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魔族としてのトロールと魔獣扱いされるトロールとの差は、知能の高さだけではない。魔獣扱いされる方のトロールの方が本能で生きて居る為か、やや力が強い傾向にあるという事が判ってはいる。
知能が高い方が、様々な方法で自身を有利に持っていける分、繁栄はしている。だが突発的に戦闘になってしまった場合、肉体面で優れている魔獣扱いされている方が有利になってしまう事も多々あった。
「グギャァオゥ…………!!」
「ぐお゛ぁぉ!?」
押さえつけられていた野生のトロールが力尽くでガデッサを弾き飛ばす。俺の方を向いていた為に、ほんの僅かに押さえつける体勢が不十分だったのだろう。
「大丈夫かっ!?」
「あ゛あ゛、ゲガばな゛いげど……」
「……相手は思いっきりやる気満々だな。」
吹き飛ばされたガデッサは二転三転転がり、俺の傍で止まった。怪我の有無を聞くと大丈夫と答えが返ってくるも、野生のトロールの方へと視線をやれば、ガデッサが無傷だったのが気に入らないのか気勢を上げていた。
「ずごじずれば、あ゛にーぎも゛ぐるばずだ。」
「それまで耐えろって事か。」
野生のトロールの声は村まで届いていたとガデッサが言う。村に交代で先に帰ってきていたガデッサは、アニーキ達への伝言をハーゲテーナイに頼み、ここに来たのだと言う。だから、時間さえ経てば援軍としてアニーキ達がやってくるはずなのだ。
「グギャァッ!!」
「くっ!?」
「ごの゛っ!!」
だが野生のトロールがそんな事知った事かとばかりに、再び引っこ抜いてきたままの巨木を振り下ろしてくる。俺は一歩横に避け、ガデッサはシールドを両手で支えるようにしてその巨木を防いだ。ガインと重低音が鳴り響く。ガデッサがその衝撃に呻くと、気をよくした野生のトロールはそのまま二度三度と振り下ろす。
「ぐう゛ぅ……」
「いい加減にしろ、よっ!!」
俺の攻撃は野生のトロールの厚い脂肪に阻まれ届かない。だが届かないのならば武器の方に攻撃を当てればいい。振り下ろされると同時に蹴りを当てれば、巨木は粉々に砕け散る。
「ぐおっ、硬ってぇ!!」
「…だずがっだ、ずまん。」
だがその巨木が意外なほどに硬く、蹴った足がじんじんと痺れる。野生のトロールは巨木が砕け散った衝撃で後ろに下がり、ガデッサが俺に礼を言いつつ改めて武器を構えた。
「ギャァギャァッ!!」
「うっそぅ!?」
巨木という武器を破壊された野生のトロールは足元に埋まっていた石を持ち上げる。それは以外にも大きく、周りの土を盛り上げながら持ち上げられた。大きさは俺の身長ぐらいあるだろうか、すでに岩と言っていいそれを振りかぶって投げて来た。
「お゛お゛お゛お゛…………!!」
だがガデッサはそんなものにも躊躇等せず、突っ込んでいく。飛んでくる大岩を盾を斜めに構え逸らし、そのまま振りかぶった大斧を振り下ろした。
「やったっ!!」
「ま゛だだっ!!」
頭部から股下まで唐竹割になった野生のトロール。それを見て俺は歓声を上げるも、見た目に似合わない素早い動きで下がってきたガデッサは警戒を解かずまだ倒せてないと言う。
「うげっ!?」
見れば真っ二つになった断面から粘着質なものが糸を引き、その断面を繋げ合わせている。俺は忘れていたが、トロールの最も知られている基本能力である再生能力である。
「ど、どうすれば……」
「こうすんだよっ!!」
攻撃しても再生され、打撃は効かず、向こうの攻撃能力は高いという。どうすればいいのか困惑した俺の声に、聞きなれた声が答えた。
「ギャアァッ!!」
「はっはぁ!いくら怪力でも鬼の集団と力比べは分が悪いだろ?」
「アニーキ!!」
上から降ってきたのは案の定アニーキであり、見れば野生のトロールは鉄の網を被り、その網を鬼の傭兵団十数人で引っ張っている。蠢く野生のトロールに向かってアニーキが高笑いしていた。
再生能力の高い相手とやり合う場合、その再生能力を上回る攻撃を連続で当てなければならない。または一撃で粉砕してしまう事なのだが、その見た目に反して結構素早いトロールに攻撃を当てる事は至難の業であり、だからこそまず捕縛する事を考えるのだそうだ。
今回は俺達が戦っている間に傭兵団で集まり、両端を握った傭兵団員が待機しつつ、真ん中を持ったアニーキが野生のトロールの頭上を飛び越えて、網から手を離す。後はそれを引っ張るだけで野生のトロールを捕縛する事が出来ると言う訳である。
「んで、無事かよ。」
「なんとか。」
「助かったよ、アニーキ。」
「うおっ、……その体質もある意味スゲーな。」
野生のトロールが抵抗するも、左右から引っ張られているからかズルズルと引きずられている。それを横目で見つつも俺達の方を向いたアニーキ。急いできたが、大丈夫かと尋ねてくる。無事だと告げる俺達だったが、戦闘で動いていたからか、少し痩せたガデッサにアニーキが驚く。
「ぐぐ……、団長、こいつ結構、力、ありますぜっ!!うわっ!?」
「あん?なにっ!?」
いまだ暴れる野生のトロールを捕獲した網を引っ張っていた団員の一人が、俺達と会話していたアニーキに声を掛けた瞬間、その団員の驚く声がした。
一度野生のトロールは網がピンと張った瞬間に後ろに下がり、緩んだ瞬間を狙って突っ込んだのだ。
その声に振り向いたアニーキの視界に突っ込んで来る野生のトロールが映る。
「うおおお…………、ぐぅ!?」
「団長っ!?こんのっ!!」
「グギャァ!?」
突っ込んできた野生のトロールはアニーキを顔面の辺りでとらえたまま、背後にあった大木とぶつかった。アニーキを挟み、その巨木を揺らす。アニーキがうめき声を上げ、そんなアニーキを見た団員が再び網を引っ張った為に野生のトロールはバランスを崩しながら網に絡めとられた。
「アニーキっ!!」
「俺より、先にそいつに止めをさせっ!!」
アニーキの言葉に団員の数人が網の隙間から刃物を差し込む。ガデッサも近寄り大斧を振り下ろした。数合の後、再生能力が効かなくなるまでバラバラに切り分けられた野生のトロールは息絶えたのだった。




