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6-1

 黄色い太陽光を腕で遮り、俺は鍬を担いで家を出た。別に異世界だから空が黄色いと言う訳ではなく、普通に白い雲がある青い空にオレンジ色掛かった太陽がサンサンと輝く。では何故か。セキノモリノヒメがこの村の住人となってから、イクスが俺の家に住むようになったからだ。


 それまでは子供達と同じ家で寝泊まりし、時たまに俺の精気を吸いに来るといった生活リズムだったのだが、セキノモリノヒメが俺の精気を求めて夜這いしてきたのだ。


 その夜這いは未然に察知したイクスによって防がれたのだが、何気に負けず嫌いというか子供っぽい性格のセキノモリノヒメは諦め悪く、何度も何度も夜這いを仕掛けて来た為にイクスが俺の家へと移り住んだのだ。


 この季節の天候は独特なもので、夜中にザーとまとまって雨が降る。そして朝方にカラッと晴れ、蒸し暑くなるのだ。屋根の上に逃げようとも雨に降られてはかなわない。なので大人しくイクスに食われていると言う訳なのだが、しっかりと搾り取られて居る為にどうしても朝が辛く感じる。


「はぁ……」


 溜息を吐けば幸せが逃げると言うのならば、この幸せで甘美な地獄から脱せられるかもしれない。どこでバレたのか、俺の性癖を知ったイクスが毎晩毎晩あの手この手で攻めてくるのだ。そりゃ男なら逃げられないというものだろうに。


「おー、生りまくってんなぁ。」


 目の前には一本の木。見上げれば、リンゴぐらいの大きさの梅の様な実が複数生っている。回復の実と呼ばれる素材アイテムであり、回復の種とは違い、これ単体で回復薬が作れ薬草と混ぜて錬金すれば、効能の上がった上回復薬が作れるものだ。


 ゲームの時には1~3個しか一本の木から取る事が出来なかったが、こちらの世界では一本の木から多い時で20個くらい取れてしまう。少なくとも10個以上は生る。それがこの周辺に見渡す限り植えてある。この辺りは回復の実専用スペースで、主な販売先として鬼の傭兵団が利用している。


 鍬を幹に立てかけ、脚立を用意し、その実をヘタの部分で切り落とし、腰のあたりにつけた農業専用に作った魚籠を籠代わりにして収穫する。


 なぜ広範囲収穫スキルを使わないのかと言うと、こっちに来てからゲームでは出来なかったある事が目的の為であり、広範囲収穫スキルを使ってしまうと、この方法が使えないと判った為にわざわざ面倒な方法をとっていた。


「うしっ! 樽一杯になったな。んじゃ、さっそく錬金と。」


 目の前に置かれた樽の中に満杯になるまで回復の実を収穫。そしてそのまま樽に錬金をする。すると樽の中身が回復薬に変わるのだ。


 もし広範囲収穫スキルで収穫してしまうと、そのアイテムはイベントリの中に入ってしまい、このまま錬金をすると、何処から現れたのか判らない容器に入った、個別のアイテムとして出来てしまうのだ。ただ容器の分微妙にだが少なくなってしまい、これだけの量を同時に行えばそれなりの差となってしまうのだ。


 村の中の、鬼の傭兵団が使う用に建てた宿屋擬きと呼べるような宿泊施設の横に、新たに建てた自家製製薬店、よくRPG等で出てくる道具屋の事だ。で販売している。値段は前にアニーキに見せて貰った王都で売られている回復薬の倍の値段設定としていた。


 アニーキには倍の値段程度でいいのかと聞かれるほどで、実は効能に対し値段がものすごく安く設定されている。王都の回復薬を見せて貰ったのだが、この回復薬は錬金に失敗した時に出来る回復薬擬きとゲームの時には言われていたもので、時々オークションに最低金額で販売されていたものだ。


 俺は村人だった為に、回復薬の錬金に失敗したことが無く、回復薬擬きの事をよく知らなかったのだ。農耕用アイテムと言う訳でも無く、ただ効能が普通の回復薬の4分の1であることは知ってはいたが正確な値段を知らなかったのだ。


 なにせ性能が低すぎて、普通にNPCの店に売られている回復薬もそこそこ冒険していたプレイヤーにとってはそれほど高いと言う訳でも無く、だからこそ運営も店で販売はしていなかったアイテムである。要は錬金のハズレアイテムなのだ。


 オークションに出す時は、最低金額である10GDからであり、俺にとって回復薬は同じくらいのアイテムであった為、その倍の値段で販売し始めたのだ。しかも最初に買う時は、容器に入ったタイプで買わせ、その容器を持って来れば、この樽から入れる事で値段を更に4分の1減らすようにした。


 俺からすれば、全部自分で育てた物、作った物を販売しているものだし、この辺りの自然の恵みは土も含めれば尽きる事が無い程で、要するに元手はただなのだ。手間がかかっている程度であり、俺からすれば売れば売る程ぼろ儲け出来る。


 何に使うと言う訳でも無く、ただ金だけがイベントリ内に貯まっていく状態であるのだが。


「容器の方を買っていくのもいるからなぁ。錬金と。」


 そうなのだ。回復薬を使うタイミングとして戦闘中であることが多いそうだ。だからこそ容器を投げて使う使い方をしている為に、容器が割れて再び使う事が出来ないようになっている事も多い。


 多いのだが、そもそも俺の回復薬は元々の値段設定が安い事もあり、気兼ねなく容器売りの方も大量買いしていく。話題に上がって村が見つかる事を考えて、転売は禁止している。アニーキもその事は了承済みでちゃんと守ってくれているようだ。


「沼の方も見てくるか?」


 その他この辺りに新しく増えたのは沼。元はセキノモリノヒメの居た地中都市だ。セキノモリノヒメはゲームではボス扱いの魔獣であった。特に地の属性に特化しており、こちらに移り住み地中の都市は埋めると決定した時に、腕の一振りで埋めてしまったのは圧巻だった。


 周辺から土が移動したために、少しばかり土地が下がり、空気を含んだ柔らかい状態だった為に、この季節独特な天候と相まって、底なし沼へと変貌したのだ。


「おっ、生り始めたなぁ。」


 そこは元々俺が畑を作っていた一部も巻き込んでいた為、新たに広げて作り、水路も整備。村を巡って最後にロカフグの居る池へと流れ込むようになっている。その一部に水米と呼ばれる常に水を張っていなければいけない米を育て始めたのだ。


 この水米、収穫出来るようになるまでに1週間掛かる。何だたったの1週間かと言うことなかれ。この世界の植物の生長は馬鹿速く、回復の実すら1日あれば実から木になるのだ。1週間という日数がどれだけ長いのかわかるというものであろう。


 植えて5日の今日。実はまだ緑色だが確かになっている。こっちに来てから久々の米に俺はウキウキと土手の雑草を抜き始めたのだが、その時すぐ傍の茂みが揺れた。


 沼へと変貌した時に、魔物除けの一部が崩れ機能していないのだ。だから定期的にこの辺りは見回らなければならず、時たまに野生の魔獣が飛び出てくる事も珍しくはない。


 時にはこれが鬼の傭兵団員だったりするために、先手を打つ事はせず、鍬片手にジッと揺れた茂みの方を見ていた。


「っぶら!? だぐれな、てまだげ、ちゅすぁらだ!!」

「はい!?」


 だが出て来たのは紫色の肌にアニーキよりも長身で肩幅のある、あるがぼっこりとお腹を出して、だが腕を見れば肥大化した筋肉がついている。手には金属製の大斧に、反対側には大き目のカイトシールドを装備し、体全体は布と革、そして急所だけを守る最低限の鎧をつけたトロールと呼ばれる種族がいた。


 茂みから出て来たそのトロールは慌てたように腕を振り回し、だが俺に危害を加えないと言いたいのか、独特な喋りで俺に喋りかけて来た。来たのだが、なんと言っているのか判らず、俺は聞き返していた。

イクス「今日は合法ロリナースでいいかしら?」

俺  「え゛っ!? (何時知られたんだ!?)」

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