第四話 ツバメちゃんと、ヒバリちゃん
せんべいが医者探しに出かけた後も、波佐見村での話し合いが続いています。
「せんべいのやつ、ちょっと楽しそうだったな。皆んな家族を殺されてるんだ、楽しい気持ちになんて……あいつ見てると腹が立ってくるんだっ」
村の中でも腕っぷしの強い沖田が眉間にしわを寄せ、芋をかじりながら言います。
「まあそう言うなよ沖田……せんべいみたいな奴でもいないと、鬼ヶ島の奴らへの恨みでどうにかなりそうだ。あの晩のことを思い出すだけで、手が震えてくる……」
斎藤は怪我をした左肩の震えを右手で抑えながら話し出しました。
「ここに集まっている村人たちのほとんどが、家族を殺されたんだ。あの晩以降、もし一人で暮らしていたら…自害してたかもな…」
「はっ?自害?何言ってんだっ斎藤さん。俺はあいつら殺してやりてぇよ。なあ、沖田」
沖田といつも一緒にいる近藤も声を荒げます。
近藤も沖田も独り者ですが、それ故か村への愛情は人一倍です。鬼ヶ島からの襲来を受けた晩も、騒ぎに駆けつけて各家を周り、村人たちを助けました。
「沖田、近藤お前たちの気持ちも分からんではないが、俺みたいな小心者の気持ちも理解してくれ」
斎藤はあぐらをかいた状態で左肩を押さえ、うつむきながら言いました。
沖田と近藤は納得できない様子でしたが、反論することなく何も言いませんでした。
家族を殺された者と、そうでない者の間には大きな差がありました。
「ツバメちゃんも、ヒバリちゃんもそうカッカッせん。お腹空いとるからイライラするんかのぉ」
奥の部屋で子供たちを寝かしつけていた明智のばあさんが出てきました。
「明智のばあさん俺らもいい年なんだから、ちゃん付けはやめてくれよぉ」
沖田も近藤も照れくさそうに言います。
さっきまでの怒りの感情は少し無くなり、顔がほころびます。
「明智のばあさん、子供たちは?あんこは?」
「あぁ、あんこちゃんはまだ目を覚まさんよ。他の子らは、ようやっと寝たとこだわぃ。まだ状況を理解してない子らもようけおる。そのうち話さないかんが、ひもじい思いだけはさせたくないのぉ。幸い荒らされずに残った畑もあるから、そこで芋でも作るしかないのぉ」
「ばあさんの言う通りだな。とりあえず、動ける者は畑仕事だ」
波佐見村の人たちはひとまず、村に点在する畑にわずかに残った野菜を収穫した後、耕しなおし種を植えることにしました。
ただ、それでも新しく野菜を収穫できるまでの期間の食糧は確保できていません。




