第七話 芹沢からの提案、答えるあんこ
いかにも喧嘩っぱやそうな男たちをかき分け、更に大きな男が現れます。
「お前らぁ、喧嘩しよんじゃないじゃろうなぁ?」
「芹沢さんっ、どこ行っとったんですか!?」
「ん?あぁ、すまんすまん。急に腹下してしもた。さっきのきのこ、あれはいかん」
「いや、俺らは全員大丈夫ですよ。芹沢さん腹弱過ぎるでしょ」
「それより、あいつら俺らのこと、鬼じゃないんか言うて疑っとるんですよ」
「あぁ、ほうかぁ、まあ疑う気持ちも分からんではないわ。むしろ、それが普通じゃろ」
波佐見村の村人たちの方を見ると、少しだけ笑みを浮かべ芹沢が喋り出しました。
「あのぉ、わしは瀬戸村の芹沢言うもんじゃ。鬼ヶ島のやつらの襲撃に備えて、"番人組"いう組織作ろうか思いよんじゃ。この島の番人じゃ。どうじゃ?入りたい言うやつおらんか?」
「あのぉ!すみませんっ」
あんこが大きな声を出し、急に話に割って入ります。
「あぁ、気持ちはありがたいんじゃけど、さすがに子供は無理じゃわ」
「いえ、そうではなくて瀬戸村の人たちですよね?姉を…雉林おもちを知ってますか?」
「ん?どういうこと、あんこちゃん」
村人たちは訳が分からず聞きました。
「瀬戸村が襲われたと聞いた父が、怪我人の手当てをするように姉を瀬戸村に行かせたんです。でも…それ以降音沙汰がなくて…」
そうとは知らなかった村人たちは、いっせいに瀬戸村の男たちの方を見ました。
男たちはお互いに目を合わせた後、皆が首を横に振っています。
「ん〜、すまん娘さん、俺らも分からんわ。瀬戸村の翌日には有田村が襲撃されとるし、血の気の多いやつらは鬼ヶ島に仕返しに行くんじゃ言うて船を出したまま帰って来んし…」
「雉林言うたら薬屋で有名なあの雉林か?ほうか来てくれとったんか。有り難いのぉ」
別の男も目に涙を浮かべ話し出します。
「俺らもあの晩以降、混乱しとるんじゃ。瀬戸村の誰が死んでしもて、生きとるかも全部は把握しきれてないしなぁ…」
「おもちさんか…村に帰ったら他の人にも聞いてみよわい。何か分かることがあるかもしれん」
「芹沢さんが村の若いもん集めて番人組作ろう言うてから、他の村のもんにもこうやって声かけに来たんじゃ。誰か一緒に来んか?おもちさんもおるかもしれん」
「あんこちゃん言うたか、おもちさん探しに一緒に来るか?」
「いえ、私はこの村の人たちの手当てをしないといけないので残ります。もし、姉がいたら私は生きていると伝えて頂けますか」
あんこは迷うことなく、自分のことよりも波佐見村の人たちを優先することを決断しました。
「私は…と言うと、もしかして…」
「はい、両親は殺されてしまいました…でも姉はどこかで生きているはずです。宜しくお願いします」
あんこは深々と頭を下げました。その姿を波佐見村の村人たちはもちろん、瀬戸村の男たちも、その場にいた全員が心痛な面持ちで見ていました。




