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IN THE GAME ~勇者と魔王が戦争している異世界で俺は農耕する~  作者: yosshy3304
第三章 俺はダンジョンで『戦う』。※三人称です。
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4-1

 コツコツコツと重低音の音が定期的にしている。足元がタイル張りである為に、警備用のゴーレムが歩く音が響くのだ。本来ならば盗賊用に警備用ゴーレムは態と音が立たないようにはなっているのだが、そもそも盗む物が無い為に、好き好んで盗みに入る者などいない。依頼金が仕舞われている金庫のある区画とは違うからだ。


 だからこそ、この辺りの区画の警備には、警備してますよという表面上だけであり、それでも酔っぱらいの様な、たまたま入り込んだ者や、犯罪に巻き込まれて逃げ込んできた者の為に、警備用ゴーレムは存在している。


 その警備用ゴーレムが一体が廊下側を手に持つカンテラで照らす。小さな物音を聞き取った為だ。少し奥まった場所にあり、三辻のようになっているそこは、警備用ゴーレムが今居る場所からは柱代わりになっている壁が邪魔をして見辛い。


 少しの間動きを止め様子を伺う警備用ゴーレムだったが、だがその警備用ゴーレムは何事もなかったかのように前を向いて歩きだした。


 疑わしくとも確かめに行かなかったのは、そう行動プログラムを組まれてなかった所為だった。ゴーレムには感情は無い。考える力も無い。あくまで組まれたプログラムの通りに動くのだ。


 そこに金銭的な物は無く、またギルドを利用する者達にとっても侵入する意味も意義もそして利益も無い場所。それゆえに破壊活動が行われる様な場合を除き、警備用ゴーレムの値段を浮かすためにも単純なプログラムしか組んでなかったのだ。


 もしこの時、壁の向こうを確認しに行けば、四人の人物が潜んでいた事に気付いた筈だった。


「……よし、行くぞ。」


 音も無く呟いたのに、まるで普通に喋ったかのように聞こえる特殊な喋り方で、後ろに付いてくる三人に伝えた忍鬼の四夜は、判りやすくするためだろうか、手振りでも行動を伝え、警備用ゴーレムが前を向いたタイミングで壁から壁へと移った。


 通路を挟んで、反対側へと隠れた四夜は警備用ゴーレムの挙動を警戒しながらも、残りの三人にタイミングを伝え、どんどん移らせていく。


 残りの三人も、サキュバスのハーゲテーナイに鬼のアニーキ、さらにハーフの鬼のキッシュと皆が皆、夜更けこそ活動時間であったからこそ、ここまで簡単に事が運んだ。


 三人だけでも力量的には何とかなっただろうが、そこにこういった忍び込む事こそ本職の忍鬼の四夜が居れば、更に簡単になるというものだった。


 傭兵ギルドの建物は、流石に多数の傭兵を集める為に、そこそこ広い構造とは言え、あくまで区画の一つでしかない為に、同じような事を三、四回も繰り返せば、目的地に着く。


「もう喋ってもいいぞ。とは言っても小声でな。」

「ぷはぁ、あ~、緊張した。二度とやりたくねぇな。」

「そんなに緊張する事か?」


 忍鬼の鋭い感覚と、事前にギルドの受付嬢であるミシュリーから聞いていた情報から、この傍には警備用ゴーレムは存在しないと判断した四夜の言葉に、真っ先に息を吐いたのは、鬼の傭兵団団長であるアニーキであった。


 体格が大きく、またその見た目まんまの豪快な性格である彼には、息を潜め音を立てずにこそこそと移動するというのは拷問に近かったのだ。


 身体能力の高さに物を言わせ、更に小柄で、四夜に言われたように動き、ただただ付いてきただけのキッシュや、男性の性を搾り取る為に、侵入行動というのが本能レベルで慣れているハーゲテーナイには判らない事ではあったが。


「ちょっと、この傍は大丈夫だからって、もう少し声を潜めなさいな。」

「あ、ああ。すまん。」


 一応大丈夫だからと言って、これはあくまで非公認の行動であり、たまたま警備用ゴーレムの行動プログラムがバグを起こし見つかるかもしれないのである。もう少し声を潜めろと、足元の魔法陣に魔力を注ぎながらハーゲテーナイが注意するのも仕方が無い事ではあった。


「それで、ワードは判っているのかしら。」

「ああ、『大空の』『閑静な』『王者』でよかったはず。」


 ハーゲテーナイが言うワードとは正式には『ブロックワード』というもの。このブロックワードを三つ組み合わせ、そのブロックワードでつながった対になる魔法陣へと跳ぶのだ。鍵の様なものと考えて貰えば判りやすい。


 そしてこのブロックワードで跳べる場所はある程度だが分類訳がなされている。


 最初のブロックワードがダンジョンの一階層分の広さを意味し、『大空の』は天井部分の無い大空が広がる最も広いダンジョンに使われるワード。


 次のブロックワードが、ダンジョンの属性や出てくる魔獣の種類を示し、『閑静な』というワードは土と風の属性、又はもしくは加えて、それほど気性の荒くない大人しい魔獣が主なダンジョンに使われる。


 最後にダンジョン全体の広さと、最奥で待つボス魔獣の種族を表すワードで、『王者』というワードは、ダンジョン全体の広さが5階層以下であり、また最奥に控えるボス魔獣が竜種の時に使われるワードだ。


 つまりまとめると、大空が広がるダンジョンで、出てくる魔獣は属性が土か風で、大人しい部類の魔獣ばかり。警戒する必要にある魔獣は最奥のボス魔獣である竜種のそれぐらいであるという事である。


 今回の目的はキッシュがティム出来る農耕用の魔獣であり、ゲームの事であったが、キッシュがよく潜ったダンジョンでもある。だからこそ恐ろしい魔獣が跋扈する、それこそ前線で戦えるような傭兵たちが、己のレベル上げに利用するダンジョンにしては、違和感しかないのんびりとした印象を抱かせるワードを、何の疑問も抱かず打ち込んでいくハーゲテーナイ。


 魔力の光、青白いそれが魔法陣を起動させる為に、魔法陣の形に添って輝いていく。一層強い光が部屋を満たした瞬間、四人の姿は無かった。


「うおっ、眩しっ!?」

「……やっと着いたな。」

「本当に、洞窟内に空があるわ。どんな原理なのかしら。」


 ダンジョン側の魔法陣の上に立つ四人。ダンジョン側の時間帯は常に昼間であり、透き通るかのような青空からサンサンと太陽光が降り注ぐ。


 さっきまで深夜の、暗がりの中に居た為に目が慣れておらず手で日よけを作るアニーキ。その明るさからギルド内ではなく、打ち込んだワードの通りのダンジョンに来れた事に安堵する四夜。ダンジョンは須らく洞窟に出来、地下の筈なのに広がる空を見てどうなっているのか疑問の声を上げるハーゲテーナイを他所にキッシュは、ただただその光景に、ゲームを始めた頃のような感動があった。


「うおっ、モワームが居るっ!?」

「何っ!?魔獣かっ!?」


 広がる青空から視線を下へと向ければ、青々と葉をつける原生林が所々に存在し、小川が自由に流れ、背比べとばかりに高さの違う雑草が生えた草原。こっちの世界に来てからも見た景色に似ているも、魔王軍の強制徴兵の所為で人々の心に余裕が無かったために、何処か景色もくすんで見えていた。


 それが、魔獣を何も無い所から生み出すほど魔力の強い場所の方が、逆に感動する程の景色を持ってしまったのは皮肉であろうか。


 感動しながらも視線を走らせていたキッシュの目に留まったのは、その雑草を食む見た目牛のような魔獣だった。


 上半身は牛であり、下半身、腹の中ほどから伸びているホースの様なものは地中へと続いている。モワームと呼ばれる、牛とミミズの様な姿をした草食性の大人しい魔獣であったが、それを知らないアニーキは身構え、その姿に絶句するのだった。

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