表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IN THE GAME ~勇者と魔王が戦争している異世界で俺は農耕する~  作者: yosshy3304
第四章 俺は今日も畑を『耕す』。
38/68

5-外伝 夏休みの宿題?好き嫌い編

あくまでこの話は外伝です。本編には何の関係もありません。

「トマーモを食えない子供等に食わせる方法なぁ……」

「ええ、サキュバスだからって言っても流石に精気ばかりっていうのも栄養が偏るから。出来たら野菜も取らせたいのだけれど……」

「この季節だし、夏野菜中心ではやはり圧倒的にトマーモが不人気でねぇ。」


 そりゃ仕方がないとも思う。見た目トマトのこの野菜は、所謂ファンタジー世界版のトマトだ。見た目も栄養も作り方も料理の仕方も一緒なのだが、唯一違うのが、このトマーモ。ものすごく凶暴で、口にした途端にその人物の舌に噛みつくという習性がある。


 だからこそ苦手とする子供等も多いのだが、このトマーモ、食べ方があって、この食べ方をすれば舌を齧られる事もないのだが、俺のようにゲームの知識がある訳でも無いこの世界の、何事も経験でとその食べ方を教えたりはしないのも原因の一つである。


「普通に食べ方教えちゃダメなのか?」

「トマーモに齧られると冬でも凍死しなくなるし、夏の猛暑で夏バテすることも無くなるのよねぇ。」


 俺が食べ方さえ教えれば解決する問題ではないのかと聞けば、以外にこの野菜、熱に対する抗体を持っていたりするのだ。いくら人と比べて頑丈な魔族とはいえ、子供の内は体力が低い。だからこそ自然の驚異に対する先人の知恵とも呼べるトマーモに齧られる事を無くす事はしたくないと。


 ハーゲテーナイとイクスの相談に、畑を耕すのをやめて鍬を支えに額から落ちた汗を拭う。


 元の世界でも子供の野菜嫌いというのは何処にでもあった。トマーモのように噛みついてくるわけではないが、野菜独特の苦みが、触感が嫌いという子供を見たことがあるはずだ。そういう時はどうしてたっけなぁと自身の記憶を引っ張りだすも、そう言えば俺って子供の頃は好き嫌いなかったと、少なくとも思い出せる範囲ではそうだ。


 夏の暑い日に、両親がおいしそうに夏野菜中心のサラダを食べているのを見て、興味を持った俺が食べ始めたのがきっかけだったか何だったかというのを母親に聞いたことがあったと思う。


 思うもこの手は使えないよなぁと思い直す。もしそれで野菜嫌いがなくなるのならば、今こうして相談を受けてなかった筈で。そういえば小学校の頃に野菜を育てて収穫したことがあったのを思い出す。


 授業の一環で、その収穫した野菜を使って調理実習をした。その時に作った野菜炒めや味噌汁は、野菜嫌いだった友達連中もうまいうまいと言って食べていた記憶があった。


「うーん、だったら自分達で育ててみるか?」

「それだけで食べられるようになるかしら?」

「……収穫体験でもすりゃ、少しは残さないようにはなるんじゃね?」


 せっかくここまで苦労したんだからって感じで。そう俺が続ければ、それでも大丈夫かなとやや心配気にイクスが表情を不安色に染める。


「……とりあえず何でもやってみましょ。試して見なけりゃ、結果は判らないわ。」


 ハーゲテーナイの言葉でイクスも頷く。そしてこの村の子供達によるプチ農業体験が始まった。






「よし、まずは鉢植えの底に鉢底ネットを敷いて、そのあとに軽石の砕いたこれらを入れると。」


 目の前で二つの植木鉢の周りで子供等が作業している。用意したのは小粒のトマーモが複数いっぺんに生るプチトマーモの苗だ。畑に植えてあるプチトマーモのわき芽を取ってポットに植えて置いたものだ。このポットは藁を編んで作ったもので、保水性も排水性もプチトマーモように調整してあるアイテムでもある。


 トマーモの株の増やし方としては有名なやり方で、わき芽を地面にさしておくだけでも、茎から根を張り定着する事は多々ある。ポットの方はそのまま植木鉢に埋める事が出来、いずれ植物の栄養へと変わる。


 この村の子供の数が少ない為に班を作って、班ごとに育てさせることとなったのだ。


「この辺りは100%腐葉土だからな。少しだけ小粒の川砂利を混ぜた物を用意したから、これを鉢の8割ぐらいまで入れる。」


 こっち世界の植物はある程度ストレスがあった方がよく育つ。そのうえ微生物の活動を活発化させる為にも、少しだけ川砂利を混ぜた物の方が育成にいい。準備しておいたそれらを鉢の八分目ぐらいまで入れて、中央を少しくぼませて、そのままポットの苗を投入。


「上から土を被せて、鉢いっぱいに入れろよ?水掛けたら少し減るからな。」


 上から追加で土を植木鉢の淵まで入れて、取り出したるはゾウを模した色とりどりな如雨露。ゾウの鼻の部分からシャワーとなって水が出る。


 赤色と緑色のそれらを渡して、近くを流れる農業用水として確保してある小川に水を汲ませに行かせた。植木鉢に水を掛けると、中の空気が抜けて、こんもりしていた土がペタッとした。


「おし、最後にこれを挿して、後は観察日記だな。ちゃんと描いてイクスかハーゲテーナイに見せろよ?」


 俺が取り出したのは固形肥料。挿しておくだけ大変便利『植物スクスク棒』と表面には書かれている。これを挿しておいて、水を掛けるたびに栄養が溶け出し、植物の生長を促すという設定のものである。


 観察日記は夏休みの宿題ぽいが、少しでも野菜の事に興味を持ってもらおうと始めたものだ。植物の成長の記録として絵日記をつけさせる。これをイクスかハーゲテーナイに見せると、見せた班員はフルーツが貰えることとなっていた。


 こっちの植物の特徴として、成長が馬鹿速いというのがある。ゲームの設定がもしかすると生きているのかもしれないが、ゲーム内で物にもよるが、たった一日で種が木になり実を生らす植物もあった。


 プチトマーモは3日で実を生らす。たった三日。子供等が飽きる前に終わらせるという目的もあってちょうどよかったというのもあった。班員はそれぞれ三人。だから交換日記みたいな感じにもなるんじゃないかとも予想していた。


「ふむふむ。楽しみじゃのう。」

「そうですね、姫様。」

「いや、なんで参加するんだよ。」

「いいではないか。何か楽しそうな事をしておったから、見に来れば……わらわも参加したいのじゃ。それに加護も与えてやろうぞ?」

「……いや加護はいらねぇって。参加したいんなら別にいいけどさ。」


 いつの間にか九尾の幼女ことセキノモリノヒメとパッセも参加する流れとなっていて、わざわざもう一組用意する手間は増えたが、それでもこの村へと誘ったのは俺達で、用意するとしても最初の準備段階で予備を用意してあったから問題はない。


「それじゃあ、明日から毎日夕方に水やりな。」


 この季節はこの辺り独特な気候である、昼間はカラッと晴れて、夜中にザーと雨が降る為に朝の水やりはしなくてもいい。俺の言葉に元気よくはーいと返事が返ってきた。


 俺はこれから畑を見に行くが、子供等プラス九尾の幼女組は観察記録をつけるようだ。それぞれ切り株を机と椅子代わりにして描くものを用意している。


 やれやれ、何処まで上手くいくかねぇとこの時の俺はあまり期待していなかったのだが、意外や意外、三日後の収穫を終えた後、プチトマーモに限ってと言葉はつくが、子供等が普通に食べられるようになったとさ。


「いったぁっ!?」


 余談だが、プチトマーモに舌を齧られる体験を俺は初めてした。周りでは俺を指差して笑う子供達プラス九尾の幼女。その直後、セキノモリノヒメも齧られ、更に笑い声は広まったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ