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「昔のニチドーは良かったな」
普段から妙子と打ち解けてくれる年配の正社員が、心境を打ち明けた。
「仕事は一流。プライドだってあった。だけど、外資に二束三文で手放しちまったんだ。残念だよ。好きだったのにな…」
その日は、正社員が一人一人、上司と面接をする日だった。
「おじさん。やっぱり辞めちゃうの?書類にサインしなければいいんじゃないの?」
「ダメだよ。もうしちまったんだ」
正社員は、普段は見せないが、派遣社員にはない重圧を抱えているのだった。
「まだ家のローンが残っているから、本当は辞めなくなかったよ。でも、妻も辞めていいって言ってくれたし」
「これから、どうするつもり?」
「とりあえず、ゆっくり骨休めさせてもらうよ。妙子ちゃん。頑張れよ」 その言葉が、この正社員との最後の会話になった。
ニチドーでは、正社員は45歳から希望退職を勧められていた。
こうして、60歳手前の正社員を次々と解雇させ、代わりに派遣労働者を増やしていくのだった。




