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第十二話

「う、うわあああ!?」


 碧依は大きな声を出して、ベッドから飛び起きた。周りはいつもの自分の部屋だ。


「び、びっくりしましたぁ!」


 そんな彼女の耳に、見知らぬ声が聞こえてきた。横を見ると、高校の制服を着た金髪の少女が立っていた。

 学年で違うタイの色は一年生を示している。後頭部についた白色のリボンは、彼女の動きに合わせて揺れていた。


 碧依はこの少女を知っている。


「外月黄菜!?」

「は、はい!? て、なんで急にフルネームで言うですかぁ?」


 少女──黄菜はどこか困惑するように苦笑を浮かべていた。


「な、なんで私の部屋にいるの!?」

「なんでって紫音さんに頼まれて起こしにいたんですよぉ」

「いや、そもそも黄菜は倒したよね!? 怪異から解放されて居なくなったはずでは!?」

「な、なにをいってるんですかぁ!? 私はまだ怪異になっていませんよぉ!」


 目を見開き、黄菜は頰を膨らませる。

 何が起きてるのか分からず、碧依は頭を抱えた。


 自分はあの時死んだはず。怪異化した美鳥に殺された。そのはず。


 ハッと気がついて、黄菜の方に視線をやった。


「美鳥はいる!?」

「美鳥……? 誰ですかぁ?」


 眉根を寄せている彼女は、嘘を言っているようには見えない。ますますわけがわからなくなって混乱する。


 少し考えて、ベッドから飛び起きた。携帯を取り出して、震える手で電話番号を押す。

 かける相手はもちろんあかりだ。


 二回のコールのあと繋がった。


「あかり!?」

『え、何? 碧依ちゃん?』


 彼女の言葉を聞いて、腰を抜かす。安堵の息をついた。

 あれはきっと悪い夢だったんだ。そう思おうとして、後ろを振り返った。黄菜は首を傾げている。


 彼女の存在が、あの出来事は夢ではないと告げている。



※※※※※※※※※※



「つーてーと? 碧依の能力は未来予知って言うのか?」


 指定された廃ビル。一回目と言っていいのかわからないが、前回の記憶では少女の焼死体が見つかって封鎖されていた場所だ。

 ここが魔法少女の溜まり場になっていたのかと、頭を抱える。


 角材に腰掛けているのは、紫音。中学二年生と言っていた。そして、脚を揺らしながらニコニコと土管のうえに座っているのは、黄菜だった。

 そして別にもう一人、オレンジ色のような茶色のツインテールの少女が腕を組んで壁にもたれかかっている。


「にわかには信じられねぇな? 昨日までのこと覚えてないって言うしよお」

「わ、私も信じられないよ……」


 自分が死んでループしたこと。それも中学三年生の冬にまで戻っていること。それをすぐにうのみにできるわけがない。

 記憶が正しければ、碧依は高校に入学した日に魔法少女になった。それ以降数日しか経っていないはずだ。しかし、紫音の言い分には一ヶ月前にはすでに魔法少女として活動していたという。


 混乱させる頭をなんとかフル回転させて整理する。


 とりあえず、今一番確認したいことを紫音に聞いた。


「末染美鳥って魔法少女は仲間にいる……?」

「いや? オレが覚醒したころにはすでにいなかった」

「……いなかった? 聞いたことないの?」

「ないな」


 紫音の言葉を聞いて顎に手を当てて考えるが、言葉の意味がわからない。


「ねぇねぇ、その子はどんな娘だったんですかぁ?」


 黄菜の質問に、思い出しながら答える。


「一目見ただけで相手の何もかもを言い当てることができる子。能力を極力使わないようにボーッとしてる子」

「その子はどうなっちゃったんですぅ?」

「怪異になった……。私はその子に殺されたはず」


 その言葉に、静かに皆が喉を鳴らす。お互いの顔を見合わせる。

 沈黙を破るように口を開いたのは、紫音だった。


「その怪異はどんな怪異だ?」

「声が聞こえて、淡々と心を暴かれて、動揺すると爆散させられる」

「なんですって!?」


 声を上げたのは、今まで黙っていたオレンジ髪の子だ。彼女は高校三年生を示すタイを揺らしていた。オレンジ色の目を見開くその表情には、驚きが混じっている。


「えっと……?」


 名前も分からず困っていると、彼女は髪をガシガシとかきむしる。


「あーもう、面倒くさいわね。あたしは金井かない橙夏とうか、この中で一番魔法少女歴が長いわ」


 お礼を言うと、橙夏はふんと鼻を鳴らす。


「で、お前が驚いた理由は何だ?」


 紫音に続きを促されると、彼女は苛立つように足を鳴らしながら続ける。


「その怪異は三年前に討伐されてるのよ。かなり多くの犠牲を払ってね」

「……どうやって倒したの?」

「あたしは知らないわ、その場にいなかったから。でも、生き残った人は気が狂って次の怪異になってしまったわね」


 その言葉を聞いて、心の中の絶望感を色濃くする。

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