央とぶつかるのが早かった。


 いいえ、ぶつかる前に!


 不気味なうなり声をあげて赤銅色の巨人のフェイスパーツが大きく開きました!


 グウウウオオオオオ!!!


 そして灼熱の炎をまき散らしてきたではありませんか!


 フランクの兵たちは盾を構えて万全の防御布陣でしたが、その火勢で前衛が薙ぎ払われました!


 崩れた前衛に、黄土色をした巨人が突っ込んできます!


 赤銅色の巨人と蒼白色の巨人とは違い、黄土色の巨人は特殊な形をしていました。


 前者の二基がきちんと人型をしているのに対して、黄土色の巨人の下半身には足がありませんでした。


 代わりに無限軌道を履いていたのです。


 そうです、キャタピラです。


 そしてその右腕は巨大なドリルでした。


 ギュワアアアアアン!!!


 高速回転でうなりを上げる巨大なドリルが、中央の布陣を無慈悲に穿ちます!


 暴虐の回転に巻き込まれた兵たちの血しぶきで原野が染まっていきます!


 生半可な反撃では、極めて厚い装甲とキャタピラの抜群の安定感でびくともしません。


「いかん! 騎士アルベール、先行する!」


 アルベールは右翼におりましたが、この事態にデカログスの出力をフル稼働させて疾駆を開始します!


 基本の宝石炉が九基と、加えること十基。


 さらに盾に搭載されたひとつを合わせて、合計二十基の宝石炉が相乗しあい爆発的なマナを生み出します。


「お、おおおおおおおおおお!!?」


「何の光ィ!?」


 煌々たる蒼い光がデカログスから迸り、右翼からどよめきが沸き上がります。


 アルベール自身、デカログス内部で横溢するマナに圧殺されるかと思わずにはいられぬほどの出力です!


 湧き上がるパワーを抑えきれず、たまらず二基の背部ノズルへマナを回しました!


 二条のマナジェットが背中の空気を膨張させ、ゆがむ景色の中で。


 アルベールの姿が消え失せました。


 音の壁を越えた破裂音が左翼の兵たちの耳をつんざいたのと、黄土色の巨人が吹き飛んだのはほぼ同時でした。


 なんと黄土色の巨人が二転、三転、蹴られた球のように跳ねるようにして横転してしまったではありませんか!


 キャタピラという絶対的な安定駆動がこれでは形無しです!


 この横転に巻き込まれて随伴する兵も多数が巻き込まれて圧死してしまう有様でした。


 横転した手前キャタピラがいくら回っても立て直せず、どうやら身を起こす腕もへし折れて起き上がることもままならぬようでした。


 いったい何が起こったというのでしょうか!


 まだ虚空に残る蒼い煌めきが描く軌跡をたどれば、まずはアルベールが急激な飛翔をして黄土色の巨人へと突撃と分かりました。


 そして勢い余り、左翼の近くの地面に不時着をしたのです。


 ひどく地面を抉って見苦しい不時着具合は、本来なら失笑されるものですがあまりの出来事に誰も驚愕しています。


「ぐ、く!?」


 アルベールも頭を振って立ち上がり、トニトゥルスを助けます。


 たまらず左翼の兵たちが困惑げに声をかけました。


「だ、だいじょうぶか騎士アルベール?」


「無様をさらした。よもやここまでの出力であったとは!」


 デカログスを試運転した際は、ドロシーの立ち合いの下でクォータードライブでの起動でした。


 すなわち二十五パーセントです。


 それでも制御の難しい騎士鎧とは感じておりましたが、問題なしと判断して盾の同期やアルベールに最適化する調整に時間を使ってしまいました。


 しかしフルドライブでの機動で、制御できぬ威力とは!


 完全兜の中でうなりながらルベールはようやく馬上に復帰します。


 トニトゥルスもたった一瞬のフルドライブでずいぶんと消耗しているようでした。


 これは扱いを慎重にせねばと気を引き締めた時です。


 ずしんと、左翼へと独眼の巨人が近づいてきておりました。


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