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IN THE GAME ~勇者と魔王が戦争している異世界で俺は農耕する~  作者: yosshy3304
第三章 俺はダンジョンで『戦う』。※三人称です。
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4-6

 竜種のブレス攻撃には、いくつかの種類がある。有名どころでレッドドラゴンの火炎放射器の様な真っすぐに伸びた放射線状のブレス。岩を主食とするガーンドラゴンのビームの様な圧縮されたブレス。全身から噴き出すように放たれるサンダードラゴンのブレスのように。


 では見た目はともかくとして、曲がりなりにも竜種であるコッケイオウのブレスはどうか。今まさにキッシュ達に向かって放たれたそれは、扇状に広がった。


 その扇状に広がったブレスの真ん中あたりに居たアニーキと、一番後ろに居たため、最もブレスの発射場所に近かったキッシュは、自慢の身体能力でもってすぐさまブレスの有効射程範囲外に逃げ込む。


 もっとも離れていたハーゲテーナイと四夜は、いつの間にか天井付近に居た。天井付近とは言っても、ぽっかりと開いた穴に近い位置の、壁部分。


 忍鬼の四夜は忍びらしく足を壁につけて、まるで地面を歩いているかのように立つ。ハーゲテーナイの種族はサキュバスであり、その蝙蝠の様な羽を広げて空中を飛んでいた。


「うわぁ、あの見た目であんなに素早いのね。」

「曲がりなりにも竜種という事でしょうか。」


 コッケイオウの見た目は、巨大な雄鶏である為、普通のドラゴンと比べればポッコリと大きくお腹の部分が出ている。だが重さを感じさせない素早い動きで、今も右に左にとキッシュを集中的に狙っていた。


 何度か、逃げてばかりは居られないとブレスとブレスの間。呼吸する瞬間を狙ってアニーキやキッシュが攻撃を仕掛けるも、その分厚い毛皮と脂肪に阻まれてダメージとまではいかない。むしろはじき返されて隙となっていた。


 キッシュばかりが狙われているようにも見える。それはコッケイオウが本能で誰が一番脅威となるか理解している為だろうと思われた。思われるからこそこうしてハーゲテーナイと四夜は壁を背に余裕を持てていた。


こぉ、こっこっ、こっけぇこっこぉぉぉぉぉぉぉ!!


「うわきゃ!?」

「くっ、しまった!?」


 だが逃げるアニーキとキッシュに業を煮やしたコッケイオウが再び超音波を伴った鳴き声を上げる。壁際に居た二人の元まで届き、三半規管を麻痺させ、飛んでいたハーゲテーナイを落下させるには十分だった。


 咄嗟に手を伸ばした四夜であったが、伸ばしたその手をスルリと抜け、ハーゲテーナイが落下していく。壁を走り追いかける四夜だったが、体格に比例する体重が落下速度を上げ四夜の足をもってしても追いつけない。


「たくっ、キッシュ、ちょっとだけひきつけて置け!!」

「おう!!」


 それを視界の端に捕らえたアニーキがキッシュにコッケイオウの相手を頼み、上も下も分らない状態何か錐揉み回転しながら落ちてくるハーゲテーナイの下に急ぐ。


 ちょうどコッケイオウから逃げた先が、ハーゲテーナイの落ちてくる近くだった事もあり、何なく間に合うと衝撃を殺すために跳びあがり、ハーゲテーナイを空中でキャッチ。そのまま勢いを殺しながら地面に降りた。


「あ、ありがとう。」

「どういたしましてだな。」


 体勢は所謂お姫様抱っこ。外から見れば大の男が大の男を抱えているだけのように見えるが、筋肉達磨と呼ばれる、到底サキュバスに見えない容姿をしていたとしてもハーゲテーナイはれっきとしたサキュバスであり、斜め上にあるアニーキの顔に見惚れていた。


 自身の容姿を理解しており、こういった普通の女の子が憧れる様な行為は、自分には絶対に訪れないと諦めていた。諦めていたからこそ何よりも、不意に訪れた現状に胸を高鳴らせていたのだ。


「あ、あの、……うわぁひゃああああああ!!」


 地面に下ろされて、頬を染めながら、照れながらも御礼を言おうとした。したのだがちょうど二人の間を高速で何かが通り過ぎる。そのことに驚き、驚きつつも咄嗟に万歳するように避けた。地面に裂け目が出来ている事を考えれば、避けて正解だったのだろう。


「テメェ、キッシュ、今度は何やらかしたっ!!」


 アニーキの叫びに、キッシュとコッケイオウが相対する方を見れば、空中に白い羽根が舞っている。その羽根は意思があるかのようにキッシュを四方八方飛び回り襲い掛かっていた。


 キッシュの身体能力は高く、流石と言いたくなるような、後ろから来ている、左右から同時に来ている羽根を踊るかのように全て避けてはいるのだが、アニーキの言葉に答える余裕もなさそうだった。


「『羽鶏乱舞』と呼ばれる攻撃ですね。」

「なんじゃそりゃ!?」


 竜種を狩った者は巨万の富を得られる。それは人種族領だろうと、魔人族領だろうと変わらない。なぜならば、竜種の素材の中で一番高値を付けられるのが鱗だからだ。竜種一頭狩るだけで、肉を除けば最も大量に取れる素材でもある。


 最も取れる素材だが、その素材は魔法付加の武具を作るには必須であり、だからこそ最も高値が付いていると言える。


 この竜種の鱗という素材は、何が珍しいかというと、本体が死んだとしても鱗は活動をやめたりはしないからだ。呼吸するかのように胎動し、通常の武器による攻撃をはじき返し、魔法すら受け付けない。竜種は鱗の方が本体であるという説を唱える研究者すら出てくる程で。


 ならば鱗の代わりに体毛が生えているコッケイオウの場合はどうなのだろうか。それが今の目の前の状態であった。


 鱗は生きているのではない。正確には竜種の脳と繋がり、心臓が鼓動を止めたとしても脳が動いている内は細胞レベルで決められた動きを生命活動を行う。


 ならば心臓も脳も動いており、竜種の中でも最も発達した脳を持つコッケイオウにすれば、意識して抜け落ちた体毛を操作する事は造作もなかった。


「くっ、近づけねぇ!!」


 キッシュですら余裕をなくす攻撃に、アニーキが助けに行こうとするも、その鋭い動きでもっていくつかの体毛が邪魔をする。少し離れた場所で不格好な、まるで盆踊りでも見ているかのような動きで、わひゃ、ひゃあといった悲鳴と共に完璧に避けているハーゲテーナイはとりあえず大丈夫だろう。


「私が行きましょうか?」

「あん?ああ、確かにお前さんならあの攻撃をくぐり抜けて行くことは出来るだろうが、だが根本的な解決にはなりはしないだろうが!!」


 ぐっ、と呻く四夜。忍鬼であり素早い四夜ならば、確かにあの攻撃の中を潜り抜けてキッシュの所まで行くことは出来るだろうが、だがそもそも忍鬼は力のない種であり、相手が防御に優れた竜種である事を考えると相手にもならない。


 アニーキでは逆に動きは鈍重で、身を護る為に肥大化した筋肉が逆に邪魔をする。攻撃の当たる範囲を広くしてしまっているのだ。


「いい!!来るなっ!!」

「何とか出来んのか!!」

「何とかする!!」


 何とか出来るのなら、さっさとやれと思わず悪態を吐くアニーキ。四夜との会話を聞いたキッシュが気を利かせたのだろうが、何とか出来るのならばもうすでにしているだろう。どうにもならないのだろう。


「せめて一撃、一撃でいいから隙でも出来れば……」

「……一撃、でいいんですね。」


 アニーキの呟きに反応したのは俯いていた四夜であった。


「テメェ、さっき言った事を聞いてなかったのか!?お前の攻撃じゃ隙なんか出来るかよ!!」


 アニーキの言いに顔を上げ、真正面から見つめる。


「何とか出来ます。」


 四夜は自信満々に言い切った。

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