第40夜 ルーズベルト大統領との会談
「今晩は、東條閣下、ご機嫌はいかがでしょうか。」
「頗る良い。」
「それは良かった。ところで、昨日5月14日、ミコヤン第1副首相らのソ連最高会議議員団が来日しました。池田首相に平和条約の締結を求めるフルシチヨフ首相の親書を手交しました。」
「閣下は、ソ連をどう思っていますか。」
「奴らは泥棒だ。」
「そうですか。やはり、日ソ中立条約を破棄し、満州に侵攻してきたからですか。それでは、続きをお願いします。」
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現地時間、11月27日、広田外相は、野村大使と一緒にルーズベルト大統領と会見した。ルーズベルト大統領は、口調は明朗だったが、頑な態度で妥協する余地はまったくないようだった。
野村大使がまず、口火を切った。
「今年3月に大統領と会談し、それ以降、ハル長官となんども交渉を重ねて参りました。しかし、貴国から提示された内容は、段々と日本国に不利な条件となっております。今回のハル長官の覚書は、平和への望みを遠くするものです。」
ルーズベルト大統領は、それは心外だという身振りをした。
「自分は今尚大いに平和を望み、希望を持っている。」
私は、(このタヌキが)と思った。
「全権大使として着任しましたが、今回の貴国側提案は日本を失望させます。」
「私も事態がここまでに至ったのはまことに失望します。日本の南部仏印進駐により第一回の冷水を浴びせられ、今度はまた第二回の冷水、つまりタイ進駐の懸念もあります。」
私は、ここで逆襲した。
「貴国のとった日本の対米資産凍結、石油の全面禁輸の措置は、国際法上は、戦争行為に当たります。なぜなら、これは、経済制裁ではなく経済封鎖です。米英蘭による石油全面禁輸、貿易途絶は、我が国の経済破綻、戦争継続能力喪失を狙ったものです。」
「それは違います。貴国が合衆国の警告を無視し、南部仏印に侵攻したからです。だいたい、ハル長官と野村大使の交渉中、日本の指導者より何ら平和的な言葉を聞かなかったのが交渉を非常に困難にしました。」
「『経済封鎖は戦争行為である』とはパリ不戦条約批准の際に国務長官ケロッグが貴国議会で発言したことではありませんか。」
「この度の経済封鎖は、国際連盟で1938年9月に採択されたものであり、日本国の侵略行為を止めさせるための措置です。」
「貴国は、国際連盟に加盟していないですな。」
「貴国は、国際連盟から脱退しました。それに国際連盟を提唱したのは我が国です。日本の中国に対する侵略戦争について採択された日本制裁案に米国は賛成したものです。」
「まあ、それいいでしょう。私が全権大使として渡米したのは、貴国との戦争を日本政府が望んでいないからです。しかし、ハル長官の覚書の提案は、我が国が受入れられない内容を含んでいます。貴国が戦争を回避する気なら、日本の譲歩に応じるべきである。日本国からの陛下の親書にもあった対米協定案は、どうなりましたか。」
「確かに、貴国の提案は、6月のわが国の提案に沿った回答案になっていますが、それは、貴国が南部仏印に日本軍が進駐する前の提案です。」
「南部仏印からの即時撤兵は、提案に入っています。貴国も受け入れられる内容です。留保条件も付けてないですよ。」
「独ソ戦がその後、始まりました。米国の平和への負担はおもいのです。」
「三国同盟でも米国の参戦にも日本は自動的に参戦しないことを明記しましたが、ハルノートの内容より貴国の希望を満たしているはずです。ドイツはすでに日本と中立関係にあるソ連に攻撃をしていますので、米国が参戦してもわが国は、中立を維持します。文句がないでしょう。」
「文句はないが、私は、いかなる協定も日米両国の根本的主義方針が一致しない限り、一時的な解決で、結局無効になると考えます。」
11月6日、親書と伴に提示した対米交渉案(甲案)、これの取り扱いも冷たいものであった。
まあ、マジック(暗号解読)の情報で日本がインドシナに攻撃するという情報を流していたからしょうがないかと私は、思った。
ハルも大統領を後押しした。
「日本が仏印に増兵し、三国同盟を振りかざしつながら、米国に対して石油の供給を求められるが、それは米国世論が承服しないでしょう。」
「ハル長官、日本の天皇の親書、大東亜諸国経済連合構想、最終協定案をどうお読みになったのですか。日本は、中国も含む全アジア諸国と対等互恵関係を築き、これにアメリカの参加も希望しています。再度言います。日本は、貴国との戦争を望んでいません。」
「日本は、それを行動で示していない。行動で示して下さい。」
「日本として受入れがたいものは、満州国からの全面撤兵、中国国民党重慶政府以外のいかなる政府も否認することを要求しながら日独伊三国条約の実質廃棄を求めること、これらのことは受入れられないでしょう。日露講和条約を仲介したのは、米国のセオドア・ルーズベルト大統領でした。彼の仲介で、我が国は、関東州の租借権を手に入れ、駐兵しました。この点をよくお考えください。」
「満州国からの撤兵・南京汪兆銘政権の取扱と三国条約は交換条件ということですね。」
会談後、ルーズベルト大統領は、ハル長官と密談をした。
「ハル、日本はすでに遠征をはじめているのに、今日の広田外相の物言いは、まるでペテン師だったな。我々がなにも知らないとでも思っているようだ。」
一昨日11月25日、陸軍情報部ニュースでは、五個師団が山東や山西から上海に来て、そこで三〇隻か、四〇隻か、または五〇隻の船に乗りこみ、これが台湾の南方で確認された。スティムソン陸軍長官は、ルーズベルト大統領に告げたあと、陸軍情報部からの報告の「写し」をハルと大統領に送った。さらに、マジック情報では、12月末までの日本軍の開戦を解読している。
広田外相は、東條首相と相談の上、アメリカ陸軍情報部が外務省暗号電を解読しているのを承知の上で、ワシントンの日本大使館に御前会議の内容の一部を流した。開戦の日付を1月中旬から12月末に変えて。
「ハル、君のノートは、日本に先に手を挙げさせることができるようだ。」
「そうであれば、助かりますな。」
「しかし、君のノートには、モーゲンソー私案の飴の部分は跡形もないね。日本へのムチばかりだ。アハハッ。」
広田外相は、大使館の和室で一人になり、意識を後頭部30cmの高さに集中した。そこに1塊の意識を感知し、東條総理を呼び出した。
『東條の先生』:(どうだい。こちらの提案に対するルーズベルトの反応は。)
『広田の先生』:(全く興味を示してこない。普通ならほぼ米国が満足する内容であるなんですがね。)
『東條の先生』:(やはりルーズベルトは日本に手を上げさせたいのだろう。)
『広田の先生』:(予定通り、明後日の新聞に日本政府の意見広告が出ます。)
『東條の先生』:(これで共和党からルーズベルトに攻撃材料を与えることができるな。)
『広田の先生』:(そうです。我々は、明日、共和党の有力議員と会います。)
『東條の先生』:(それは楽しみだな。では、また明後日に連絡を頼む。)
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もうじき就寝の時間ですから今日はここまでとしましょう。
続きはまた、明日、お話します。おやすみなさい。




