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群れてくる王様飛蝗を手に持った棍棒で横薙ぎに薙ぎ払う。普通ならばこの棍棒の一撃は物理判定を取り、王様飛蝗の常時発動型を発動させてしまいかねないが、大丈夫なのである。
「うっしゃっ!!俺、最強!!」
俺の気炎は上がる。別にエンチャントを掛けたとか、これが実は魔法攻撃だとかではなく、実はこの棍棒、見た目に反して生活用品であり、相手に1のダメージも与えない代物でありながら、キッシュの身体能力で振るわれたそれは王様飛蝗を打倒するに十分な威力を発揮した。
要はダメージは与えないが衝撃は与えるという謎現象が発生したのだ。
武器を使うのを嫌った俺だったが、これは武器じゃない。そして相手は田畑を荒らす害虫だ。問題ないという理論を、この棍棒を見た瞬間に構築し、前線で暴れまくっているのだ。
「いや、何回見ても不思議な光景ですねぇ……」
後ろで宰相が溜息を吐きつつ、精神的に疲れたと言わんばかりに俺を見てそう吐露した。王様飛蝗の特性を知っているため、何故俺の攻撃で王様飛蝗がその数を増やさないか不思議なのだろう。
「ついでに、もういっちょ!!」
その棍棒を地面に叩き付ければ、大地がうねり掻き混ぜ合わされ、最高の状態の畑が出来上がる。
「そーらっ!!」
そこに適当にキングオニオンの苗の前の状態、本来ならばこんな使い方をしてはいけない種子をばら撒けば、すぐさま芽を出し成長し、それに噛り付いた王様飛蝗がバタバタと倒れていく。
「あぁら、よっと!!」
死んでいる訳ではなく、動けなくなっているだけの王様飛蝗を再び土がうねり飲み込んでいく。土と混ぜ合わされ栄養となっていくのだ。
「うぅ、最高っ!!」
両手を上げてそう叫んだ。最高にハイテンション状態を維持しつつ、俺はゲーム時代に欲しくて欲しくて堪らなかった農耕アイテムである『鬼の農具』と呼ばれる棍棒を振るった。
『鬼の農具』見た目は棍棒だが、対象に1のダメージも与える事は無く、プッシュ効果だけが発生する。一撃で10マス×10マス分の地面を耕す事が出来、この農具で耕した田畑は育成環境を最高状態にする。
一見するとあくまで農具でしかないのだが、これには恐ろしいバグなのかどうかは判らない効果があった。
この農具で耕したマス目に存在するモンスターを一撃で撃破するという物だ。要は強制的に耕したマスへと変化させるために、その上にあったモンスターの画像を上書きしてしまうという物だ。
異世界で現実となった今、それは土のうねりに巻き込まれるというように変化してしまっていたが、攻略掲示板に書かれていた使い方も出来るようで、王様飛蝗相手には抜群の効果を発揮していた。
「錬金っ!!」
ついでにその鬼の農具を地面に突き刺し、錬金を発動。鬼の農具の発動範囲にあるキングオニオンがお坊さん団子へと変化する。
農耕系アイテムの中でも、鍬以外に広範囲に効果を及ぼすアイテムは総じて錬金の発動体として使う事が出来る。当然鬼の農具もそうだ。
「行くぜ、行くぜ、行くぜぇ!!」
「どこにッスカっ!!」
ブンブン振り回し、鬼の農具で飛び回る王様飛蝗を打ち落とし、土を操り埋めていく。テンションは最高潮を超えて、普段なら言いそうにない強気な言い回しで大暴れ。後ろから付いてきていたキヤラがツッコミを入れる。手は休まず王様飛蝗の一匹をエンチャントされた通常サイズのソードで切り裂きながら。
「ふははは、逃げる飛蝗は敵だ。逃げない飛蝗は敵だ。仲間に噛り付く飛蝗は訓練された敵だぁ!!」
「あーあ、まぁいいっすけどねぇ……」
鬼の農具を使いたくて使いたくて仕方がなく、変なテンションのまま俺は鬼の農具を振るう振るう。まだまだ空を埋め尽くす飛蝗は尽きず、お坊さん団子につられてブルーハワイローチやメタルアントも居る。
俺の大暴れに付き合う獲物はまだまだいる状態だ。定期的にはぐれが襲い掛かってくる以外は全て俺に打倒されてしまい、暇そうにキヤラが呟いた。




