表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄泉がえりの東條英機  作者: 広田昭和
11/81

第11夜 黄泉がえりの百鬼夜行(3)

「今晩は、東条閣下、ご機嫌はいかがでしょうか。」


「頗る良い。」


「昨日の新聞に、米軍機と中国のミグ戦闘機が交戦したと出ていました。」


「そうかね。」


 今日は、反応が鈍いな。本当なら、詳しく聞き返すはずだ。

9日の新聞に、米軍機が北ベトナム爆撃し、海南島西南で中国のミグ戦闘機と交戦したのだ。東條閣下の頭の中では、日米戦争があっても米中戦争はないだろう。


「さて、お話は、黄泉がえりの会合の続きからです。よろしくお願いします。」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 永野海軍軍令部長が質問した。

「東條さん、日本は米国の国力に敗けたのだろう。だが、個別の作戦で勝ったことも敗けたこともあったと思う。君たちはその敗けた原因を知っているのだろう。だったらその作戦に勝つこともできると思う。敗けた戦を勝ちにし、勝ちを積み重ねれば、最終的に敗けない戦争ができそうじゃないか。」


「永野さん、そりゃあ無理だ。米国は、対日戦で正規空母だけでも16隻、軽空母9隻就役させたのだよ。その上、最後は1発で広島と長崎を壊滅させた原子力爆弾という最終兵器を開発したのだよ。」


「そうですか。国力だけでなく科学力にも差があったということですか。」


「東條さん、第一次世界大戦で日本が東亜と太平洋で火事場泥棒ができたのも日英同盟と米国を味方につけたからです。」


「そうですな。日本は、満州事変以降、英米との対立を激化させ、国際連盟を脱退し、孤立化の道を歩みました。それも、陸軍が一方的に中国で領土拡大をしたからでしょうな。政府があって政府がないようなものだ。」


「それでは、満州の石油を手にして臥薪嘗胆しろということか。」

杉山総参謀が悔しがった。


「いや、それでは日本が米国に経済を牛耳られている以上無理です。」

広田が外交官の経験から意見を述べた。


「しかし、広田さん、米国と戦えば負けることは、史実が証明している。総力戦研究所の机上演習でも日本必敗でした。」


「そうです。東條さん、まず、米国と戦うことはできない。皆さん、これを共通認識として持って下さい。次に、中国との講和です。3番目に、英蘭の植民地シンガポール、マレー、インドネシアの占領、早期独立です。」

広田外相が大きな戦略的な意見をいった。


「私は、総理として、どうすべきでしょうか。」


「ドイツ、ロシア、英国どの列強も1国で戦争をした国はありません。日本が富国強兵を進め日清・日露戦争に勝利できたのも英国・米国という強国と友好関係に努めたからです。まして、日本は無資源国です。資源を加工し、貿易により外貨を稼がなければ軍備はおろか経済が成立ちません。軍人さんにこういえば怒るだろうが、元々、日本は1国で戦争ができる国ではありません。資源特に鉄と石油のある国と友好関係に努めなければ、戦争はできません。それが、地政学的に遠いヨーロッパの独伊と手を組み、近いアジアでは、国際的には孤立している。」


「広田さん、それでは、どう国策を進めるのか?」


「我が帝国の経済の在り方を変える必要があります。あるべき国の未来は、高い教育水準の国民という資源を活かし、欧米のような略奪的でなく、平和裡に資源を輸入でき、高い付加価値を付けた工業製品を海外に輸出し、外貨を稼ぎ、国が豊かになり、その範囲で軍隊も強くなる。ブロック経済から門戸開放、つまり自由貿易の世界体制に転換させるのです。」


「自由貿易の世界体制ですか。広田さんに言わせれば、我々軍人の考え方は、強兵が先にあって、その後に富国があるということですか。」


「なにも門戸開放は、米国の専売特許ではありません。そうは言っても、アジアの大半は植民地です。たとえ、英国に敗けてもこれを戦って一度は解放させなければアジア、そして帝国の未来はないでしょう。米国とは絶対に戦争をしない。米英を分断させる。英蘭は、今、ヨーロッパで戦っていて、植民地の軍隊を応援できる戦力はありません。」


「山本長官、あなたが見ることが出来なかった大東亜戦争後の世界は、米ソ冷戦と植民地解放の世界です。もっとも我々も見ることはできなかったが、見守っていた。」


「広田さん、そうなった原因は、日本が米英と戦争し、植民地を解放したことだと?」


「そうです。私は元外交官ですから戦争は嫌いです。しかし、英蘭がそう易々植民地を手放すことはないでしょう。中国と講和すれば今の帝国陸海軍なら、インドシナ、蘭領インドネシアであれば、勝てます。インドは、広大なので中々時間がかかるでしょう。」


「英蘭国とは戦争になりますか。」


「英蘭国と戦争をするのですが、それは植民地を解放する闘争です。時代を変化させるためです。植民地主義を終焉させるのです。」


「植民地主義の終焉ですか。」


「そう、領土拡大競争ではなく、自由貿易という名の競争を公平なルールの上で行う時代をつくるのです。」


「戦争がないそんな時代がつくれますか。」


「しかし、今、植民地を英蘭の代わりに帝国が南方の植民地を手に入れれば、米国が黙っていないでしょう。すぐにも、独立させ、彼らの自由な統治に任せなければなりません。」


「しかし、独立させても、ヨーロッパの戦争が終われば、英蘭はまた植民地にするのでは?」


「一度、独立して民族解放に目覚めたら、宗主国がいくら抑圧しようとしても、無理です。おそらく英蘭は、無理をすればこの地域から放逐されるでしょう。そこで、重要になるのが、支那との講和です。中国4億人は、巨大な市場です。満州国ですが中国が承認しないまでも黙認させ、当面は、石油を始めとする資源を確保します。自由貿易ができるようになれば、満州を支那に返そうが、問題はないでしょう。4つ目は、ソ連です。満州国という防波堤がなくなれば、ソ連により中国は共産圏に津波のように飲み込まれるでしょう。」


「広田さん、私は、どうも総理の器ではない。広田さんのような国際的な見識がありません。ですが、天皇陛下への忠誠心だけは負けないと自負しています。陛下の叡慮が平和であればそのように国策を変更します。そこで、今後も皆さんからご意見を伺いたいので、定期的にこの会を開きたいと思いますが、どうでしょうか。」


「異議なし。」


「異議なし。」 


「それなら、我々の最期は、死刑や自決、戦死ですから鬼人みたいなものです。『百鬼会』ということでどうでしょう?」


「異議なし。」


「異議なし。」

会議は、大東亜諸国経済連合構想、対米交渉、対米英戦略、対支那戦略、陸海軍連携などを協議し、2時間ほどで酒宴になった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

もうじき見回りの時間ですから今日はここまでとしましょう。続きはまた、明日、お話しすます。

未来を知る7人がどんな風に活躍するか、面白そうです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ