第八話 左腕の傷……
頭を下げたままのあんこに皆が近づきます。
「あんこちゃん、顔を上げて」
まつ子が寄り添うように地面に膝をつき、あんこの背中にそっと手を当てます。
「俺は行くぞ、この島の番人になってやる」
「俺もだ、おもちのことも気になるしな。俺たちに任せろ」
沖田と近藤は芹沢たちの事を信じ、着いて行くことにしました。
「まずはあんこちゃんも体調を整えないと。左腕も怪我してるみたいだし」
まつ子があんこの左腕を優しく触りながら言いました。
すると、あんこの顔が急に強張り左腕の傷をサッと隠したように見えました。
「どうしたの?痛むの?」
まつ子は、うつむいたあんこの顔を覗き込みながら心配そうに聞きました。
あんこは左腕の傷を隠したまま早口で、
「何でもないよ、痛くないよ、ありがとう」
と言うと、瀬戸村の男たちにしっかりと一礼をした後、足早に家の中へ入って行きました。
皆、あんこの様子が少しおかしいと感じましたが、後を追って行った明智のばあさんとまつ子に任せ瀬戸村の男たちとの話を続けました。
「すぐに行くのか?」
「あぁ、そうじゃなぁ。できるだけ早い方がえぇなぁ。あいつら、またいつ来るか分からんきぃのぉ。二人だけか?」
「そうだな、まだこっちにも男手が必要だしな…斎藤さん、浅井さんどうする?」
「いや、俺たちはやめとくよ…足手まといだ…」
「まだ怪我もしっかり治ってないしな…」
斎藤と浅井は悔しそうな表情をしています。
斎藤がふと思い出したかのように切り出しました。
「永倉を誘ってみたらどうだ?」
「あぁ、俺もそれを考えていたところだ。ただ、行くと言うかどうか…」
「確かに…あいつの性格を考えると…」
永倉とは雉林家に集まってきた村人の一人で、今は殺された人たちの遺体を埋葬してくれています。
とても大きな男で、とても力持ちですが、とても優しく喧嘩どころか怒っている姿すら誰も見たことがありません。
「少し待ってくれるか、一人連れて行きたい奴がいるんだ」
「あぁ、ええよ。ほんでも俺らも先を急ぐきぃ、この伊東をおいて行こわい。その永倉ぁ言う子来たら四人で瀬戸村に帰っとってや」
「分かった、近藤行くぞ」
そう言うと、沖田と近藤は永倉の元へ急ぎました。
「ほしたら、俺らは砥部村に向かうきぃ。あとは伊東頼んだで」
「はいはい、ほんでも芹沢さん、もう腹下さんとって下さいよ」
「やかましぃわぃ、俺も下しとうて下しとんじゃないきぃ。もうきのこは食わんっ、次は山菜か木の実でも食うわ」
瀬戸村の男たちは全員、それでも芹沢の腹は下すだろうと考え笑っています。




