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何時までもくよくよしていられないと考えた俺は、今水米の苗を植えなおしていた。新たに植えなおすのだしと、前回は沼地に疎らに植えていたのを、今度はきっちり真四角に区切られた田んぼを作りあげた。等間隔に前後左右に紐を張り、その紐が重なった部分に苗を植えていく。
「念入りに魔獣除けは作っとこう。」
苗を植え終われば、そのまま崩れた魔獣除けの壁の修復に移る。前は中に入れたゲームの時の魔物除けアイテムを過信し、一部直さなかった。その所為でかどうかは知らないが、それでも魔物除けアイテムを過信してはいけないと学んだ。
だからこそきっちりと修復し、更にその周辺にこの村でも使われていた、魔獣が嫌がる臭いを発していると言われている植物を植えたり、壁の厚みを増したりと色々工夫する事になった。
「次はまた開墾かな?」
野生のトロールがこの周辺に居るからと、アニーキ達とガデッサは森の中へと分け入ったが、その前に忍鬼のシヤさんを送って行った傭兵団のメンバーが、予定通りならば距離的にそろそろ帰ってくるだろうと教えられた為、ティムしたコッケイオウ用の魔獣小屋と放牧地を作らなければいけないのだ。
当然だが魔獣用の放牧地には魔獣の嫌がる魔獣除けを使う事は出来ない。
だからこそ野生の魔獣に襲われたとき様に、逃げ回れるようにそれなりの広さを確保する必要があった。まぁ曲がりなりにも竜種であるコッケイオウだから、この辺りの魔獣にどうこうされる心配は無用なのだろうが。
村を挟んで水米を植えた田んぼの正反対側にある、なだらかな上り坂になっている丘の様な場所を開墾する事にし、少しずつだが広げていた場所がある。
そこを一気に開墾してしまおうと、生えている巨木を切り倒し、切り株を引っこ抜き、凸凹になった地面を均して、クロツメ草の種をばら撒いた。
「おしっ、魔獣小屋もこんなもんだろう。」
切り倒した巨木を錬金で丸太に換え、それを材料に魔獣小屋を作成。見た目は二階建てのウッドハウス。だが玄関部分に巨大な穴が開き、中は仕切り等なく箱型。床一面に干された草が敷き詰められ、壁には餌場と水場が設置されていた。
「柵も作っとくか。」
丸太が余ったので、丸太を更に錬金し杭を作り、それを放牧地の外側を回るように一定間隔で木槌で打ち付けた。それをただの頑丈な縄で結べば、柵の出来上がりだ。
柵と言っても、普通に空を飛ぶ事が出来るコッケイオウなので何の意味も無いが、ここからが放牧地ですよと他者に教える事が出来るので、まぁ、所謂無いよりはマシと言う事だ。
「あいたたたた……」
腰に手を当て反るようにして伸ばす。力仕事に中腰での作業と一日行ったので腰に痛みが走る。だが仕事をしたという実感がある為、どちらかというと気持ちのいい痛みだ。
「明日も晴れそうだな。」
夕焼け空を見れば、綺麗に茜色に染まっており雲も無い事から、明日も晴れそうだった。
「どれ、さっさと帰るか。」
呟き帰ろうとした時である。傍の茂みが揺れたのだ。なんとなくデジャブーを感じ、そこを注視すると、案の定トロールが出て来たのだ。
よう。と気軽に挨拶をしようとしたのだが、そこでそのトロールがガデッサでない事に気付いた。
「グギャァッ!!」
「うおっ!?」
そのトロールは唾を飛ばしながら叫び声を上げ、傍にあった巨木を力尽くで引っこ抜いてきたのだろうそれを、俺に向かって横薙ぎに振るった。
驚きつつもそれを跳んで回避すると、足元を巨木が通り過ぎる。着地と同時に俺は、目の前のトロールが水米をダメにした犯人の野生のトロールだと判断し、出ている腹に殴りかかった。
「なにっ!?」
殴りかかるも、厚い脂肪が衝撃を吸収してしまい、拳がただ埋まるだけに終わる。驚く俺に野生のトロールは持った巨木を縦に振り下ろし押しつぶそうとするも、すぐさま後ろへと跳んで回避した。
「ギャァギャァ!!」
それが気に入らなかったのだろう野生のトロールがやかましく喚き立て、再び縦に巨木を振り下ろしてきた。
「こなくそっ!!」
少し痺れたが、それをキッシュの身体能力を信じて、頭上で腕を交差して受け止める。そのまま所々に出ている枝を粉砕しながら、巨木の淵を突き進む。
再び持ち上げられ振り下ろされた巨木が、地面の砂埃を巻き上げ視界を隠すも、すぐ目の前にまできたトロールに殴りかかった。
「腕ぇっ!?」
だが突如巨大な掌が俺の視界一杯に迫ってくる。勢いがついたままなので避ける事も出来ずに、その手に捕まる俺。
野生の感で俺が向かってきてる事を察知し、俺を捕縛したようだ。
「うぎぎぎ……」
掴まれた時におかしな体勢で掴まれたために力が入り辛い。ただただ拳を握りしめるだけの野生のトロールとの力比べは分が悪かった。
「が、ぎいぃぃ……」
押しつぶされないようにするのが精一杯であり、力尽きればそのまま握りつぶされる事は判っていても、どうする事も出来ずに、ただ耐える。
「お゛お゛お゛お゛っ!!」
「グギャァッ!?」
だが突如野太い声と共に横から衝撃が走り、俺は空中に投げ出された。
「がっ!?」
「だい゛じょう゛ぶか?」
「ガ、ガデッサ?」
そこに居たのは野生のトロールを横から押さえつけるガデッサが居た。




