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60 リアル関西ガール

 虹子と紅井沙羅あかいさらのやり取りも構わず愛情を押し付けてくるランに、甘えるだけ甘えさせてやる。


 沙羅「それにしても”すごっ”て何だよ。」

 朋美「虹子はリアクションが正直でよろしい」

 華「実際すごいから。サラマンダーだもん」

 沙羅「やめろって、その呼び方」


 そう言いながら沙羅は華にムッとした顔を向ける。一瞬怯んだ華に向けて、唐突にニヤッと笑顔を作った。


 朋美「サラマンダーか。中学の頃の沙羅はサボテンダーって感じだったけど」

 沙羅「おいっ針千本はりせんぼんを飛ばすぞ!」

 華「うふふ。早く行こう。裏庭でもうテント設営してるから」

 沙羅「今日から入寮だろ、虹子・・・でいい?」

 虹子「いいよ。サンジじゃなければ」

 華「うふふ」


 正面から玄関を入ると、陸斗りくとが迎え入れてくれた。あかりの格好はスイッチ対策で無視して、薄青のサッカーユニフォームを着ている。


「ジョイフル磐田?」


 虹子が聞くと「うん!さっき行ってきた。スクールだけど。試合は近所の少年団で出てるんだ」と陸斗が元気に答える。


「へえ〜」


 虹子がリュックを下ろしながらと感心すると「5年生でチーム得点王!」と元気な声で答えた。ランが何やら誇らしげに「アン!アン!」と鳴いている。


「足が速くなったのはこいつのお陰だから」と言いながら、陸斗はランを撫でてあげる。ランはキリッとした表情で、自信満々そうだ。


 そう言えば恵子さん、元フラワージャパンだっけ・・・


「お、来た来た。虹子!それから朋美ちゃん?」


 階段の方から声がした。唐銅かなかねあかりだ。グランブル沼津のレプリカユニらしき青色のシャツを着ている。ジョイフルのサクソニーとは違った鮮やかなブルーだ。


「あかりさん、初めまして」


 朋美がとガラにもなく丁寧にお辞儀する。


「おかげさまで、富士宮では美味しい焼きそばが食べられました」


 あかりは右手を横に振って「いいって、いいって」と照れくさそうに答えた。UNITYでも頻繁にやり取りしていたためか、練習参加の時とは印象が全く違う。


 虹子「これ、ひかりさんから渡された食材」

 あかり「おお、サンキュー!あとで最高の焼きそば食べさせるから。おばあちゃんには負けへんで!」

 朋美「おおきに」

 虹子「なぜ関西弁!」

 沙羅「リアル関西ガールの千草沙織ちぐささおりに怒られるぞ」

 虹子「たしか沙織ちゃんが大阪だっけ。大人しい印象だったけど」

 沙羅「チグは意外と人見知りだからな。絡むと面白いよ。お笑いめっちゃ観てるし」

 虹子「へえ〜」


 虹子もお笑いは嫌いではない。帰宅部の時期はオンライン将棋と妄想旅の次ぐらいに心を癒されたのだ。


「よし。あとで沙織ちゃ、チグに絡んでみるか」


 虹子はあかりに焼きそばを渡す。あかりは仕込みをすると言って、調理場のある食堂のドアの向こうに消えた。


 その姿を見届けてから虹子は陸斗に「恵子さんは?」と尋ねる。虹子が入居する部屋のことを聞かないといけない。


 陸斗「裏庭で色々と準備してる。呼ぶ?」

 虹子「あ願いします」

 陸斗「うん、分かった。お母さ〜ん!!」


 そう叫びながら奥の方に駆けて行く。ランも「アン、アン」と鳴きながら付いて行った。


 虹子は昔の自分を見ているようで少し懐かしくなった。寮母ではなく、寮に住み込みで働く寺沢紫乃てらさわしのだ。


「ごめんなさい。恵子さん今手が話せないみたいで」


 紫乃は両手を合わせて謝ってきたが、そんなに平伏される理由がない

「あ、いや全然」


 虹子が反応した後に、部屋のことを聞こうとしたら「あ!虹子さんの部屋、案内します」と紫乃が言ってきた。


 引越しの荷物はすでに送り届けてある。二人部屋だというので、愛用のジャージと最低限の下着、スパイク、ボール、お気に入りの旅行雑誌など、段ボール二箱分で収めた。


 持ってきたボールは最初に凌駕からもらった使い古いの方で、5人のメッセージが書かれたゴムボールは実家の部屋に飾ってきた。


 二人部屋だっていうけど、ルームメートは誰なんだろうと考えながら、虹子は二階の部屋に向かうことにした。


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