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出来れば金曜日にもう一話上げます。
「そう、アニーキ団長は怪我で一時的に動く事が出来ないのね?」
「すみませんっす。そういう事なんで、ギルド規定に則って休暇申請お願いしますっす。」
「判ったわ。という事は、代表は副団長のジキケイさんでいいのかしら?」
「うす。」
そう目の前で交わされる会話を耳に入れる程度に聞き流しながら俺は、ギルド内を見渡す。
「……なんだか、少なくなったな。それともこんなものなのか?」
「ああ、前線が活発になってきてるらしいのよ。だから将軍派閥の連中が数だけでも揃えればって連れて行っちゃって。」
「将軍?」
「マーケ将軍すね。先先代の時から仕えている重鎮で、人族との国境戦線で何度も活躍した英雄っす。」
だが前にウッディタウンに来た時よりも騒いでいる人達が明らかに少ない。といってもアニーキが怪我をしたので、ギルドの一時脱退申請、これをしないとどんな怪我をしていても強制指名依頼を入れられたりする。の申請を行うために来ていたので昼は過ぎている為、こんなものなのかとも思っていたり。
指名依頼は個人に対して行われることもあり、またどんな怪我を負っていたとしても、この指名依頼を断ったり、失敗したりすると傭兵団の信用どころか、ギルドの信用も落としてしまったとしてペナルティがあったりするから、決して疎かにできない申請だったりする。
その申請と、シヤさん達忍鬼の人達を受け入れた為に膨れ上がった、様々な生活必需品の購入の為に久々にウッディタウンへとやってきていた。先に申請をするからとミシュリーさんの所で事情を話し、その申請をしながらも急ぐ訳でも無いので世間話に興じていたので、俺も遠慮なく聞けた。
「マーケ将軍ねぇ、私はあまり好ましいとは思えないけど……」
「なんでっすか!?あの人が居たから、先先代の時の勇者の進行にしたって、全滅しないで済んだんすよ!!」
「落ち着けって。でもミシュリーさんも何か理由でもあんの?」
ミシュリーさんの言葉に暑苦しく詰め寄る一緒に来た団員を止めつつ、少なくとも目の前の団員の様な熱く語る者も出てくる人なら、そんなに酷い事は無い筈なんだが。全部が全部物語の主人公の様な清廉潔白な人物だとは思わないし、そんな人物なら人種族とも仲良く出来ているのではないかとも思えるし。
だからこそ頬に手を当て、微妙にその名前を聞くのも嫌という雰囲気を出しているミシュリーさんにその理由を尋ねる。
「私ね、昔は王都暮らしだったのよ。」
「そうだったんすかっ!?」
「えっと、そんな驚く事か?」
「当然すよ!!王都に住む住民は王都のみにある税と言われる住民税を払ってるんすから。それを払えなければ追い出されるんすよ?犯罪者として。」
だからその住民税を定期的に払える一定以上の金持ちか、または商人ぐらいしか王都には居ないとも言われているとのこと。
「……親が商人だったのよ。でね、先代の頃のだけど、士気を上げる為って名目で軍事パレードが新年に必ず行われるんだけど、その時偶然にも直接話す機会があってね……」
「羨ましいっす……」
「そんな良い物じゃなかったわよ。子供に延々と戦闘の何処がいいか語ったのよ?それに……」
「それに?」
「先先代は戦争は反対だったのだけれど、将軍が貴族連中を引き込んで無理やり戦端を開いたって王都じゃ有名なのよ?」
俺にとってはふーんという話である。戦争なんかしているよりも、むしろ畑を耕していたい。ただでさえ人口が増えて食料供給の為にも畑を増やす必要があるのだから。関係のない話である。
「でもその話って、攻め込んできた勇者を悠長に構えていた陛下の策では負けると判断した将軍が、何人かの仲間と共謀して前線に攻め込んだという話じゃなかったすか?」
「いえ、将軍が先に人族領に攻め込んだのよ。それまで先先代は外交で何とかしようとしてらしたの。当時の人族側の外交官がその当時の勇者だっただけなのよ?」
「まぁ、噂には尾ひれが付くもんだ。直接見てない以上、想像するしかないからな。」
そんなぁと落ち込む団員を引きずりながら、俺はギルドを後にしようとする。買い込む物が相当あり、店が少なくあっても小さいこのウッディタウンで買い物をしようとすると、何件か回らなければならないからだ。
移動はコッケイオウがあるからいいが、あまり遅くなることもできない。世間話ぐらいならなんてことも無いが、団員一人があまりに落ち込み過ぎて無駄に時間を使う訳にもいかない。
「んじゃ。」
「ええ、でもキッシュ君ってそっちが素なの?」
「へっ?」
「いや、気付いてないかもしれないけど、こう、少し粗暴というか、ね?」
「そう、かな?」
「前来た時も見た目通り鬼族ねと思ったけど、それよりも今は子供っぽさがなくなってきたっていうか、なんというか。」
「まぁあれから色々あったから。」
そうねとミシュリーさんは納得したが、俺は少し焦っていた。指摘されるまで自身の考え方が変わっている事に気付いたからだ。そんな内心を隠しつつ、俺は団員を引きずりながらギルドを出たのだった。




