61 城星寮のルームメイト
朋美には華たちと、先に裏庭へ行ってもらい、虹子は寺沢紫乃に付いて、城星寮の二階に上がった。廊下に出ると、通路の両側に部屋がある。紫乃が「トイレはここ、それから隣がシャワールームです」と教えてくれる。
「1階の大浴場にあるシャワーも使えますけど、二階組は朝とか練習帰りにこっち利用してます。夕方にはお風呂にお湯を張るので、ゆっくり入れますよ」
そう説明してから、紫乃は廊下を進む。一番奥まで行くと「ここが虹子さんのお部屋です」と右側の16と表示されたドアを指差して言った。
トントン!
紫乃がドアをノックして「美麗さ〜ん!」と呼ぶと「あ、ヴァイオレット?ど〜ぞ」と返ってきた。
「ヴァイオレットって・・・」
虹子の声を気に留めることもなく、紫乃がドアが開ける。そこには金髪を1つに束ねたスレンダーな少女が立っていた。金美麗だ。
美麗「おっす!レインボー」
虹子「ルームメイトって金ちゃんか」
美麗「何よ、文句ある?」
虹子「無いけど〜、なんか賑やかになりそうだなって」
美麗は白いTシャツにストレッチ系のジーンズというラフな格好だったが、スタイルが良いので引き立つ。
頭の上に縛り上げて下ろしたロングヘアと小顔で、立ち姿だけ見るとかなり高身長に見えるが、実際は虹子よりわずかに高いぐらい。そのルックスに反して喋り口はコメディアンのようだ。
美麗「う・る・さ・そ・う。そう顔に書いてあるぞ」
虹子「バレたか」
美麗「届いた段ボール、部屋に運んであげたんだぞ」
虹子「あ、ありがとう」
美麗「まさか、あんな秘密が・・・」
虹子「開けたんかい!」
美麗「ジョークだよ。ほら、そこにある」
二段ベッドの奥に横長の机と二脚の椅子があり、その脇の角スペースに見覚えるある段ボールが積まれていた。
「では、虹子さんの鍵は机に置いてあります。私は庭キャンプの手伝いがあるので、お先に失礼します」
紫乃はそう説明すると、お辞儀をして行ってしまった。
美麗「まあ座りなよ、モーニングヒル」
虹子「はいはい」
美麗「長旅お疲れさん」
虹子「紫乃ちゃんって、普段からあんな感じ?」
美麗「うん。ヴァイオレットは小さい頃に両親を亡くして、ある施設にいんだって」
虹子「そうなんだ」
美麗「たまたま施設の人と恵子さんが知り合いで、ヴァイオレットのことを気に入って、城星寮で雇ったとか」
会話をしているうちに、美麗が備え付けの冷蔵庫から二本の缶ジュースを取り出して、一本を虹子に渡した。
「一段目のベッド使ってるから、サンちゃんはアッパーでいい?」と美麗が聞いてくるので「オッケー」と虹子は返す。
虹子「ところで、呼び方固定してくれないかな」
美麗「じゃあ朝丘虹太郎で」
虹子「なんで太郎つけるのよ」
美麗はベーっと舌を出すと「ベッドの下が収納で、半分は開けてあるから」と説明した。
「机の横の収納ボックスも、上の方はサンちゃんが使っていいから」
段ボールの中身の収納は後からやるとして、とりあえずリュックで持ってきて、最低限の着替えだけ収納ボックスの上段に入れた。
部屋にはエアコンもしっかり備わっていて、美麗がいたおかげで涼しくなっていたが、さすがに7月の日中に荷物を抱えて歩いたり走ったりで、かなり汗をかいた。
「ちょっとシャワーを浴びてくるね」
ジュースを飲み終えると、虹子はそう言って自前のタオルを取り出そうとしたが、美麗が「バスタオルは上のベッドに一枚置いてあるから持っていて」と梯子に足をかけて、取って渡してくれた。
シャワールームのことを朋美にも教えないと・・・
虹子はそう思ったが、16番の部屋を出て階段から見下ろすと、タオルを首にかけて、いかにもシャワーを浴びた手の丸顔の女子が目に入った。沙羅か誰かに聞いて、1階の風呂場のシャワーを借りたのだろう。
「抜け目ない奴め」
虹子も急いでシャワーを浴びに行った。




